《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》123

「え…」

クーリアが、いや、その場にいた全員が目を見開いた。可らしい鳴き聲が聞こえたと思えば、先程まで荒れ狂っていたはずの蔦が全て地に落ちたのだから。

「リー、ヴォ?」

「ワンっ」

クーリアに呼ばれたリーヴォは、元気な鳴き聲と共に一目散に彼の元へと駆け寄った。

「なんで、ここに……」

クーリアが疑問の聲をあげるが、當然ながらその疑問に答える聲はない。

『そ、レ…なん、で…』

掠れた聲で、霊が呟く。その瞳には、悲しみ、怒り、嘆き、そして……懐かしさ(・・・・)が浮かんでいた。

『もう、やめよう?』

「っ!?」

その時、突如として響いた、い聲。

「リーヴォ、なの…?」

『そうだよ、主様』

リーヴォが霊へと目線を向けながら、そう答える。

響いたい聲は、リーヴォのものだったのだ。

『…ボクのせいなんだ。あの子(・・・)が、こんな事を始めてしまったのは』

「…え?」

クーリアが詳しく聞こうとするが、その前に霊の聲が響いた。

『やっパり、そウ、だ…いキテタ、』

「生きて…まさか」

『…ごめん。ずっと待たせた』

その言葉が意味するのは…

『あるジ、サマ…』

霊が、もう枯れきってしまったはずの涙を流し、地面へとへたり込む。そこへリーヴォが靜かに歩み寄った。

『……ごめん。君を置いて、そしてこんなにも待たせてしまって』

『…イい、かえっテきてクレたかラ。でモ…ナんデ…』

『それは、君のおかげでもあるんだ』

『ぇ…?』

リーヴォがクーリアへと目線を向ける。

『君の力を、主様を通してもらった。だから、こうして君と話せるんだ』

リーヴォはクーリアから、霊の欠片の力をけ取ることで、霊獣としての変革を遂げていたのだ。

「だから、軽かったんだ…」

『実はあってないようなものだから』

クーリアはやっと腑に落ちた。リーヴォの正について。魔力を糧とするなど、存在しないのだから。

『さぁ、終わらせよう』

『……そレは、むり、ダヨ……もウ、テオくれ』

「…っ!?」

『わたシは、墮ちテ、しまッタかラ…もウ、むり、だヨ…』

墮ちてしまった霊は、もう戻ることは許されない。そして、その力もまた、制することは出來ない。

魔の氾濫は、墮ちた霊の憎悪に染まった魔力が引き起こしたもの。それを霊自がどうにかすることは出來なかったのだ。

「そんな……じゃあ、どうすれば……」

サラ達が絶の表を浮かべる中、クーリアだけは、ただ真っ直ぐと霊を見つめていた。

「…大丈夫。わたしが、終わらせるよ」

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