《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》88

特に夜中に襲撃されることもなく、無事クーリア達は朝を迎えた。

「昨日はし飛ばしてたし、魔獣の遭遇もなかったから、村に著くのは予定より早くなりそうね」

「ああ。馬車の車、車軸も確認したが、問題は無い。早ければ今日中には著ける」

朝食であるパンを齧りながら、サラとヴィクターが今後の予定の話し合いをする。

學園の校外実習なので、予想外の事態が発生しない限り1週間以には往復できるよう日程が組まれており、昨日予想より早く進むことが出來たクーリア達は、かなり早めに目的地へと到著できそうなのだ。

「このまま何も無ければいいんだけどねぇー」

「……イルミーナ、そういうこと言ってると本當に起こるからやめて」

クーリアがムスッとした表でイルミーナを咎める。皆の願いはもちろんイルミーナの言った通りだが、そう上手くはいかないだろうなとも考えていた。

「さて。じゃあ進みましょう。クー、警戒お願いできる?」

「まかせて。対処は?」

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「……できるなら、対処もお願い」

「分かった」

クーリアが頷き、馬車の幌の上へと飛び乗る。

軽よねぇ…落ちないよう気を付けてね!」

「うん」

(本當に大丈夫だろうか…)

と心配に思いながらも、サラ達は馬車へと乗り込む。それを確認したヴィクターが馬車を出発させた。

「おっと」

クーリアが勢を崩したものの、落ちることはなくそのまま馬車は進み始めた。

「ふーむ……いるけど、警戒してるかな」

魔力を薄く広げ、クーリアが魔獣の居場所を確認しつつそう呟く。

昨日の戦闘の影響か、魔獣達は馬車から一定の距離には近付いてこない。まぁそれは好都合なので別に問題は無いのだが。

「……暇だなぁ」

不安定な馬車の幌に座っているというのに、クーリアは能天気にそう呟く。まぁここまで落ち著いているのは、ひとえに魔力でを固定しているからなのだが。

魔力線と呼ばれる、魔力によって創られる紐のようなものを用いて、クーリアは自を固定していたのだ。

「便利だけどくい込むなぁ…」

に巻き付けているようなものなので、結構締め付けられるのだ。だが、落ちるよりマシだ。

「……ん?」

暫く馬車が進み、クーリアがふと空を見上げる。

「クワァァァ!」

鳴き聲を上げながら空を旋回する、黒い鳥。

「……魔獣か」

クーリアが立ち上がり、弓を構える。明らかに鳥型の魔獣は、こちらを発見し、行を起こそうとしていると分かったからだ。

「……《リブート》」

クーリアが短くそう呟き、番えた矢を放つ。魔力を上乗せする魔法だ。……だが、魔力を流したのは矢ではなく、弓。

弓を強化することで弦の反発力を高め、威力を上げ、飛距離をばすことができる。

そのことをクーリアはある日偶然発見したのだ。だからこそ、昨日の矢は猿型の魔獣に屆いた。

空へと真上に放たれた矢は、一直線に鳥型の魔獣へと向かっていく。

「クワァァァ!!」

だが、距離があるせいで鳥型の魔獣は回避行を取ろうとする。このままでは當たらないだろう。

……しかし、クーリアは落ち著きながら次なる魔法を行使する。

「…《リモート・ロック》」

その言葉が紡がれた瞬間。まるで矢が生きているかのように軌道を変え、鳥型の魔獣のを貫いた。

「よし……おっと。回収っと」

グイッとクーリアが何かを引っ張る仕草をする。すると魔獣が手元へと落下してきた。

実はクーリアは、矢に魔力線を繋げていたのだ。それを引っ張ることで、魔獣を回収した。

……ちなみに、先程の矢の遠隔作を可能にしたのも、この魔力線のおである。

「…これはお晝かな」

そう言いながらクーリアは小さめのナイフを取り出し、抜きを行って馬車の中へと放り込んだ。

………その直後。馬車の中から甲高い悲鳴が上がったのは、言うまでもない。

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