《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》119

魔導銃の銃口から放たれた魔封弾は、寸分たがわずクーリアのを穿いた。

その直後クーリアの瞳からが失われ、ドサッと橫に倒れる。…しかし、サラはその様子を悲しむ訳でもなく見つめていた。

「……大丈夫?」

ナターシャが恐る恐る聲をかける。だが、その後の言葉が続かない。

「…ナターシャさん」

ナターシャが言葉に迷っていると、サラが唐突に口を開いた。

「なに?」

「コレ(・・)、本だと思います?」

サラがクーリアを……いや、クーリアだった(・・・)ものを指差す。

「え? ……っ!?」

ナターシャが思わず言葉を失う。だが、無理もないだろう。倒れた時はクーリアそのものだったが、目の前でみるみるうちに皮が干からび、………言わぬ木の人形になったのだから。

「木偶の坊……」

「なんですか? それ」

ナターシャが思わず呟いた言葉に対して、リーフィアが質問する。

「昔からある呪のひとつよ。木の人形を人に化かしてるというものね」

「じゃあ、何処かにっている人がいるんですか?」

「そうなるわね。でも、よくサラちゃん気付いたわね」

「……実は、ほとんど勘なんです」

サラが気付いた理由。それは雰囲気だった。

「何となく、無機質というか……とにかく、クーじゃないって分かったんです」

「何となくで撃ったのね…」

思わずナターシャが苦笑いを浮かべる。それも當然だろう。勘だけで、自の親友を撃つ判斷を下したのだから。

だが、リーフィアはサラの言葉に頷いた。

「サラさんの言いたい事、分かりますよ。お姉ちゃんってなんか普通の人とは違うんですよね」

「リーフィアもなのね」

「……まぁ、それは置いておきましょう。問題はこの木偶の坊を使ってきたのは、確実に私たちの敵だと言うこと。それと……クーちゃんが、捕らわれている可能があるということね」

クーリアの姿を使ってきたという時點で、なくとも敵はクーリアのことを知っていると判斷していい。しかもクーリアの魔法も使ってきたのだ。クーリアが捕らわれ、利用されている可能がある。

「それですけど……多分、クーは見つかりますよ」

「「……え?」」

「これ見てください」

サラが指さす先は木偶の坊……ではなく、その足に絡み付いた蔦。その一端は森の中へ続いている。

「木偶の坊についてはよく知らないけど……完全な遠隔ではないということかしら?」

なくとも、この蔦を辿った先には何かがあると思います」

「…行って確かめるしかないわね。でもその前にサラちゃんの手當てをしちゃいましょう」

ナターシャがサラの腕を軽く洗い、布をキツく巻く。そこまで深い傷では無かったので、その程度で十分だ。

そして3人は蔦を辿り、森の更に奧へと足を踏みれたのだった。

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