《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》8

職員室を後にして、クーリアは帰路に著いていた。

「うぅ…図書館に行けないなんて…」

クーリアはそう言うが、ただ単に時間通りに戻ってこればいいだけの話なのだ。

「2時間なんて短過ぎるよぅ…」

だが、時間通りではクーリアは納得できないのである。なぜなら、學園がだだっ広い為に、図書館へ行って帰ってくるにも時間がかかるため、実質本を読める時間は2時間もないからである。

「裏技あるけど、あんまり使いたくないしなぁ……」

その裏技というのが、今日使ったものだ。

いきなりナイジェルの後ろへと現れたのにはしっかりとしたタネがあった。

「絶対大事になるし……」

クーリアが行った裏技。それは……

──長距離転移だ。

転移は無屬の魔法だ。そして一般的に知られている転移は、自分の目が屆く範囲にしか転移ができないものだ。だが、クーリアが行った長距離転移は、目が屆かない範囲でも転移が可能なものなのだ。

そもそも長距離転移は、昔から存在していた魔法だ。その當時は、長距離転移と短距離転移の2つが使われていた。だが、次第に長距離転移は衰退し、短距離転移が現代の転移と呼ばれる魔法になった。

衰退した原因は定かではないが、長距離転移の方法が載った文獻は殘っている。しかし、今まで誰もが復活させることが出來なかった。

それをクーリアは復活させてしまったのだ。

では何故クーリアは長距離転移の方法が分かったのか?

「だって本はあったし…」

そう。本はあったのだ。

そもそも長距離転移は最早夢語となっており、魔法書から絵本に至るまで、かなりの本が出回っていた。そのため、方法が載った本を手にれるのは、誰であれ容易であったのだ。そしてそのひとつをクーリアが手にれ、功させてしまったということだ。

しかし、クーリアにも何故自分が出來たのかは理解出來ていない。ただ覚として出來てしまったのだ。それが簡単に使えない理由でもあった。出來た理由がハッキリしないまま魔法を行使すれば、最悪暴発する可能があるからだ。

「うーん…また研究してみよう」

今後の研究対象が決まり、クーリアはし機嫌が直った。最近研究することが無くなっていたからである。

「…あ!早く帰らないと」

今になってクーリアは朝の會話を思い出し、急いで家へと帰っていった。

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