《辺境育ちな猿百合令嬢の憂鬱。〜姉の婚約者に口説かれました。どうやら王都の男どもの目は節らしい〜》(28)報告
「……というじで、お父様が出張から戻り次第、正式に破棄されることになりました」
いつもの廃屋の井戸の橫で、私は「お兄さん」こと「ノルワーズ公爵閣下」に報告を終えた。
もちろん、破棄されるのはオクタヴィアお姉様とクズセレイス様の婚約だ。
舞踏會の翌日、ゼンフィール侯爵から丁寧な謝罪狀が屆き、さらに侯爵様本人が直接謝罪しにきてくれた。
その結果、セレイス様は我がアズトール伯爵家には出り止になり、近いうちに王都から領地へ移送されるらしい。
実にめでたい。
早くお父様が戻って來ますように!と祈る私は、最近はすっかりストレスから解放されていた。
でも、お兄さんにはいろいろお世話になったので、すでに詳細を把握しているとは思いつつ、直接報告しておこうかなと考えた。
で、三日前。
井戸に向かって「三日後にお會いしたいです!」とんでおいたら、こうしてお兄さんに會うことができた。
相変わらず目つきが鋭くて不機嫌そうな顔をしているけど、いい人だ。
Advertisement
ちなみに、今日のお兄さんは大きな犬を侍らせている。
普通の大型犬より、し大きめの長だ。とてもしい犬で、井戸に到著した時は思わず歓聲をあげてしまった。
……でも、當然というか、あの犬、絶対に普通の犬ではないと思う。
黒い並みはありえないほど真っ黒すぎるし、目に縦の虹彩がっているし、何よりまぶしいくらいに銀にっている。草を踏んでいるのに、細いがぺたんと倒れきっていないのも絶対におかしい。
あれは普通の犬じゃない。魔獣が擬態しているのだろう。
もしかしたら「魔」クラスかもしれないな……なんて思ってしまうほど、犬の目のは強烈で、私を見つめる目は知的だった。
……まあ、そこは気にしないようにしている。
王都の平和と安定は、私の仕事ではないし、アズトール伯爵家の管轄でもないからね。
とにかく無事に報告を終えてほっとしていると、ふと見るとお兄さんが無言で持參した水筒の蓋を開けていた。
……なぜ、今そんなことしているのだろう。
ついその手元を見ていたら、やはり持參していたらしい木製のコップに水筒から何かを注いで私に手渡してくれた。
ふんわりと湯気がたっている。
とてもいい香りだ。
「高級そうなお茶ですね」
「まあ、高級だろうな。とある侯爵がわざわざ手土産として持ってきたものだから」
……とある侯爵様の、手土産品ですか。
なるほど。それは超級の高級品だ。どこの侯爵様かは絶対に知ろうとしてはいけないし、知りたくもない。
ということは、私の役目は毒見かな?
でも私は魔力ほぼゼロな質だから、お兄さん用の魔力系毒は全く反応しない可能が……。
「毒見はもう終わっている。……なぜ子供に毒見をさせるなどという意味不明なことを考えるんだ?」
お兄さんは心底不思議そうな顔をした。
いや、だってお兄さんはノルワーズ公爵閣下ですよ。王族様ですよ。しかも過去視もちなんて、すごい貴重で重要な人じゃないですか。
「貴重で重要人扱いされているのは否定しないが、だからといって子供に毒見させるほど橫暴な権力者ではないぞ」
「では、このお茶はいったい?」
「……お前の話は長くなりそうから、茶を用意しただけだ」
「え、私、公爵閣下に気を遣っていただいたんですか。うわー、なんかです!」
「していないくせに、白々しい」
お兄さんはそっけなくそういって、自分用のコップに注いだお茶を飲んた。
私より先に飲んだから、お兄さんが私のために毒見したみたいになってしまった。ここまでしてもらったら、飲まないわけにはいかない。
私はそっと口に含んでみた。
「あっつ! こんなに熱いお茶が水筒にっていたんですか! さすが公爵閣下!」
「この程度の魔は、伯爵家にもあるだろう」
「あるかもしれませんけど、私には使えませんから」
「……そうだったな。魔力がそこまでないと使えないのかもしれんな。不便だな」
そんなに気を使わなくてもいいのに。
熱いお茶を飲みたければ、家で飲めばいいだけだ。他にも使えない魔はいろいろあるけど、なくても困らない。
あったら便利かもしれないなと思うだけだ。
お兄さんは私をじっと見て、やがて小さく首を振って私の膝にポンと何かを投げてよこした。
綺麗な紙に包まれている。
開けてみると、中はく焼いた焼き菓子だった。攜帯用なのに、おしゃれお菓子だ。可い!
「いただきます!」
早速かじりつく。
歯で噛み割ると、バリッと大きな音がした。
……ふむ。たっぷりと甘くて、クルミが香ばしくて、お茶によく合いますね。こんなに味しいお菓子があるなんて、さすが王都です!
