《辺境育ちな猿百合令嬢の憂鬱。〜姉の婚約者に口説かれました。どうやら王都の男どもの目は節らしい〜》(8)通りすがりの人
「見慣れない顔だな。どこの子だ?」
「あ、あのっ、私はアズトール伯爵家のものです。姉と一緒にセレイス様に面會に參りました」
「……なるほど。君はあのオクタヴィア嬢の妹か」
きらびやかな服の男の人は、小さくつぶやいたと思ったら急に黙り込んでしまった。
緩やかに波打つ黒髪を、いかにもオシャレっぽく肩上できれいに切り揃えている。なかなかに端整なお顔立ちのおじさん、いやもうちょっと若いからお兄さんだな。ついでに、間違いなく貴族の中でも高い生まれなんだろう。
無視するのはよくない気がして、とりあえず笑顔を浮かべてみた。
「あの、セレイス様のお部屋はどちらか、教えていただきたいのですが……」
「セレイスのことなど、忘れなさい。それより、ここの庭はしいぞ。散歩に行かないか? 私が案してあげよう」
「……へ?」
「ああ、失禮。私はボルドー伯爵だ。できればハリードと呼んでしい」
「え、ええっ?」
「君の名前を聞きたい」
「え? あ、私の名前ですか。リリー・アレナと申します」
「ふむ……良い名だ」
男前な伯爵様は笑顔で褒めてくれた。
えっと、うん、私も自分の名前は結構気にってます。……いや、そうじゃなくて。
私はひたすら困した。
……この人、いったい何者なの?
いや、ボルドー伯爵様で、お名前がハリード様らしいということは分かったけど。
妙に距離が近くて、いつの間にか手を握られてしまっているんですけど。
そんなに間近から覗き込まないでください。私はお姉様の付き添いできたのであって、よく知らない人と庭を散歩するために來たんじゃないんですっ!
ひきつりかけた笑顔をり付けたまま、私はさりげなく一歩離れようとした。でも、目の前の男の人はせっかく離した距離をぐいと詰めてくる。
こ、これは一……。
さすがに危機を抱いた時、品のいい咳払いが聞こえた。
「リリー嬢。ここにいたのか。オクタヴィアが探していたよ」
聞き覚えのある聲だ。
振り返るとセレイス様がいた。先日會った時と同じ優しげな貌は、私と目が合うととてもらかく微笑んだ。
でもボルドー伯爵様に目を移した瞬間、黒い目がぞっとするほど冷たくなった。
「ボルドー伯。リリー嬢は私の義妹になる人だ」
「それがどうした。麗しき令嬢に敬意を示して何が悪い」
「敬意? 発の間違いではありませんか?」
黙り込んだ二人は、なぜか睨み合った。
空気が張り詰めてしまった。でも、これは私にはチャンスだ。ボルドー伯爵様の関心がセレイス様に映ったこの隙に、そろーりと手を抜き取る。そして伯爵様に気付かれる前に、ささっと黒髪の伯爵様から離れた。
完全に虛をつかれたボルドー伯爵様は、驚いた顔で私を見た。
でもすぐに楽しそうに笑い始めた。
「いいな! 君は実に面白い。またお會いしよう。リリー・アレナ嬢」
まだし笑いながら、ボルドー伯爵は恭しい禮をした。
まるで高貴な淑に対するような本格的な禮で、向けられた私は冷や汗が出てきそうだ。
と、ぐいと手を引かれた。
今度はセレイス様に手を握られていた。急にいたから、ふわふわしたクリームのドレスの裾を踏みそうになった。それを避けようと不自然に足を浮かせてしまって、私はつんのめりそうになった。
でも無様に転ぶことはなかった。
「大丈夫かい? さあ、オクタヴィアが待っているよ。こちらだよ」
セレイス様は私を抱え込むように支え、優しく笑う。
でもすぐに容赦なく歩き始めて、私は引っ張られてしまう。歩きながら振り返ると、ボルドー伯爵が眉をひそめながら私たちを睨んでいた。
ひえっ、ご、ごめんなさい!
でも伯爵様は振り返っている私に気付いたようで、急に機嫌良さそうな笑顔を浮かべた。私のこと、怒っているわけではないようだ。
ほっとして軽く會釈すると、なぜか伯爵様は頬を赤らめて僅かに目を彷徨わせた。でもやはり怒ってはいないようで、ごく控えめに手を振り返してくれた。
……この伯爵様、意外にいい人かもしれない。
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8 69辺境育ちな猿百合令嬢の憂鬱。〜姉の婚約者に口説かれました。どうやら王都の男どもの目は節穴らしい〜
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