《腐男子先生!!!!!》43『ゲーム楽しいですか?』
今回から數話続きますよ。まとめて読みでもいいかも。
「ああーー勝てない! でもコンテニューはしたくない!!」
深夜の機の前で、あげはがぶ。目の前には小さな畫面と、書きかけのペーパー原稿があった。大型イベント數日前の夜。わりと、正念場だ。
しかしあげははわりと原稿そっちのけでゲームをしていた。新刊が仕上がっていて本當によかった。
「育が足りないのかな……そうだろうな……でもやることありすぎて……もう……キャラも富すぎて……飽食の時代……」
さすがに流行りのジャンルなだけあって、はじめたと言うだけでいろんな人がフレンドになってくれたし、小さなポイントポイントを教えてくれる。それでもわからなければ、ふだせんこと桐生にメッセージを送れば、ほぼ即時にレスポンスが返ってくる。聞いていないのにくることもある。
ので、あげはのはじめたばかりのソーシャルゲームライフは大変充実していた。
まあ? 最初の課金のガチャは? どちらかといえばドブだったけれど?
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それでも好きなイラストレーターさんのカードが出たので、ちょっと、結構、嬉しくなってしまった。
ちなみに、この課金でハイレアカードが出ても、その旨を絶対に聲高に言ってはならないと桐生から言われていた。
なんで? と聞けば、
「最近ハイレアカードが出た人に嫉妬でスパム報告してアカウントを停止させるのが流行っている」
といわれた。
なんだそれは。地獄かな?
一大ジャンルとはげにおそろしい……と思いながら、ちゃぷちゃぷと沼の淺いところにまだ足をつけていたあげはだったけれど。
突然アカウントに、メッセージが送られてきた。
(うん?)
桐生かと思ったけれど、見覚えのないアカウント名だった。相互につながっていなければメッセージは個人送れないはずだが。朱葉は気軽にフォローをしたり、仕返したりしているので、すべてのフォロワーさんを把握しているわけではなかったけれど、それでも、ここ最近不審なアカウントをフォローした覚えは、なかったはずなのだけれど。
>ゲーム楽しいですか?
それだけ。
(なんだ?)
と思いながら、楽しいですよ、ぐらいの返事をするか、どうか、迷っていて。
>攻略教えてあげましょうか。
そんなメッセージが、間髪おかずにきた。
(あー)
これは流行りの……なんか……あれだな。まあいろんな表現があるけれど、一言で言えば詐欺スパムだな、とあげはは思ったので、とっととブロックしてしまおう、と思う。どうしてフォロワーなのかはわからないけれど、ゲームタイトルで出して送ってきているに違いない。
>鈴川高校の早乙朱葉さんですよね。
(えっ)
思わず脊髄反でブロックを決めた。
「こっわ!!!!!!!!!!!」
口をついて出た。手のひらも、冷たい汗をかいている。
「なにこれ、こわい!!!!!!!!!!!!!」
やっべー!!! と思ったけれど、どうしようもない。ブロックをしてしまったから。それでも一応相手のアカウントをもう一度見に行く。フォローもフォロワーも、朱葉ひとりだけ。
そのことに、よけい肩を震わせたけれど。
それ以上、出來ることがあるわけでもなかった。
結局うすら寒い思いをしたものの、朱葉はゲームを進めつつ、イベントの準備をした。別にゲームをやめはしなかったけれど、ゲームのことについて、表だって言うことは控えた。おかしなメッセージについても、れることは得策ではないのだろうなという、ぼんやりとした予があった。
イベント當日、天候にも恵まれ暑いくらいの日取りになった。また、今日は一般の混雑もなかなかだ、と聞いている。
朱葉は新刊を並べて開場を迎えた。向けが多い大型イベントだが、オンリーほどは人は集まらないだろうと思っていたので、売り子も頼むことはなく、一人での參加だった。
ちなみに、桐生は今日は別の現場らしい。通販の腕が鳴るぜと言っていた。
朱葉の新刊はもちろん、ペーパー含めて予約済みだ。
最初のお客は特に常連ばかりで、目をきらきらさせて朱葉の本を買っていってくれた。本當に、嬉しい。つくってよかった、出してよかったと思う瞬間だ。
「ぱぴりおさん、ゲームはじめたんですか?」
そんな風に聞いてくるお客も、何人もいた。さすが流行りジャンルだな、と朱葉は心したし、ちょうど良く、フレンドコードを換したり、わからないことを聞いたりもした。列が出來るほど混雑しなかったこともあり、ゲームの進行も順調だった。
午後になり、人の流れが落ち著いたところで、買いに出かける。手慣れたもので、貴重品も持ったし、攜帯も持った。商品の上には布をかけて、『1時間ほどで戻ります』のメモ。
流行りジャンルは売り切れも目立ったが、珍しい著ぐるみコスなども見られて眼福だった。そして、スペースに戻ると。
手帳の切れ端のような紙が、メモの隣に置いてあった。
(?)
なんの気なしに、手に取り、見た。見たことの無い、暴めの、ボールペンの走り書きで。
『ゲーム楽しいですか?』
思わず、そばにあったペンを落とす。さあっと、が下がるのがわかった。
「すみません!」
慌てながら、隣のスペースの人に。さほどには仲良くないが、顔見知りのジャンル友達だった。
「ここ、なんか、変な人來ませんでした!?」
「え……?」
売り子とスペースの主人なのだろう。顔を見合わせる。なにごとか確認するような視線の合わせ方だった。
「──……わからないけど、なんか、スーツの男の人が來ていかれましたよ」
多分、その人が置いていったメモだと、思いますけど。
(男……?)
スーツ? どういうことだ?
朱葉はいぶかしく思いながら、とりあえずスペースで、椅子には座らず攜帯を取り出す。開いたのはSNSのメッセージ畫面。
ふだせんの、アカウントに。
>今日、イベント來てないですよね?
連絡先は、これしか知らなかった。返事は、早い。
>行ってないよ
>どうかした?
矢継ぎ早だった。朱葉は眉間に皺をよせ、打ち込む。
>いやーなんか、変な、人がいるみたいで……。関係ないなら、いいです。
>どんな?
>いや、わかんないんですけど。男の人で。聲かけてきたんですけど……。
>客?
>それも、わかんなくて……。
言っても仕方ないことを、歯切れが悪く言ったのは、やはり、不安が殘っていたからだと思う。
間髪いれずに、メッセージが來た。
>撤収何時?
返事をする間もなく。
>迎えに行く
は? と思わず、聲には出さずに朱葉は言っていた。
>いや、まずいでしょ
と返すも、聞いている様子はない。
>拾いやすいところ指示するから。搬出の準備して。
いやいや、いやいや。心の中で突っ込んだけれど、無礙に斷れなかったのは……やっぱり、だいぶ、怖かったからだ。
混もしていた。狀況を、しっかり誰かに話して、把握しておきたかった。そして安心したかった。
その相手が、桐生なのなら、助かる、といえば、助かる。
加えてまた、メッセージが來た。
>あとここの既刊まだ殘ってたら買っておいてしい。
さりげなくパシるんじゃねえよ、と心の中で朱葉が思った。
続きます。ちょっといつもと違うめのテイストですみません。
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