《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》86※

「最初は、よく知らなかったんです」

「知らなかった?」

「はい」

わたしが心ついた時には、もうお姉ちゃんはいなかったから。お兄ちゃんから聞いていただけで、よく知らなかった。分からなかった。

「……でもある日、偶然に知り合ったんです」

街中で、わたしはお姉ちゃんだと知らずに顔を合わせた。

「クーは気付いてたの?」

「おそらくは……」

お姉ちゃん、勘はいいからなぁ…と、話が逸れた。

わたしがお姉ちゃんと初めて會った時の第一印象は、不思議。

「不思議?」

「はい。今でもですけど」

「……まぁ、それは同だわ」

サラさんの反応にし苦笑を零す。

お姉ちゃんは、考えていることがとにかく分からなかった。表が変わらないというのもあるんだろうけれど、それ以上に気持ちを制することが上手かった。だから分からなくて、不思議という印象を持った。

「無屬しか使えないと聞いたのも、その時です」

「……どうじた?」

サラさんがし固い聲で尋ねてくる。『白』の差別について知っているからだろう。

「別になにも。貴族ではないと思っていましたし。逆に魔法が使えることが凄いと思いました」

「そう…」

しサラさんが安心したような表を浮かべる。やっぱり差別を気にしていたみたいだ。

「…でも、その出會いが今の関係の理由にはなり得ないわよね?」

「はい。その後も何度か會ったんですけど……その強(・)さ(・)を知ったんです」

「強さ?」

お姉ちゃんは、強い。それは魔法とかじゃなくて、心。

「…學園で、し耳に挾むこともあったので」

お姉ちゃんの悪口や蔑みの言葉を。

しかし、そんなことでお姉ちゃんはへこたれなかった。それどころか、貪に自分に出來ることの知識を求めた。

「…言わば、お姉ちゃんはわたしの憧れなんです」

どんなことにも負けず、ただ自分のすべきことをす。わたしの、理想の人だ。

「憧れ、ねぇ……確かにクーは心が強いかもしれない。けれど、それはあなたがいたからじゃないかしら?」

「……え?」

わたしが、いたから?

「クーってああ見えて結構寂しがり屋でね。わたしと知り合ってからは、ずっと2人でいたわ」

「そうだったんですか…」

だから、あんなに仲がいいんだ。

「…まぁ、わたしとしては、牽制としての意味もあって、クーと一緒にいたんだけどね」

「牽制…?」

「悪口と……男よね」

「あぁ……」

納得した。蔑まれていたとしても、それは貴族からであって、準平民や平民からはお姉ちゃんは慕われていたと聞く。むしろアイドルのような存在であったとも。

「…クーは自覚しないから。悩殺された男どもは數知れずよ」

「うわぁ……」

お姉ちゃん、罪なです…。

「まぁ話は戻すけど、とにかくクーが悪口を耐えられたのは、兄妹の存在があったからでしょうね。人間、自分を認めてくれている存在がいることを知っていれば強いから」

「…………なる、ほど」

……こんなちっぽけなわたしでも、サラさんの言う通りお姉ちゃんの助けになれていたらいいなぁ……

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