《腐男子先生!!!!!》3「そこに本があるから」

教師である桐生はだいたい休み時間と放課後、生準備室にいる。

お互い決定的なバレが発生してから、朱葉が生準備室に出りすることが多くなった。といっても、他の生徒にあらぬ疑いをかけられたくはないので、放課後質問を裝ってこっそりとだ。

朱葉が生準備室にると、桐生はだいたい忙しそうにタブレット端末を見ている。

「先生」

「はい」

「pix×v巡回はかどりますか」

「今10usersタグつける大事な業務の最中だから。このカプの小説タグは俺が守ってるから」

そりゃ忙しいだろうよ、と朱葉は思う。

別に、どうしても好き好んでこのクソヲタに會いに通っているわけではなく、校でのスマホ利用が著しく制限されているこの學校で、ひとめにつかずにスマホがいじれる場所がここだという、それだけだった。それなりに、朱葉にも利點があるのだ。

ちなみに桐生が見ているカップリングは朱葉も嫌いではないガッツリBLだった。

「あのさー」

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スマホをいじりながら朱葉が世間話のように聞く。

「先生って男の人が好きなんですか」

さりげなさを裝いながらもそれなりに意を決して聞いたつもりだった。桐生はせわしなくかしていた指先をとめると、パタンとタブレットにカバーをして。

「時に早乙くん。百合は嗜みますか」

「はあ。人並みに」

「きゅあプリは?」

「初代が正義」

桐生が出したのは日曜早朝にやっている児向けアニメだった。懐古ババアと呼ばれてもいい、と思う早乙朱葉(17歳)。

「そんな君は、レズビアンなのか!?」

「はぁ? ……いや……別に……」

ちょっと考えてから、言う。

「でもわたし、子アイドルなら娘!のさくらちゃんと結婚したいです」

「先生もBARASHIならいちのみやくんと一緒に住みたいです」

やっぱホモかな? と朱葉は思った。自分のことは棚にあげて。

桐生はまたタブレットに戻りながら言う。

「まあそれはそれとして。俺としては別に偏見もないけど自分のセクシャルに悩んだこともないです。あと、二次元の方が味い。運命の相手だったらともかく、二次元ぺろぺろしてたら、この年になったわけですしおすし」

「運命の相手ねぇ……」

それはまあ、わからないでもないなと朱葉は思う。結局のところ、イケメンだったら許す、だったら許すってことは、この世の中たくさんあるわけだし。

そんな風に考えていたら、ふと思いついて朱葉は言った。

「あ、先生あれ、あの臺詞言ってください。めっちゃ似合いそう」

無駄にイケメンだし。無駄だけど。

「あれ……? ああ……」

驚異的な空気の読解力をもって、桐生はキメ顔で言った。

「男だから好きになったわけじゃない。好きになったやつが男だった。それだけだ」

「それ!!!!! それな!!!!!!!!!!!!!!」

大盛り上がりでんだ瞬間、ノックの音がして生徒がってきた。

とっさに朱葉はいじっていたスマホをポケットにいれて立ち上がりながら言った。

「先生それで、次のテストの問題って教えてもらえないんですか」

「それを言ったらおしまいだろう早乙くん」

あのお、先生~プリントここにおいておきます~、と明らかにびを売ったような言い方をする子生徒を、「ケースがあるだろう。そこにいれておいて」と無礙に扱い、まだ何か話したそうな子生徒に「今忙しいから悪いね」と追い出して、一息。

やばかったーと朱葉も肩から力を抜きながら。

「ねー先生、今の子さぁ、先生のこと狙ってると思うよ」

そういう子多いんじゃない? と朱葉が聞いた。

桐生はイケメンだ。顔だけは。殘念なくらい。だから、そういうことを思う子生徒がいたって不思議ではない。

もちろん、みんな本気じゃなくて、はしかみたいなもので。しばらくしたら忘れてしまう、夢の中の火遊びみたいなものなんだろうけど。

桐生はきりっとした顔をして言った。

「俺が狙うのはとら×あなの新刊だけだ」

「だから聞いてねぇよ」

なんだかばかばかしくなって、朱葉はため息まじりで聞いた。

「そもそも、なんで先生イベントなんて來たの」

「そこに本があるから」

「いや格好良く言わなくていいから。登山じゃねえから。そうじゃなくてさ、今時ネット見ればいっぱい良い漫畫も小説もあるし、本だってだいたい通販で済むし、バレ怖いんなら、イベントなんてマジリスキーじゃない?」

「リスキーですね。まあ、久々にはまったカップリングで、鉄は熱いうちに打てってじで巡回してた時に、めっちゃ好みのサンプル見つけたけど、イベント売りオンリーだったわけですよ。こりゃ運命かなと思うよね。行くよね」

「へぇ……」

「まさか教え子だとは思いませんでしたけどね」

「わたしやないかーい」

思わず突っ込んでしまったけれど、まあ、それは、気恥ずかしさを隠したかったからでもある。

運命ねぇ、と心の中だけで、朱葉は小さく、呟いた。

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