《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》81

クーリアが構えた獲。それは……短弓だ。

學園長からもらった魔導銃もあるが、あまりに威力が高すぎるので、クーリアはこの武を選んだ。

「距離は……ギリか」

矢を番え、弓の弦を引き絞る。狙うは、一の魔獣。今回馬車へと近づいてきたのは、猿型の魔獣だった。

猿型は小型から大型までおり、木の間を飛んで移するため、討伐はかなり難しい。

……だが、それは近距離しか攻撃手段を持たない場合に限る。

ヒュッ!

クーリアの放った矢が、風切り音を鳴らしながら魔獣へと襲いかかる。

「キキッ!」

「…ちっ」

クーリアが短く舌打ちする。魔獣が木々の影に隠れた為、矢が當たらなかったのだ。

「中々の腕ね」

「………」

クーリアは反応しない。ナターシャならば、先程の1発で仕留めていたと分かっているからだ。

「…この距離だと厳しい」

短弓は小さく、取り回しがしやすい分、程が短い。魔獣はまだクーリアのいる馬車から距離がある為、もう一度矢を放っても避けられるだろう。

「……2人に任せよう」

今、クーリアに出來ることはない。風屬魔法を使えれば、追い風を利用して飛距離をばせただろうが、生憎クーリアは使えない。

「あら。ア(・)レ(・)は使わないの?」

「……やっぱり知ってたんですね」

ナターシャの言う、アレ。それは、魔導銃のことだ。

「當然じゃない。わたしのお(・)じ(・)い(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)があなたにあげたんだから」

……そう。実はナターシャは、學園長の孫だったのだ。それ故に、クーリアが魔導銃を持っていることを知っていた。

「で、使わないの?」

「……あれは威力が高すぎます。今ここで使う訳には…」

「ふーん…まぁ、確かにそうね。でも、そう言うってことはちゃんと持ってきてるんだ」

「………」

(墓を掘った…)

持っていることがバレること自は、問題ない。だが、ど(・)う(・)や(・)っ(・)て(・)持ってきたのかが問題なのだ。

「どこにあるの?」

(ほらきた)

「……教えません」

「え、なんで」

「何となく、嫌な予がするから」

ただの言い訳である。……だが、何となく心當たりがあるのか、ナターシャが顔を背けた。

「…何考えてたんですか」

「……クーちゃんが教えないから、わたしも教えない」

(……子供か)

とクーリアは思ったが、口に出すことは無かった……。

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