《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》100
「……ねぇ、答えて」
「………」
「……クーは、何を隠してるの…?わたしに、わたし達に言えないことなの…?」
「………」
クーリアは何も答えない。否、答えられない。
「……なんでも、ないよ」
辛うじて絞り出した言葉は、酷く、掠れていて。
「…なんでもない訳ないでしょっ!?ねぇっ!?」
思わずサラが詰め寄り、クーリアの肩を摑んで言い寄る。
「……なくともって。これのこと、なのね?」
「………うん」
逃れられないと判斷したのか、クーリアが小さく言葉を返す。
「……いつから」
「……もう、1年前から」
「……わたしの家に泊まった時、殘っていた魔力殘滓は、これを隠す為だったの…?」
クーリアがし目を見開く。まさか気付かれていたなど、思っても見なかったからだ。
「…原因は?薬を飲んでる以上、分かってるんでしょう?」
「……サラは、さ」
「…なに」
「……わたしを、変(・)だと思ったことは、ない?」
問いかけの答えになっていなかったが、サラは無関係な話の容ではないと判斷し、しっかりと目を見て答えた。
「…正直、他の人とは違うと思う。でも、でもね?悪い意味じゃないのよ?」
必死で言葉を付け足す。そんなサラの様子に対して、クーリアが苦笑を零した。
「うん、分かってるから。………じゃあ、もう1つ」
「……」
「……『魔力崩壊病』は、知ってる?」
「っ!?」
サラが息を飲む。これからクーリアが言おうとしていることが分かってしまったからだ。
「…知ってるわよ。もちろん」
だが、サラは辛うじてそう返すことが出來た。否、そう返すしか、なかった。
…『魔力崩壊病』、それは、不治の病と呼ばれる病気。
原因不明。治療法不明。數ない判明していることは、部の魔力が暴走し、自らを崩壊させてしまうということ。……それと、もう1つ。
「……魔力が、多い人に発癥しやすい病」
「その通りだよ。……じゃあ、わたしが言いたいこと。もう、分かるよね?」
分かりたくない。理解したくない。それでも……サラには、分かってしまった。
「…クーは、魔力が多いものね」
「うん。自(・)分(・)で(・)も(・)怖(・)い(・)く(・)ら(・)い(・)に(・)。……だから、これは必然だったのかもね」
クーリアが約1年前から蝕まれている病。それが、『魔力崩壊病』だった。
「…じゃあ、その薬は」
「気休め程度の延命措置。本來は毒(・)だけどね」
生にとって、魔力は生命力そのもの。それを失えば死ぬ。そして、クーリアが飲んでいた薬は……その魔力を強制的に放出する薬。部の魔力がなくなれば、崩壊は一時的に遅まるのだ。
……だが、この薬を常人が飲んだ場合。全ての魔力が放出され、死を迎えることになるだろう。それ故に、毒。
「………何時まで、なの」
「……正直、分からないというのが本音。もしかしたら明日にでも死ぬかもしれない。本當は、卒業までは確実に持つはずだったんだけどね…」
病の進行が、予想より遙かに速かったのだ。もう、時間はあまりないだろう。
「…だからさ。もしわたしが死んじゃったら、ノートを全部燃やしてくれないかな」
それが殘ってしまっては、大変なことになる。
「……嫌よ」
「…え?」
クーリアが素っ頓狂な聲を上げる。まさか、斷られるなど思っていなかったからだ。
「……わたしは、諦めないわ。絶対、クーを助ける方法を見つけてみせるから」
「……無駄だとしても?」
「無駄なんて何一つないわ。わたしは……あ(・)の(・)日(・)から絶対に、貴方を護ると決めたんだから」
あの日。それは、クーリアが攫われた日のことを指していた。
「……だから、生きなさいよ。わたしが貴方を助ける方法を見つけるまで」
「………無理難題言うなぁ」
「あら。それをいつも壊すのは誰かしら?」
そう言ってサラが不敵に微笑む。その表を見て、クーリアも自然と悲しげで、しかし嬉しげな笑みを浮かべるのだった。
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