《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》120
蔦を辿ってサラ達がたどり著いたのは、不自然に開けた場所に生えた、1本の大きな枯れ木だった。
「ここ?」
「みたい…です」
蔦は枯れ木のいたるところに絡みつき、まるで枯れ木に寄生している手のようである。
ぐるぐると周りを歩いてみるが、蔦が絡み付いている以外何もなく、人の気配もじられない。
「噓……」
そう呟いたサラの顔に浮かんでいたのは、絶。それは、サラがここにクーリアがいるはずだと確信を持っていた故だった。しかし、どこを見てもクーリアの姿はない。サラの顔に焦りが浮かぶ。
「……ちょっと待って。し、離れてくれる?」
ナターシャが何かに気付き、剣を鞘から引き抜く。
サラ達がし困しながらも離れたのを確認してから、ナターシャが枯れ木に向かって剣を縦に振り下ろした。すると、振り下ろした剣筋の通りに木の表面だけがきれいに切斷される。
「……いた」
縦に裂けた枯れ木を見て、ナターシャがそう呟く。その視線の先にいたのは……
「クー!」
「お姉ちゃん!」
サラとリーフィアが駆け寄り、力ずくで枯れ木の表面を引き剝がす。
そして中から蔦まみれになったクーリアを引きずり出した。
「周りは……誰もいないみたいね」
サラ達がクーリアを助けている間ナターシャは周りを警戒していたが、クーリアを捕らえたであろう相手は見當たらなかった。
「クー、クー! しっかりして!」
絡みついていた蔦を取り払い、聲をかける。だが、目を覚ます様子はない。
「脈は、あります。けど、息が……」
「…どうやら仮死狀態になっているみたいね」
冷靜にナターシャがそう判斷する。
「ひとまずここを離れましょう。このまま居るのは危険だわ」
森の中で不自然に開けた場所。を隠す場所はない。
「……はい」
「クーちゃんはわたしが運ぶわね。周りの警戒をお願い」
「分かりました」
ナターシャがクーリアを橫抱きにして持ち上げる。
(っ!? 軽い…)
思わずそのまま放り投げてしまいそうなほど、クーリアのは軽かった。まるで、中に何も詰まっていないかのように。
「じゃああのに……」
リーフィアがそう言って進もうとした、ちょうどその時。
『にがサない』
その言葉と共に、地面から無數の蔦が突き出してきた。
「なっ!」
突然の事で混したサラ達をよそに、周りはあっという間に蔦で囲まれてしまった。さながら、鳥籠の様だ。
(しくじったわ…待ち伏せされていたのね)
ナターシャがを噛む。今思えば蔦が殘されていた事自、不自然過ぎたのだ。
リーフィアとサラがクーリアを守るように周りを囲う。
「誰!」
サラが聲を上げるが、當然返事は來ない。その代わりに、聲の主がその姿を表した。
「え……」
薄暗闇から現れた姿を見た途端、サラ達が言葉を失う。なぜなら……
「お姉、ちゃん…?」
もう1人のクーリアが現れたのだから。
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