《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》4

「よし。今日はここまで。次は魔法実技だぞ」

座學を終え、ナイジェルがそう言う。

魔法実技はその名の通り座學で學んだ魔法を実踐することだ。基本座學と実技はセットとなっている。しっかりとした知識がなくては魔法は使えないからだ。

「せんせー」

間の抜けた聲で、クーリアがナイジェルを呼ぶ。

「どうした?」

「今日も図書館行っていいですか?」

「あぁ…そうだったな。いいぞ。ただし!絶対2時間で帰ってこいよ!」

ナイジェルが何故念を押してそう言うのかというと、クーリアには前科があったからである。

もともと本を読むとそれ以外気にしなくなるクーリアは、時間を忘れてしまうのだ。

そして、魔法実技なのに何故図書館へ行くのかというと、クーリアが使うのが無屬魔法だからである。

無屬魔法を扱える人は、生徒にも教師にも何人かいる。だが、教えられるほどの教師は、ほとんどが北棟にいる。故に、クーリアは學ぶことができないのだ。

……もっとも、學ぶ必要がないほどに研究しているのだが。

「クー、またいくの?貴方なら別に先生も要らないんじゃ…」

サラ達はクーリアがそれだけの人であることをしっている。しかし、ほとんどの生徒や教師はクーリアの真の(・・)実力を知らない。それがサラ達は許せないのだ。

「だってめんどうなんだもん」

しかしながら、クーリアにとって、そんなことはめんどうなことでしかない。

このいつもブレないクーリアの発言を聞いて、サラ達はまたしても諦め顔と深いため息をつくのだった……

學園の図書館にはかなりの數の本が納められている。だが、その數は北棟の方が桁違いに多い。クーリアはそちらにも行きたいのだが、そのためにクラスを上げる気にもなれず、仕方なく南棟の図書館へと向かった。

ガラガラと図書館の扉を開ける。すると獨特な匂いがクーリアの鼻をついた。

だが、クーリアは迷いなく魔法書がある棚へと向かった。何度も來たことがあるため、匂いには慣れているし、迷うこともない。

しかしその途中で、ある先客に出會った。

「おや、君もサボりかい?」

そうクーリアに問いかけてきたのは、金髪赤眼のイケメンだ。クーリアは名前は知らないが、何度かあったことがある人である。

「サボりというか、厄介者だからね」

「あぁ…そうか。君は白だったね」

クーリアはこの學園で唯一の白だ。そのため、かなり知られていたりする。

男の子はそう言うが、決してその聲に軽蔑のは含まれていない。ただ純粋に納得したのだ。

「でも、ここに無屬の魔法書はないよ?」

「うん。でも、他の魔法書を見るのは楽しいから」

するともう話は終わったとでも言うように、クーリアは本を探し始めた。

それを見て、男の子も話しかけるのを止め、同じように探し始めた。

「うーん…大読んだやつだなぁ…」

「え、読んだの?これを、全部?」

「うん。だって結構來てるもん」

クーリアはそう言うが、例え學から毎日來たとしても、今日までで全てを読み切ることはまず不可能な量だ。

そのまま本棚を見つめていたクーリアは、隣の男の子の瞳が、まるで珍獣を見つけたとでもいうように輝いていたことに気づくことはなかった……

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