ドパンッ！

靜寂な森を切り裂くように響く、重い炸裂音。

「はぁ…はぁ…」

クーリアは、馬車から飛び降りた際に出來たり傷もそのままに、森の中を全力で走っていた。

その後ろをピッタリと三の魔獣が追隨する。クーリアがそれらに向けて魔導銃の引き金を引くが、し距離がある為に躱されてしまった。

馬車から飛び降りた時、魔獣は四居たのだが、そのの一はもう既に撃ち抜いた。だが、その結果警戒を強められてしまい、當たらない。

「ちっ…」

クーリアが短く舌打ちする。魔導銃の弾數は無限では無いのだ。無駄には出來ない。矢は既に撃ち切ってしまった。

クーリアを追隨する魔獣は2種類。一は、紫の鱗を纏った巨大な蛇型の魔獣で、最初に倒したのもこの種類だ。

あとの二は同じ種類で、クーリア達が以前遭遇した猿型魔獣の上位個。力が強く、が大きい割にすばしっこい。

この三から今の所クーリアが逃げれているのは、クーリアが魔力で自を強化しているからだった。

「げっ！？」

森の中を走りながら、クーリアが聲を上げる。その理由が……こちらへと近付いてくる、別の魔獣を知したからだった。

數は四。馬車の進行方向にいた魔獣だったが、どうやら諦めて戻ってきたようだ。こちらに気付いているかは不明だが、もし気付かれていなかったとしても、こうも派手にやり合っていてはいずれ気付かれる。

（…まぁ、諦めるつもりもないけどねっ！）

「《リ・ゾーン》っ！」

自に掛けていた強化を、さらに上掛けする。

……だが、それは危険な賭け。

強化するとはいえ、力や神が回復する訳では無い。魔力も馬車の方に割いている影響で、そう多く殘ってはいない。

力と魔力。そのどちらが切れた瞬間、クーリアの負けが決定してしまう。それ故の、危険な賭け。

（……っ!?　魔力が…）

突如、クーリアに重い負荷を掛けていた魔力消費が和らぐ。どうやら、サラ達が王都に無事到著したようだ。それにより掛けられていた魔法は解除。クーリアにし、余裕が生まれる。

（次弾裝填…）

ポーチから次の弾を取り出し、魔導銃に裝填する。だが、もし撃てば先程のように躱されてしまうだろう。

……しかし、クーリアが狙ったのは、魔獣本ではなかった。

ドパンッ！

クーリアが、上(・)空(・)に(・)向(・)け(・)て(・)引き金を引く。次の瞬間、重い炸裂音が響き、黃いの筋をばしながら、1発の弾丸が空高く撃ち上げられた。

……そして、その弾丸が上空で破裂した瞬間。

『━━━━━っ！』

辺りが、白に支配される。強力な閃。

「「「ギャァァァァ！！！」」」

その閃を直接見てしまった魔獣達は、目が焼ける痛みに斷末魔を上げ、のたうち回る。

（よしっ！）

閃弾が炸裂する瞬間、クーリアは目を固く閉じていた。

もし失敗していたら。そんな可能は考えない、捨ての攻撃。だが、これがなんとか功を奏し、魔獣達を足止めすることに功した。

（今のうちに…っ！）

クーリアは未だのたうち回る魔獣を後目に、森のさらに奧へと走り去った。