《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》15

クーリア達が転移したのは、森林だった。転移した場所には、1本のフラッグが立っている。これはどの場合でも同じだ。

「森林…じゃあ予定通りに」

「「「分かった」」」

サラ達は、クーリアだけを殘して敵陣へと突っ込んでいった。

(さてと。私もちゃんと役目を果たさないとね)

もう一度転移の魔法陣を見たいがためだけに勝とうとするクーリアは、無論チームメイトの考えとはかなりズレていた。だが、サラ達は気づいてない。それは當然だ。人の考えなど、千差萬別なのだから。

……最も、クーリアのような考えを持つ人はまずないだろうが。

(まずはフラッグの位置の把握)

本來チームメイトがそれぞれ歩き回り、フラッグの場所を確認する。だか、ここにはクーリア1人しかいない。なので普(・)通(・)に(・)歩いて探せば、他のフラッグを取られたり、時間が掛かる。

「あ、あった」

……そう。普(・)通(・)な(・)ら(・)。

だが、クーリアは1歩もかず、フラッグを見つけてしまった。

タネは簡単。魔力を薄く広げただけだ。これは風魔法の《索敵》という魔法に近い。だが、消費する魔力は、今回の方がない。しかしその反面、魔力をに制する必要がある。おそらく、學生でこの方法が出來るのはクーリアくらいだろう。

(どうせなら監視の魔道も停止させたいけど、それしたら失格だしなぁ…)

実はこのフィールドには、教師が監視するための魔道が仕掛けられている。それは映像を別のところに送るもので、観客にも屆けられている。

監視する理由は、危険行為を行わないか見るためだ。この対抗戦は、言わば模擬戦だ。そのため、そこまで強力な攻撃は止されている。しかし、例年強力な攻撃により怪我をする者が後を絶たないのだ。それをしでも防ごうと、この魔道が設置されている。

クーリアとしてはあまり注目を浴びたくないので、できる限り映りたくない。そのため、停止させたかったのだが、これを故意に破壊、もしく停止させた場合は、問答無用で失格となってしまう。

(はぁ…とりあえず、場所は把握したから、映らないようにこう)

クーリアは絶妙な位置に陣取り、魔道に映らないようにした。

(ここなら大丈夫。さて、フラッグを守るとしますか)

クーリアは遠距離から全てのフラッグを防魔法で覆った。これは風屬の《結界》という魔法のようなものだが、結界より脆い……と言われている。

だが実際のところ、込める魔力が多いほど、この防魔法は強度を増す。それこそ、《結界》を超えるほどに。

(研究が進んでないにも程があるよねぇ。はぁ…)

この理論はクーリアが研究から導き出したものだ。そのため、一般的には知られていない。もちろんクーリアは目立ちたくないので、公開するつもりも無いが。

(名前を偽るっていうのもありだけど……多分、あ(・)の(・)人(・)にはバレるしなぁ…)

そんなことを考えながら、クーリアは敵が來るのを待ち構えていた。

……鼻歌を歌いながら。その歌はクーリア本人が映像には映らずとも音として屆けられ、観客を大いにざわつかせたとか……

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