《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》122

薄暗い森に、閃が走る。

「ちっ」

『ムダ』

クーリアの魔導弾は蔦の壁に阻まれ、に屆くことは無かった。

(離れてる蔦なら奪えるのに……!)

行使者から離れれば離れるほど、力の制は奪いやすい。逆に近ければ不可能に近い。

「サラさん、私たちで蔦の柵を!」

「分かった!」

の気をクーリアが逸らしているうちに、サラ達が蔦の柵を壊しにかかる。

「「《ウィンドカッター》!」」

2人の魔法が、蔦の柵に牙を剝く。

『っ! サセナい!』

「貴方の相手はわたし達よ!」

サラ達の魔法を邪魔しようとした蔦をナターシャが切り捨てる。

邪魔されなかったサラ達の魔法が蔦にくい込み、一部分が崩れ落ちた。だが、全てを壊すには時間がかかりそうだ。

『チッ…』

「……驚いたよ。まさか貴方がそんな慌てるなんて」

『……』

「そんなにクーちゃんを逃がしたくないの?」

『…ジャマ、されナイたメ。わたシの復讐(・・)ヲ』

「復讐……?」

その言葉を聞き、クーリアの表に影が差す。

「……きっかけは、かつて起きた魔の氾濫」

クーリアが、靜かに語り始める。その當時を、思い出す(・・・・)かのように

「今から137年前、起きた魔の氾濫の復讐」

「な、なんでクーがそれを…」

その話はサラ達が先程ドリトールから聞いたばかりのものだ。そこに居なかったクーリアが知るはずも無い。

「……サラ達が聞いたのは多分、代償魔法で國を救ったってだけ(・・)話じゃない?」

「だけって…まさか、続きがあるの…?」

クーリアが靜かに頷く。

「その代償魔法、本當にんだ(・・・)もの?」

「まさか…」

『……ソウ、あノ人(・)は、やさシカッたかラ』

「じゃあ貴方は……」

「かつて代償魔法を使った霊使いの、契約霊だよ」

サラ達が息を呑む。まさか、まだ生きていたとは思わなかったからだ。

「でも、それをなんでクーが…」

「……わたしは、あなた。あなたは、わたし。わたしにとって、貴方は命の……いや、命そのもの(・・・・)だから、かな」

そう言ってのことを見つめるクーリアの瞳は、悲しげに歪んでいた。

「クーの、命そのもの?」

『…クーリアをたすケタのハ、ただノ偶然』

「そんなことない!」

クーリアが珍しく聲を荒らげる。

「もし偶然なら、貴方は既にわたしを殺していたはず。貴方がわたしを生かす理由がないもの」

『たダ、りよウできルト思ったカラ。憎悪ヲあつメル為に』

「それなら、なんで木偶の坊を作できるようにしたの」

クーリアと繋がっていた木偶の坊は、クーリアが作していなかった。それが途中でクーリアに作が移っていたのだ。

(だから、わたしの魔導弾を防がなかった…)

クーリアが作していなかったのならば、あの時のサラの魔導弾を避けるなりして防いでいただろう。それをしなかったのは、クーリアが作していたからに他ならなかった。

「貴方は、本當は」

『チガウッ! わたシは、ワタシは…!』

突如蔦の柵が崩れ、全ての蔦がその鋭利な切っ先をもってクーリア達へと襲いかかった。

「《防》!」

クーリアが咄嗟に行使するが、數の暴力には葉わない。防を突き破った蔦がクーリア達へと迫る。

(言う事、聞かない…!)

近付いてきた蔦の制を奪おうとするが、全く言う事を聞かない。

あっという間にクーリアの眼前へと蔦が迫り……

「ワンっ!」

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