《【連載版】無能令嬢と呼ばれ婚約破棄された侯爵令嬢。前世は『伝説の大魔』でした。覚醒後、冷遇してきた魔法學園にざまぁして、國を救う。》08
私が棒立ちになって思案していると、先にビクトリア姫がき出す。
素早く前に踏み出し、細剣(レイピア)を私に突き出すが……私は後ろに飛び退き、突き(トゥシュ)をわした。
……覚醒後の私のポテンシャルは、以前とは違う。
きが視(・)え(・)る(・)。
鋭く踏み込んだ突きを躱(かわ)され、ビクトリアの表が険しくなった。
「やるわね。ではこれはどうかしら?『空裂斬(ウインド・ブレイク)』!」
タンタンッ……!
ビクトリアは大きな數歩で一気に間合いを詰めて、魔力を込めた細剣(レイピア)を繰り出してくる。
その魔力……渦巻く風の屬の魔力と、闇屬の混じり合ったもの。
珍しい。地水火風の四大屬と、闇屬を同時に使えるのね。
普通は地水火風の自然系屬か、と闇屬のどちらかしか使えないのだけれど……そういえば、大昔にアンドルー王子から自慢話で、「妹のビクトリアは闇屬のS級魔法使いだが、風屬もれるレアなS+級」、そう聞いていたっけ……。
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それを剣技に組み込んでくるとはなかなかの腕前。
伊達(だて)に『魔法戦士』『姫騎士』を名乗ってはいないわね。
でもまあ、私の相手ではないのだけれど。
「『盾(エクスド・ルス)』!」
私の囁く呪言で生み出されたの壁が、ビクトリア姫の強力な突きを弾き返し、その衝撃が彼のをふっとばした。
闇屬の魔法を屬の魔法で弾き返した反だ。
それなりの衝撃だったはずだけれど、ビクトリア姫は後ろに吹き飛ばされても華麗に著地。
風の魔法で吹き飛ばされた衝撃を相殺したようだ。
この子、剣だけではなく、魔法をるのもすごくうまい。
私とビクトリア姫の攻防に、観衆と立會人の教員が歓聲をあげた。
「いいぞ、ビクトリア!上手いぞ!」
アンドルー王子もはしゃいだ歓聲をあげる。
うるさいな。
ほんと黙ってほしいんだけれど。
「お兄様!気が散ります。黙っていてください。私がお兄様の雪辱を果たす!」
ビクトリアは油斷なく姿勢を整え、また勢いよく踏み込んできた。
ガンガン攻めるタイプみたいね。
「『夜風突き(ナイト・チャージ)』!」
そのスローモーションのようなきをどうするか、一瞬思案したけれど、傷つけずどうにかするには、これしかないでしょう?
『石(ピエドラ)よ』
私の放った魔法が、ビクトリア姫に直撃した。
彼はをガクリと揺らし、私に細剣の先が到達する前に地面へと倒れ込んだ。
ざわめく観客達。
私が発した魔法は、現代では失われた古式回路で発する。
もう現代では失われた技なのだ。
「なにこれ?が重いわ……かない!」
大理石の床に倒れ込んだビクトリア姫が苦しげにうめいた。
「おい、ビクトリアどうした!?」
観客の中でアンドルー王子がぶ。
「わからない……の上に石でも載っているみたい……。
全くが……、う、かない!」
床の上でをよじるビクトリア姫。
だが、腕もも足も、起き上がることはない。
私の放った魔法が、彼に重くのしかかっているのだ。
彼を傷つけないよう、相當手を緩めて放った技だ。
「降參ですか?それならばを解きます」
私は淡々と言った。
しかし、ビクトリア姫は悔しげに震えながら顔だけあげて、睨みつけてきた。
降參するつもりはなさそうだ。
「降參など冗談ではない!こんな魔法など……『風の舞(ウインド・ダンス)』!」
ビクトリア姫は風でを浮かす魔法を発。
なるほど。上からの重圧を風魔法で相殺するつもりね。
でも、私がの重圧を増やせば簡単に勝ってしまう。
「『大石よ(ピエドラ・グランデ)』
「あああああああッ!」
「降參してください。ビクトリア姫。私はあなたを傷つけたくないです」
「ぐうう……參りました……」
床にキスをしているビクトリア姫。
歯と歯の間から吐き出すように降參の言葉を放った。
「勝負有り!勝者・リンジー・ハリンソン!」
立會人の教員が手を挙げて高らかにんだ。
決闘の様子を眺めていた生徒たちがどよめき、拍手があがった。
私は魔法を解除。
すぐにビクトリア姫に駆け寄って、彼がを起こすのを手伝った。
「うう。リンジー・ハリンソン。
私の負けよ……『無能令嬢』と呼ばれたあなたが、一夏の間にここまで強くなるなんて」
「夏休みって、皆変わりますから」
私は目をそらして適當に答えた。
「リンジー!お前、我が妹になんてことを……!」
走り寄ってきて気ばんでいるアンドルー王子だったけれど……。
「お兄様!これは正式な決闘!
後から文句を言うなど以ての外!
決闘のルールをわかっていないのですか!
私に気高く敗北することもお認め下さい」
ピシャリとアンドルー王子の言葉を跳ね返すビクトリア。
「リンジー様。これまでの無禮をお許し下さい。
この決闘も、相當私を傷つけないよう手を抜いてくださったのはわかります。
私は誇り高き姫騎士。
勝負に負けた以上、今後は貴に敬意を払いましょう。
力になれることがあれば、力になりますわ!
私は、私より強い人が大好きなのです!」
そういうビクトリアの瞳は妙にキラキラして瞳孔が開いているようだ。
こ、これは一。
「リンジー様!もうお兄様との婚約関係は解消されていますので、義姉妹ではございませんが、『お姉様』と呼んでも良いですか!?」
お、お姉様!?
「あ。あ……どうぞ」
「ビクトリア!お前は一どっちの味方なんだ!」
アンドルー王子の聲がけなくホールにひびいいた。
そして、やたら腕を組んでベタベタしてくる満面の笑みのビクトリア。
その様子に嫉妬したアンヌマリー、私の腕をつかんでさっさと教室に連れ戻す。
「リンジー!あなたの親友は私よね?」
アンヌマリーもキラキラした瞳で詰め寄ってくる。
こ。こんなに熱い子だっけ?
「もちろんよ!私たちは親友なんだから!」
こうして。
夏休み開けの一日で、私の學園生活は大きく変化した。
(続く)
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