《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》108

『魔の氾濫』それに対する準備は速やかに開始された。

まず行われたのは城門の閉鎖。籠城戦をしようと言うのだ。

城下町を囲う壁は戦爭などの戦いに備える為に強固に造られている。魔獣を暫くは、防ぐことが出來る。

「燈りをともせ! 矢と砲弾の運搬を急げ!」

城壁の上に備え付けられた攻城弓(バリスタ)に使われる矢と、大砲の砲弾が次々と運ばれていく。

そうして『魔の氾濫』に対する備えが著々と進む中、サラ達はクーリアを助けに向かう為の準備を進めていた。

「サラ」

「なに…って、お父様っ!?」

準備を進めていると後ろから名前を呼ばれる。振り向くと何とそこには、サラの父親が立っていた。

「どうしてここにっ」

「サラが外に友を助けに行くと聞いてな」

「だからって……」

「ほれ。これを持っていけ」

サラの父親がそう言って手渡したのは……なんと、一丁の魔導銃だった。

「これって…」

「それがなからず助けになろう」

「……ありがとうございます」

サラが魔導銃をけ取る。手に伝わる、ズッシリとした重さ。手渡されたのは、銀しい銃を持つ、六連式弾倉型の魔導銃。

「あとこれも」

そう言って渡された鞄は重く、中には弾丸がっていた。

「使い方は、知っているな?」

「…はい」

実は、サラが魔導銃を持ったのは今が初めてでは無い。故に、使い方は心得ていた。

サラが渡された鞄から電撃弾を取り出し、魔導銃へと裝填する。

そして暴発しないようロックを掛け、同時に貰ったホルスターへとしまった。

「…必ず、全員で帰ってきなさい」

そうは言うものの、サラの父親の顔には行かせたくないという気持ちがありありと浮かんでいた。

1人の父親なのだ。そう思うのも無理はない。だが、父親だからこそ、クーリアの親の気持ちも理解できてしまう。

「…1人じゃないですから。絶対に帰ってきます」

サラが後ろを振り向けば、共にクーリアを助けに向かおうと準急を進める友の姿が目にる。

「…そうだな。ナターシャ、頼むぞ」

「…はい。我が命に代えてでも」

「お前もだ。必ず帰ってこい」

「……はっ」

ナターシャとサラの父親の會話が終わったちょうどその時、皆の準備が完了した。

「急ぎましょう」

ナターシャのその言葉に頷く。未だ『魔の氾濫』は本格的には起きていないが、それも時間の問題だ。一刻も早く向かわなくては。

(…村に逃げていたらいいけれど、恐らくクーは逃げていないわね)

そもそもクーリアは『魔の氾濫』が起きていることを知らないのだ。ならば、そこまで危機を抱いていない可能が高い。

……もしくは、村まで逃げることが出來ない狀況にあるか、だが。

サラは、ふと浮かんだ最悪の考えを振り払う。

「行ってきます」

「…あぁ」

最後にそう父親に告げ、サラ達はそれぞれ馬に乗り駆け出した。

空は、もう既に白く染まり始めていた。

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