《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》118

結界が割れた瞬間、魔刃がサラ達へと迫る。

「っ!」

見えない攻撃であったとしても、魔力の塊である以上、魔力知で避けられる。しかし、その速さは尋常ではない。ギリギリで躱すのがやっとだ。

魔刃を転がって躱し、サラがクーリアの足を狙って魔導銃の引き金を引く。青白いを纏った雷撃弾が砲口から放たれた。

(せめてきを止められれば……)

足や腕はたとえ失ったとしても生やす(・・・)方法はある。それ故サラはクーリアの足を狙ったのだが……

「…《防》」

「っ!?」

明確にクーリアの口から紡がれた魔法は、サラの撃ち込んだ魔導弾を弾いた。

(…理を失っているはずなのに、魔法を?)

サラはその事が頭に引っかかった。魔法を使うためにはなからず集中が必要だ。理を失っている狀況下でそこまで1つの魔法に集中できるとは思えない。

(なにか……おかしい)

そう悩む間にも、攻撃が止むことは無い。迫る魔刃を橫に逸れて躱す。そしてサラがもう一度クーリアに目を向けると……そこに姿は無かった。

「え? ……っ!?」

サラが足音の聞こえた方へ目を向けると……今まさにこちらへとナイフ片手に襲いかかろうとするクーリアの姿があった。

咄嗟にサラが腰に付けた短剣を引き抜いた瞬間、キンッ! と刃がぶつかる音が響く。

(重い…っ)

け止められはしたものの、クーリアのナイフはまるで巖のように重く、サラ自も腕を怪我していることもありしずつ押し負けていく。

必死に抵抗しながら、サラは隙を見つけようとクーリアの顔を伺う。

(っ!?)

その瞬間、サラは何かに気付いたかのように目を見開いた。

「サラちゃんっ!」

ナターシャが二人の間に割り込み、サラからクーリアを引き離す。

「大丈夫?」

「は、はい…」

クーリアから目を逸らさずナターシャがそう聲をかける。サラがしとまいどいながら言葉を返すが、その瞳はクーリアをずっと見つめていた。

(……そういうことね)

サラがリボルバーの弾倉を回す。

「ナターシャさん、クーに近付く隙をください」

「……分かったわ」

ナターシャはサラの言葉に驚き思わず振り向く。だが、その真剣な表を見てそう言葉を返した。

「でも作るのは一瞬が限界よ」

「それで十分です」

その言葉を聞き、ナターシャがクーリアへと駆け出す。するとクーリアは魔刃を作り出し、後ろへと下がりながら連続してナターシャへと放った。

「《ウィンドカッター》っ!」

ナターシャへと迫る魔刃をリーフィアが次々に撃ち落としていく。だがリーフィアの額には疲労からか汗が浮かんでいた。もうこの手段はこれ以上取れないだろう。まさに、これがクーリアに近付く最後の機會だった。

「はぁぁ!!」

とうとうナターシャがクーリアへと追いつきその剣を振るう。するとクーリアは足を止め、その剣を軽々とナイフでけ止めた。

その直後。

バンッ!

銃聲が、森に響いた。

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