《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》113

森の奧へとひた走る。途中魔獣にも遭遇したが、まるでクーリアが見えていないかのように通り過ぎて行った。

(それだけ、執念に駆られている)

クーリアの事よりも、やらなければならないこと。

それは、

(復讐……)

クーリアは直として、そのことをじ取った。

何に、誰に。そんなことは分からない。あるのは、ただただ暗く、深く、沼のような、悲しみと怒り。

「っ!?」

ふいに足がもつれ、倒れ込む。そろそろこのも限界のようだ。それでも、クーリアは立ち上がる。魔力を限界までに流し、まるで自分自るように。

だがその時。クーリアの目の前に立ちはだかった、大きな影。

「グォォォンッ!!」

「ちっ…」

短く舌打ちをする。魔獣に気付かれた。

熊型の魔獣が腕を振り上げる。クーリアがその場から飛び去った瞬間、魔獣の腕が振り下ろされ、地面が発した。

「あぐっ!?」

風でクーリアのが吹き飛ばされ、木に叩きつけられた。

(不味い……っ)

けほっ、とクーリアがを吐く。臓は無事そうだが、骨がいくらか折れてしまったようだ。起き上がろうとすると激痛が走る。

それでも、クーリアは魔導銃を構える。裝填されている弾丸は、クーリアが作った特殊なもの。試し打ちはしていない。ぶっつけ本番だが、やるしかない。

「グォォォンッ!!」

「っ!」

引き金を引く。一瞬の間を置いて放たれた弾丸は、魔獣のに吸い込まれる。――だが、何も起こらない。魔獣も、止まらない。

(失敗、した…)

に染まるクーリアの視界に、腕を振り上げた魔獣が映る。

クーリアが死を覚悟し、目を閉じた。

「……ん?」

衝撃を覚悟し目を閉じたものの、クーリアに襲いかかったのは衝撃ではなく、生暖かい

恐る恐るクーリアが目を開ける。するとそこには、に大を開けて倒れる魔獣の姿があった。

「よかったぁ……」

思わずそのまま地面に寢転がる。

クーリアが先程使った弾丸は、遅延式裂弾というものだ。その名の通り、放たれてから一定の時間を空け、発する。

発するんだから、そらこんな空くよね)

本來の裂弾は著弾してすぐに発するので、こんな大が空くことは無い。発するからこその威力なのだ。

「よいしょ…っと」

傷を癒して立ち上がる。魔力の消耗が、思ったよりも激しい。

(……ちょっと、休憩するかな)

魔力切れはすなわち、クーリアの死を意味する。それは魔獣に殺されてしまうから……ではない。魔力で今のを維持しているからだ。つまり切れれば、クーリアのは崩壊する。

「…いないよね」

周りの気配を探り、魔獣が近くにいないことを確認する。

「……いや、ちょっと離れよ」

流石に魔獣の死骸がある場所では休めないので、し離れたところで休憩することにしたのだった。

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