《腐男子先生!!!!!》7【譲渡募集/探しています】
最近、映畫館に行くことが多くなった、と朱葉は思う。
中學生の時は、親のお小遣いで一ヶ月に一度行くかどうか、それが高校生になって、自分のお金でそれこそ月に何度でも映畫館に足を運ぶことだってある。
もちろん、自由になる時間とお金が増えたことも要因だけれど、映畫のあり方が多様化していることは無視できない大きな理由だろう。
聲優や俳優などが登壇する舞臺挨拶だけでなく、コンサートの中継、舞臺の千秋楽などのライブビューイング。そしてそれから。
応援上映の開催も、そのひとつだ。
「あ、あーーーーーーーーー!!!」
なにげなくスマホをタップしていた朱葉が絶的な聲をあげた。
「売り切れてるーーーーー」
「お、なんだなんだ」
いつものようにデスクに座った桐生がを乗り出して聞いてくる。
がっくりと肩を落として朱葉が言う。
「今度の日曜の……ダブスタの応援上映……」
「おう、★☆と書いて夜空にきらめくダブルスター特別編のことだな」
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わざわざ正式名稱と略稱まで言うオタク教師がひとり。
己のふがいなさに絶する子生徒がひとり。
「今日の帰り映畫館行ってチケットとってこようと思ったらもう、埋まってた……。うっそだろおおお昨日の夜にはまだあったんだけど!?」
「ふふふ……甘いな早乙くん……」
くい、と桐生が眼鏡をあげる仕草をする。
ちなみに桐生は『オン』の時は眼鏡をかけていないので仕草だけだ。素が出ている時特有の仕草だということは、朱葉は最近わかってきた。
「昨日の夜、応援上映ラストに未発表特別映像が流されることが告知されたのだよ!」
「な、な、なんだってーーーーーーーーー!!!!!!!!」
思わずテンプレの返答が飛び出すけれど、ただのノリではない。気持ちはそのままだった。
「マジかーーーマジでか!!!! え、もしかして……もしかしてそれって……」
わなわなと震えるを朱葉が両手で押さえれば。
「うむ」
両肘をデスクにつく特有のポーズで桐生が言う。
「言わせてもらおう……我らが待の……新作発表のフラグの可能大であると!!!!!!!!」
「イイイイイヤアアアアアアアアアア」
いや、嫌じゃない。待ってました。ばっちこい。
ただし、それが自分の見ていないところで発表されるとなると話は別だった。嫌だ。そんなの嫌すぎる。
「うそおおおお!!! えええええんマジで、ほんとにいいい、どこか遠くの映畫館ならまだ空いてるんじゃないの!?」
「殘念だったな……今回は特別応援上映……全國五カ所のみの開催だ……」
ガッデム!!! と朱葉が手のひらを壁に打ち付ける。あたかもおひとりさま壁ドンのようだった。
「ちなみに報ソースは監督Twitterのリプライだ……。リサーチが甘かったようだな早乙くん……」
「その、勝ち誇ったような余裕の表……まさか!?」
思わず別に頼まれたわけでもなく芝居がかった様子で尋ねれば。
すっと桐生がタブレットをひっくり返し、メール畫面を表示させながら言った。
「ふふふ……最前列壁際端席2席、昨夜のうちにオンラインで確保済みだっっっっっ」
「くそ……くそ……クレジットカードの力を見せつけやがって!!!!!!!!!」
そこまで言ってから、「ん?」と朱葉が振り返る。
「2枚?」
「2枚」
こくり、と桐生が頷く。それから畫面を確認しながら、
「いや、空席つくるのは申し訳ないとは思ってるんだけどな。そうじゃなくても映畫館は近場の人間が狹い場所に固まって集まるからバレの可能が大きいし……。男の聲に驚いて振り返るやつもいるかもしれないから、出來るだけ前で、いつも端を2席とることにしてるわけで」
つらつらと言い訳をする。
「へー空席……なん……です……ね……?」
「いや……まあ……埋まった方が……いいとは思ってるよ? 俺も?」
微妙な空気が二人の間に流れた。
「…………」
「…………」
それはまずかろう、と互いの顔に書いてあった。何がまずいって、いや別になにもまずくはないのだろうけれど、まずいような気がする。まずいかもしれない。まずかったらやばい。やばいはずなのだが?
「…………」
無言のまま、朱葉が無言で自分のSNSアカウントに書き込みをする。
>【譲渡募集/探しています】○○映畫館にて、日曜18時からのダブスタ(夜空にきらめくダブルスター)特別応援上映のチケットを探しています。もしも手元に余らせている方がいたら、お聲かけ下さい。#☆★ #ダブスタ応援上映
それを待って、桐生が指を高速でかす。
ぽん、と朱葉の書き込みにレスポンスがついた。
>こんにちは。ハッシュタグから検索で失禮いたします。ダブスタ応援上映チケット、一枚余らせております。取引可能でしょうか?
とりあえず、そのアカウントを見て小さく朱葉が舌打ちをする。
(こいつチケット取引用のアカウントもってやがる)
あくまでも自分のメインアカウントは隠すつもりだな。
とは思ったけれどまあ今は置いておいて。
>是非お取引お願いいたします。當日定価にて算でよろしいでしょうか。手數料などありましたらお教え下さい。
>返信ありがとうございます。クレジットカード算のため手數料などは不要です。當日定価にてよろしくお願いいたします。
そこまで確認すると、ふう、とため息をついて朱葉が言う。
「今、偶然譲渡で取引立したんで」
桐生も腕を組みながら明後日の方向を見て言う。
「そうか。じゃあ當日は偶然會うかもしれないけどお互い気づかないようにしような」
「そうですね、偶然ですしね」
「ああ、偶然だからな」
「偶然なら仕方がないですよね」
そんなことを、言いながら。
(教師って)
(生徒って)
めんどくさいな……と心のうちで、それぞれ思った。
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