純粋にしながら食べていると、お兄さんの隣にいた黒い犬が私をチラリと見て、大きなあくびをした。それから前腳をググッとばすと、のそりと立ち上がった。
贅沢な甘さを堪能しながら、なんとなく眺める。
黒い犬は軽やかな足取りで歩いた。ふさふさの並みをり付けるように私のすぐそばを通って、どこかへ向かっていく。
淀みなく歩きながら、私を振り返った。銀の目が私を見たようだ。長い尾がパタリといた。でもすぐに黒い犬は、ふわーっと広がる銀のに包まれて……唐突に、消えた。
……え? き、消えた?
私は數回瞬きをし、急に甘さをじなくなったお菓子をごくんと飲み込んだ。
魔獣は形態を多変えることはできるけど、姿を完全に消して別のところへ移したりはできないはず。それとも、王都には転移魔を使う魔獣が存在するの……?
「……あの、今のは……」
「気にするな。あれは王都近辺に棲みついているだけの、ただの魔だ」
「…………ただの、魔様ですか…………」
異界由來の生のうち、に相當するのが魔獣だ。
その上位種に當たる存在が魔で、魔力とか本気で暴れた時の被害の大きさは魔獣の比ではない。古語では「災厄を引き起こすもの」と表記されているくらいの、人間にとっては恐ろしい存在だ。
でも、お兄さんにとっては、王都近辺に棲みついているだけの存在らしい。
ふーん、そういうものなのか。
……いやいや、全然わかりませんっ!
頭を抱えていると、お兄さんが冷ややかに笑った。
「相変わらず、思考が丸聞こえだな。まだ思考封鎖は習っていないのか」
「いや、習ってはいるんですが……」
私は口ごもり、今朝の景を思い浮かべてため息をついた。
小説家の作詞
作者が歌の詩を書いてみました。 どんなのが自分に合うか まだよく分かってないので、 ジャンルもバラバラです。 毎月一日に更新してます。 ※もしこれを元に曲を創りたいと いう方がいらっしゃったら、 一言下されば使ってもらって大丈夫です。 ただ、何かの形で公表するなら 『作詞 青篝』と書いて下さい。 誰か曲つけてくれないかな… 小説も見てね!
8 160TSしたら美少女だった件~百合ルートしか道はない~
ある日、理不盡に現れた神様によってTSさせられてしまった田中 由。 しかし彼の身の回りではそれを境に何故かトラブルが………いや待て、これはどう見ても神様のs………(田中談) さて、田中くんは普通の學園生活を送れるのか!?
8 165double personality
奇病に悩む【那月冬李】。その秘密は誰にも言えない。
8 122悪役令嬢は趣味に沒頭します
前世の記憶を持ったまま乙女ゲームの世界に転生した。 その転生先が何をしても死が待っている悪役令嬢。 いやいやいやいや、せっかく前世の記憶があるので 死亡フラグは回避させていただきたい。 そして、あわよくば前世の趣味だった音楽で有名になりたい。 この物語は、悪役令嬢のはずのリリア・エルディーナが フラグガン無視で自分の趣味に沒頭する物語です。 注:乙女ゲームのヒロインは途中から登場しますが物凄くイライラしますのでお気をつけください。 ですが、仕事や學校などなどいろんなストレスを抱えてる人にはすっきりできるくらいのざまぁwがございますので安心して下さいませ。(笑) ・ ただいま、アルファポリスにて最新話更新中
8 129(本編完結・番外編更新中です) 私のことが嫌いなら、さっさと婚約解消してください。私は、花の種さえもらえれば満足です!
※ 本編完結済み 12月12日番外編を始めました。 本編で書くことができなかった主人公ライラ以外の視點や、本編以降のことなども、書いていく予定にしています。どうぞ、よろしくお願いします。 辺境伯の一人娘ライラは変わった能力がある。人についている邪気が黒い煙みたいに見えること。そして、それを取れること。しかも、花の種に生まれ変わらすことができること、という能力だ。 気軽に助けたせいで能力がばれ、仲良くなった王子様と、私のことが嫌いなのに婚約解消してくれない婚約者にはさまれてますが、私は花の種をもらえれば満足です! ゆるゆるっとした設定ですので、お気軽に楽しんでいただければ、ありがたいです。 11月17日追記 沢山の方に読んでいただき、感動してます。本當にありがとうございます! ブックマークしてくださった方、評価、いいねをくださった方、勵みにさせていただいています! ありがとうございます! そして、誤字報告をしてくださった方、ありがとうございました。修正しました。 12月18日追記 誤字報告をしてくださった方、ありがとうございます! 修正しました。 ※アルファポリス様でも掲載しています。
8 104婚約破棄された令嬢は歓喜に震える
エルメシア王國第2王子バルガスの婚約者である侯爵令嬢ステファニーは、良き婚約者である様に幼き時の約束を守りつつ生活していた。 しかし卒業パーティーでバルガスから突然の婚約破棄を言い渡された。 バルガスに寄り添った侯爵令嬢のヴェルローズを次の婚約者に指名して2人高笑いをする中、バルガスが望むならとステファニーは見事なカーテシーをして破棄を受け入れた。 婚約破棄後からバルガスは様々なざまぁに見舞われる。 泣き蟲おっとり令嬢が俺様王子に、ざまぁ(?)する物語です。 *殘酷な描寫は一応の保険です 2022.11.4本編完結! 2022.12.2番外編完結!
8 159