《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》97※

「もし話したら、死ぬだけなので」

……馬車の外から聞こえたクーの言葉が、わたしの頭の中で反芻する。

馬車にる時の「安心して寢てていいよ」というクーの言葉が引っかかり、わたしとリーフィアは寢たフリをしていた。のだけれど……

「…お姉ちゃんは、本気でしょうね」

隣で寢るリーフィアがそう口にする。

「…本當に?」

「…他の人に危険が及ぶと判斷すれば、間違いなく」

「……そう、ね」

クーは、そういう子だ。誰かを救う為ならば、自分自の命を手にかけることも厭わないだろう。

「…お姉ちゃんは、わたしにノートを見せてくれませんでした」

「………」

クーが作った魔法を書き記しているノート。それを見せないのは、リーフィアを危険にさらさないようにする為なのだろう。

「……その認識でいいよ」

「「っ!?」」

聲が聞こえた方を見る。すると、幌の窓から顔を覗かせるクーと目が合った。

「…気付いてたのね」

「そっちこそね」

クスッとクーが笑う。

…どうして、笑えるの…?

「…本気、なの?」

「ん?……あぁ、うん。本気だよ」

何も気にしていないような表でクーがそう言う。

「死ぬってことなのよ…?」

「うん。そうだね」

「…どうして、」

どうして、そんな簡単に言えるの…?

「だって、わたしが死ぬだけで、それは全て闇に消える。わたしのせ(・)い(・)で(・)死ぬ人が居なくなる。なら、わたしは迷いなく死を選ぶよ。これは変わらないから。誰が何と言おうと」

……目を見ればわかる。意志を曲げるつもりは無いということが。

「………」

「そんな顔しないでよ。(・)な(・)く(・)と(・)も(・)學園を卒業するまでは一緒にいるから」

なくとも…?」

「あっ…」

クーが口を手で覆う。どうやら失言だったようだ。

なくとも…それはつまり、學園を卒業した後にそうなる可能があるということ…?

「……まぁ、否定はしないよ」

「………」

「あともうちょっとで代だから、しでも寢ておいた方がいいよ」

「……分かった」

「ん、おやすみ」

「…おやすみ」

最後にクーが笑顔をうかべ、窓の幌を下ろした。

………絶対に、死なせるもんですか。

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