《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》24

対抗戦の2回戦を終え、クーリア達は帰路に就いていた。

「イルミーナはどうだった?」

「うーん、まだ消化不良」

どうやら戦えたようだが、相手が実力不足で足りなかったようだ。

「クーは?」

「うーん?」

サラに尋ねられたが、クーリアは貰ったクッキーを頬張っており、答えられなかった。

「まったく…」

サラはそう言うが、顔は笑っている。クーリアが嬉しそうにクッキーを食べてくれるのが嬉しいのだ。

「じゃあな」

「バイバーイ」

ヴィクターとイルミーナがクーリア達と別れる。

「サラも行かなくていいの?」

ごく自然にクーリアが尋ねる。

「あらクー。わたしがどこに向かってると思ってるの?」

含みのある笑みを浮かべる。ヴィクター達が向かった場所は、貴族が暮らす地區だ。當然サラも貴族なのでそちらに家がある。向かうならそっちなのだが……

「まさか…家出!?」

「違うわ!」

スパーンっとサラがクーリアの頭を叩く。見事なツッコミである。

「じゃあなんで?」

若干涙目になりながら、クーリアが尋ねる。クーリアはサラの家がどこにあるのか知っている。なのでクーリアとは別れるはずなのだ。

「あなたねぇ…自分の姿鏡で見てる?」

「見てるよ?毎日」

「じゃあ分かるわよね?クーがとっても可いってこと」

ここはまだ貴族地區に近いので治安がいい。だが、クーリアが住む場所は治安がし悪い。

いつもの時間帯ならば安心なのだが、今日は対抗戦だったため、いつもより遅くなってしまっていた。

クーリアには自覚がないが、その容姿は人目を引く。珍しいというのもそうだが、可いという意味合いでだ。

なのでサラは襲われないか心配していたのだ。

……おそらくクーリアなら返り討ちにするだろうが。

「そうかなぁ?」

「そうよ。まぁそれは建前で……わたしの家にこない?」

もとよりそれが1番の目的だろう。

「サラの家?」

「そう」

「今から?」

「そうよ。明日は休みだし」

対抗戦の疲れを取るという名目ではあるが、対戦會場を整えるのが1番の理由だ。

「だから今からクーの家行って、許可貰ってから行きましょ」

「……わたしに拒否権は?」

「ない」

斷言された。まぁ斷る理由もないのだが…。

そもそも祖父母達がクーリアに友達と遊んでしいと思っているので、この提案は願ったり葉ったりだろう。

「はぁ…」

「まぁまぁ。本読みたいでしょ?」

「読みたいけど…あるの?」

それはクーリアが未だ読んだことがない本があるか、ということだ。

「もちろん」

自信満々に頷いた。そこまで自信満々に言うのだから、あるのだろう。

「……分かった」

渋々であるが、読んだことがない本があると言われれば、クーリアからしたら行くしかない。

サラとクーリアは、共に祖父母のパン屋へと足を進めるのだった。

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