《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》20

クーリアが兄たちの方へと向かうと、周りを囲んでいた令嬢がまるで壁のように立ちはだかった。

「あなた、誰ですの?」

「えっと…妹です」

正直にクーリアが答えたのに、令嬢は目を見開き、まるでクーリアの言葉が信じられないといったような反応をした。

「噓をつくのも大概になさい!」

「えぇー…」

クーリアは呆れ顔だ。しかし、そうなることも予想していなかった訳では無い。妹と言われても、まるで似ていないのだから。

「ちょっと、その発言はどうかと思うよ?クーは正真正銘僕達の妹なんだから」

「「「えぇ?!」」」

(だから來たくなかったのに…はぁ)

クーリアが心うんざりしているとは夢にも思わないで、兄2人はクーリアの手を取った。

「行こっか」

「……うん」

とても不服そうにクーリアが答えた。だが、それが令嬢達の気にったらしい。

「あなた生意気ですわ!せっかくアラン様が手を取ってくださったのに!」

今にも摑みかかろうとする令嬢を、もう1人の兄が宥める。

「どこが生意気なのかな?実の妹だよ?どんな反応をしようがいいだろう?」

宥めるようでいて、有無を言わさない口調でそう問いかける。

「あ…いえ…その…」

令嬢は兄の怒りにれたことが分かったらしい。明らかに揺し始めた。

「それじゃあ機嫌よう」

クーリアは兄2人から手を引かれ、その場を後にする。その後ろを、サラたちが邪魔しない距離で追いかけた。

場所は変わって食堂に。

対抗戦は學園で行われているため、基本的食事をとるのは食堂になる。

「どうしたの?そんな不服そうな顔をして」

傍から見ればクーリアはいつもの無表だが、兄たちには分かったらしい。

「…分かってますよね?」

「分からないなぁ。ちゃんと教えてくれないと」

明らかにわざとらしくそう言ったのは、次男のアラン。以前職員室前にいたのは、長男のウィリアムだ。

アランもウィリアムも同じ朱の髪で、顔立ちはウィリアムのほうが形。アランも形だが、武人よりの顔立ちで、ゴツゴツしている。

「…もういいです」

プイとそっぽを向くクーリア。そのクーリアの頬をウィリアムが突く。

「クーが可い…」

ウィリアム、シスコンである。

「兄さん、クーが可いのは當たり前だよ」

……アランもシスコンであった。

「それより、なにか食べないかい?もうペコペコで…」

その言葉を裏付けるように、アランの腹の蟲が鳴いた。

「そうだな。クーは何がいい?払ってあげるよ」

「……じゃあAセット」

食堂は日替わりのセットメニューとなっており、その中で1番高いのがAセットだ。

「1番高いの…」

「払ってくれるんですよね?」

あざとく首を傾げるクーリア。その姿を見て、ウィリアムは苦笑しながらも、食事を取りに行った。

「アランは殘って。クーが何されるか分からないから」

去り際にそう言い殘した。実際クーリア達には食堂にいるほぼ全ての目線が集まっていた。

「だから嫌だったのに…」

ちなみにサラたちはし離れた場所に座っていた。せっかくの兄妹揃っての食事を邪魔したく無かったらしい。

「クー、そろそろ本を見せてもいいんじゃないかな?」

いきなりアランがクーリアに弾発言をかました。それはどこか確信めいた口調だった。

「……なんの事ですか」

「兄さんはいい意味で天然だから気づいてないけど、僕は分かるよ。クーが実は貓を被ってるって」

アランの言っていることは、実は正しかったりする。クーリアは基本本を隠している。というより…バカ、いや、天然を演じている。

「…私にはなんの事だか」

「そう?まぁ話す気になったらでいいよ」

そう言って思わせぶりな笑みを浮かべた。

(やっぱりアランお兄ちゃんは苦手…)

クーリアは早くウィリアムが帰ってきてくれないかと、食事のけ渡し口を見つめるのだった。

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