《出來損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出來損ないをむ》125※

「王國の歴史上最悪の厄災、『魔の氾濫』。2度にわたる魔獣達の暴走は、數多くの兵士、冒険者、そして…1度目は1人の青年、2度目は1人のの盡力によって、終焉を迎えた。自らの命を犠牲として國を救った彼らは、今も尚、人々の中に生き続けている……」

パタンと分厚い歴史書を閉じる。これは『魔の氾濫』から1年後、現在から數えるとちょうど3年前に出版されたものだ。

「だいぶ腳はあるけれど……まぁ、こんなよね」

本にするにあたり多されるのは仕方ない。わたしとしては、隠されていた霊使いの犠牲。そして…わたしの親友の犠牲。それらさえしっかりと噓偽りなく記載されていればそれでいいのだ。

「でも、結構神聖化されちゃってるみたいねぇ」

特に酷いのはやはりクーのほうだろう。いやまぁ別に悪い事では無いのだが……どうやら學園の頃の呼び名である【天使】がどこかから洩れたらしく、本當に天使だったのでは? みたいな噂が出來上がってしまっているのだ。

「どうしようね、クー(・・)?」

わたしは、部屋の隅で蹲りこちらを恨めしそうに睨みつけるを見やる。これ読むの5回目くらいだけど、まだそんな反応するのね。

「……なぁにがどうしようなのよ。元兇サラじゃないの」

心底嫌そうな聲でそう呟く。まぁ確かにこの本を監修したのわたしだからね。

それはそうとして、何故死んだはずのクーがこの場にいるのか。それは、クーが転生したから(・・・・・・)に他ならない。

……うん、自分でも何言ってるのって思う。わたしもこうして1年ほど前にクーが帰ってこなかったら、有り得ない話だと一蹴してただろうし。

「まぁ基本はわたし以外に見えてないんだから、そこまで問題は無いでしょ?」

「…一応はね」

この會話から分かるだろうが、今のクーは人間では無い。厳にはちょっと違うらしいのだが、霊に転生したらしい。

というのも、クーが消してしまったあの霊はこの世界において結構大事な存在だったらしく、消えたままでは々不味い。ということでクーがその役割を擔うことになったそうだ。

そんな話をわたしに説明してくれたのは、転生したクーと共に現れた、白金の髪を持つしいだった。

「やっぱりここにいた! ちょっとクーちゃん借りるわよ!」

「え、あ、ちょっ! ルナ様(・・・)ッ!?」

そのがいきなり現れてクーの腕を摑んだと思えば、一瞬でクーと共にその場から消え去ってしまった。

「あー…連れてかれちゃった」

その景をみて、またかと思いながら呟く。

先程説明したようにクーは今結構重要な地位にいるので、こうして時折連れ去られるのだ。

……連れ去られるくらいならちゃんと仕事してと思うけど。

「……わたしも仕事しましょ」

今頃クーもヒィヒィ言いながらやっているのだろうかと思いながら、機の端に溜まった書類を手に取り、仕事を再開するのだった。

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