《辺境育ちな猿百合令嬢の憂鬱。〜姉の婚約者に口説かれました。どうやら王都の男どもの目は節らしい〜》(21)ようやく本題

私が非難するように見ていると、お兄さんはため息をついた。

「魔獣を好むほど、酔狂ではないぞ」

「そうかなぁ。魔獣といっても々じゃないですか。私は子供の頃から遊び相手にしていましたよ。流石に魔虎は初めてりましたけど。というか、お兄さんの魔力なら、そこまで集まってくる前に追い払えるんじゃないですか?」

「私が追い払うと、騒なことになる。こいつらは普段は大人しいから、そう言うことは極力したくない」

あれ、意外に優しいんだな。

そうやって來るもの拒まずに徹していたら、この貓まみれの……いや、魔獣まみれの天國が出現するんですか。いいなぁ……いや、それっていいことなの?

……でも、魔獣がなぜこんなにたくさんいるんだろう。

魔獣が人間の活範囲に出沒すると、間違いなく々な被害が出る。中には飼い慣らすと家畜の上級的存在になってくれる魔獣もいるけど、そんな魔獣はごく一部に限られている。

基本的に、雹で農作に被害が出るのと同じくらいの災害的存在なのだ。

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だから各地の領主は、いかに魔獣の出沒を減らすかに苦心しているし、魔獣退治に大金を投じているところもあるらしい。

アズトール伯爵家も、辺境にある領地は魔獣被害が多くて、お父様も一族のみんなも、いかに被害を抑えることができるかに苦労していた。

全ての存在が仲良く共存していたと言われる神話の世界はともかく、今は殺伐としたご時世だ。なのに、よりによって王都の中に魔獣がゴロゴロしているなんて。街並みを見たじでは、魔獣被害とは無縁の場所と思っていたのに、王都の魔防壁はどうなっているんだろう。

貓のふりをしている魔獣をでながら、素樸な疑問に首を傾げる。その思考も聞こえてしまったのか、お兄さんはぴたりと背中にくっついていた黃貓も持ち上げて私の膝に乗せた。

こちらはさらに量が多い! ふかふか!

見かけの割に重くないのも魔獣らしい。

獣の臭いの代わりに、頭がクラクラするような甘い香りがするのも現実離れしていて魔獣らしさがいっぱいだ。

……この甘い香り、他のわせして捕食するためのものとか、そういう話を聞くけど、まあ気にしてはいけない。

つい顔が緩んでしまう。

わずかに眉をかしたお兄さんは、さらにもう一匹を私の肩に乗せた。

「こいつらは、大きさを変えるだけで普通の貓に見える。を変えれば、お前のようにりたがるバカな人間は多いからな。簡単にってきてしまうんだ」

「ああ、わかるなぁ。これは絶対にりたいし、ってしまう。……でも、それマズくないですか?」

「魔虎程度なら、私が出るまでもない。王都の武人で十分に対応できる。それに見た目が優秀だから、こいつらがうろつくと王都の民が穏やかになる。だから……まあ、そう言う事で大人しくしているうちは大目に見ることもあるんだ」

はあ、なるほど。

裏ではいろいろあるんですね。でもやっぱり魔獣が多すぎる気がするんだけどな……

……なんてことを、珍しく真面目に考えていたら、貓っぽい魔獣たちがすりーっとを寄せてきた。もふもふ、ふかふか、さらさら……深刻に考えるのも馬鹿馬鹿しくなってきた。

ストレスが消えていく……。

「それより、私にわざわざ伝言を殘すとは、何かあったか?」

お兄さんは、し真面目な顔をしていた。

絹のようなりを堪能していた私は、すぐには現実に戻れなくて、お兄さんが何を言っているのか一瞬悩んだ。でも、なぜここにいるかを思い出した。

「私の獨り言を聞いてくれたんですか?」

「獨り言にしては、伝える気に満ちていたんだが」

「細かいことは気にしないでください。ええ、実は大切なことをお話ししたいんです」

私は一旦言葉を切って、お兄さんの表を探ろうとした。

目つきが兇悪なお兄さんは、でも私に探れるような表は表に出していない。仕方がないので、貓もどきへの頬りをやめて言葉を続けた。

「実は私、來週の王宮の舞踏會に行くことになりました!」

「……それがどうした」

お兄さんの目が、急に冷たくなった気がする。

貓に擬態した魔獣が一斉に目を開けた。でも、すぐにまたぽてりと頭をお兄さんの足や手に乗せた。

一瞬でも魔獣が反応したと言うことは、お兄さんのご機嫌が……まあ私は気にしない。

「お兄さんはかなり高位の貴族なんですよね? 絶対に舞踏會に出ますよね?」

「舞踏會に興味はない」

「でも、著飾った私の姉を見る絶好の機會ですよ。人なお姉様が著飾ると最高に神様ですからね!」

「お前も、神だそうだな」

「何でそう言うのだけ覚えているんですか! 私なんてでどうでもいいんです! 姉ですよ! 最近のお姉様はの線がとっても曲線でして、気たっぷりなのに清純さもあるんですよ!」

「どうでもいい」

お姉様のことを、どうでもいいってなんですかっ!

ちょっとムッとして、さらにお姉さまの素晴らしさを語ろうとした。でも、制するようにお兄さんが手をあげた。

「來週の舞踏會と言ったな。一応は顔を出すつもりだったから、し長居してやってもいい。だから、そんな顔をするな。唯一の點が臺無しになっているぞ」

おや、もしかして私、褒められたのかな?

と思ったのに、顔をしかめたお兄さんは私の顔を雑に押しのけた。

扱いが魔獣に対するものと同じだ。

雑すぎる。お兄さんも認めた、顔だけはな私なのに。

「……お兄さん、に対しての態度が悪いって言われたことないですか?」

「気にしたことはないな。それにおまえはまだ子供だろう」

の年齢は若く言うのが基本と思っています? 私、これでも十六歳なんです」

初めてお兄さんが驚いた顔をした。

ふーん、そんな顔をするとちょっと若く見えますね。実はセレイスさまと同じくらいなのかな? もうちょっと上? 私、てっきり三十歳くらいかと思ってましたよ!

お兄さんは水の目で私をじっと見つめ、ため息混じりに首を振った。

「……これで十六歳だと? 多く見積もって十三歳くらいかと思っていた」

「こう見えて大人なんです! だからその子供扱いの態度を改めてもいいんですよ?」

「その中では、子供扱いで十分だな」

そ、それは、そうだけど!

ちょっとイラッとしたけれど、セレイス様の意味不明なクズっぷりに比べれば圧倒的にまともだと思う。

だから、私はとてもいい気分になっていて、お兄さんのことも寛大に許すことにした。

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