《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》115※

日があっても薄暗い森をひた走る。途中の村にも寄ったが、そこにもクーの姿は無かった。

「大丈夫?」

「はい、まだいけます」

先行するナターシャさんの言葉にそう返す。けれど……正直もう限界が近い。でも、足を止める訳にはいかないのだ。

「……し休むわよ」

わたしの空元気に気付いたのか、ナターシャさんがそう言う。

「…すいません」

「謝る必要はないわ。判斷力が鈍れば、それは死に直結する。それはわたしとて同じ事よ」

そう言って、ナターシャさんが休める場所を探す。すると、し行った先に窟を見つけた。

「ここで休みましょう」

中は思ったより広く、3人(・・)でも余裕があった。

「ヴィクター達から連絡は?」

「ないわね」

ここに來るまでに村を1つ経由し、その際にヴィクターをそこに待機させた。しかし、イルミーナからも、ヴィクターからも連絡はない。

「……あの、ナターシャさん」

突然、リーフィアが口を開く。

「どうしたの?」

「……ここ、お姉ちゃんの魔力ありませんか?」

「え…?」

リーフィアがそう言うので、の漂う魔力に意識を集中する。

……………あった。集中してようやくじられる程度の魔力。これに気付くなんて、さすが姉妹ってじね…。

「ということは、クーちゃんはここまできたということね」

「それにこの殘り合……まだ遠くには行ってないと思います」

普通魔力は霧散する為、空気中に長時間停滯しない。だから、クーはまだ遠くへは行っていない。

「じゃあ直ぐに」

「待ちなさいったら」

飛び出そうとしたわたしの肩をナターシャさんが摑む。

「行くならしっかり準備してからよ。というか、多分クーちゃんは近くにいない」

「……どうして、です?」

「クーちゃんほどの魔力が霧散するには、丸一日はかかるわ。たった數時間で消えるほど弱くないもの」

「………」

……確かにそうかもしれない。けれど、クーに近付いていることも確かだ。だからこそ、落ち著かないと。

「今すべき事は、リーフィアちゃんは魔力回復。サラちゃんは魔導銃に弾を込める事。焦りはよ」

「「……はい」」

リーフィアはここに來るまでにかなり魔法を使ってきたので、魔力はだいぶ消費しているだろう。けれど、それでも魔力切れを起こしていない。流石はクーの妹と言うべきかしらね……。

わたしはクーやリーフィアと比べると魔力はないが、魔導銃を使っているので消費はない。

リーフィアが魔力回復の瞑想にったところで、わたしは魔導銃の弾倉を橫にずらし、空薬莢を捨てる。するとカラン、カランと甲高い金屬音が窟に思ったよりも響いてしまったが、リーフィアの邪魔をしなかったようでホッとで下ろす。

気を取り直し、弾倉を回して弾を込めていく。思ったよりも弾の減りが早い。

わたしの魔法では、ここら一帯の魔獣を相手取るのは難しい。つまり、弾切れはわたしの攻撃手段の喪失を意味する。

(急がないと……)

クーの方が魔法の練度は遙かに高い。それこそ、ここら一帯の魔獣を相手取れる程に。けれど、それも長くは続かない。

(お願い……無事でいて……)

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