《辺境育ちな猿百合令嬢の憂鬱。〜姉の婚約者に口説かれました。どうやら王都の男どもの目は節らしい〜》(22)舞踏會なのに

はっきり言って、オクタヴィアお姉様はとても人だ。私としては世界で一番おしいと思っている。

でも、なぜかいつも自信が足りていない。

その自己評価の低さが、完璧な人を見た人が勝手に抱く「高慢な」という印象を完全に消し去っているのは確かなんだけど。

ちょっと伏し目になっていたりすると、どこか幸薄さが漂うというか、憂げで思わず手を差し出してあげたくなるような絶世のになっている。

いいこととは言えないかもしれないけど、これはこれで最高だと思う。

……でも王都の男どもは、お姉様がかに悲しげなため息をつくのを遠巻きにして見ているだけだった。あり得ない。

もしかして、王都の男は全員目が節なの?

私が男で、縁のない金持ちだったら、絶対にその場でプロポーズするのに。金がなくても、相応しい地位につけるようにと死に狂いでり上がってみせる。

そして、顔と生まれだけは抜群にいいクズ男の手から救い出す!

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まあ、実際は私はで、妹という一生ものの地位を神様からいただいているんですけどね。

私は王宮の舞踏會に來ていた。

もちろん、世界で一番おしいオクタヴィアお姉様と一緒だ!

ローナ様も同行してくれていて、王宮に向かう馬車の中はとても和やかで楽しかった。

だけで楽しそうだけど、私も混ぜてもらいたいな」

會場に著くと、調子のいいことを言うお姉様の婚約者と合流することになったんだけど、潤んだ目で私を見つめてくるクズ男なんて無視ですよ、無視。

この調子で最後まで無視したかったのに、オクタヴィアお姉様はお父様の代理でもある。いろいろな人に挨拶に行ってしまったから、私はクズ男と一緒に取り殘されてしまった。ローナ様がいるからまだましだけどね。

本當はローナ様がいるから、もうし我慢しようと思っていた。

でも、私は見つけてしまったのだ。會場の向こうに食べコーナーがあることを!

気付いてしまった私は、すぐにいた。

クズ男の様がローナ様と話をしている一瞬の隙をついて、逃げてやったよ!

ふふん。私は領地で狩りの技を磨いていた。だから、人間の知覚から逃れるくらい楽勝なのだ。

無事に走した私は、鼻歌混じりに食べコーナーに向かった。

予想通り、そこは天國だった。お灑落で味しそうな食べがずらりと並んでいる。どれも男の大きな口なら一口。たちがお上品に食べても五口以で食べ終わりそうだ。

私なら二口かな。でも今日はドレスで完全武裝中だから、五口で挑みたい。

まずは軽いものから!

……と思ったのに。

「アズトール伯爵のご令嬢ですよね? 初めまして。私はローディル子爵の嫡男のカーヴィルと言います」

「僕はステイド伯爵の三男ダルシムです。オクタヴィア殿もおしいが、あなたはまるで妖のようだ。どうか、一曲踴ってくれませんか?」

まさに、お皿に手をばそうとしたのに聲をかけられてしまった。そのまま、かに不機嫌になった私の周りに若い男たちが集まっている。

オクタヴィアお姉様には目もくれなかったのに。……本當に、なぜなの?

それに、この人たち、なぜ私の素を知っているんだろう。

お姉様と一緒にいたから?

それなら、お姉様と一緒にいた時に聲をかければいいのに。お姉様の貌を間近から堪能して、ついでに知れることのできる絶好の機會だったのに、何やってるの?

……というかさぁ。

今から軽食を楽しもうとしているのはわかるよね? 乙の食事なんだから、しばらく見て見ぬふりくらいしてよ……。

うんざりしながら、どう対応しようかなと考えていると、黒髪を肩上で切りそろえたお灑落な男がやってきた。

私と目が合うと、品のいい、でもちょっと皮っぽい笑みを浮かべた。

あ、なんだか見覚えがある人だ。

えっと、確か……ゼンフィール侯爵邸でいきなり庭の散歩にってきた人だ。

なんとか伯爵様で、名前は……忘れた。

「無粋な君たちは控えたまえ。私が先にうつもりなのだから」

「ボルドー伯爵。ご令嬢はまだお若いのですよ? いきなりあなたのようなご年齢の方と踴るなんて……いや、失禮」

名前を思い出そうとかに考え込んでいた私の橫で、男たちが勝手に會話を始めたと思ったら……え?

なぜそこで睨み合いが始まったの?

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