《【連載版】無能令嬢と呼ばれ婚約破棄された侯爵令嬢。前世は『伝説の大魔』でした。覚醒後、冷遇してきた魔法學園にざまぁして、國を救う。》14

翌日。

私は<赤荒野の斷崖(レッドクリフ)>の上空を飛び、最後のエリアを魔法で撃。

地上掃討部隊が該當區域の魔の消滅を確認。

<赤荒野の斷崖(レッドクリフ)>の魔は全て掃討。

こうして私の役目は終わった。

飛行魔法でギマラン領の砦に戻る。

砦に戻ると、砦の魔法使い、兵士、そして平野側の町の人達が大歓聲で私を迎えてくれた。

「リンジー様萬歳!死の大地に平和をもたらしてくれた神だ!」

「リンジー様は、半島を救ったあの『伝説の大魔』エララのようだ。ありがとう!ありがとう!」

笑顔と歓聲が私を包む。

學院の生徒たちがびてきた時に見せた笑顔とは違う、心からの笑顔。

これまで魔の恐怖に怯えながら暮らしていたギマラン領領民の、本の笑顔だ。

私は歓聲に囲まれ、無自覚のうちに笑みを浮かべていた。

「笑顔もしいな、リンジー」

肩を叩かれ、振り返るとジョアキンが立っていた。

戻ってきた地上掃討部隊。

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仮面の騎士ビッキーも私に駆け寄ってきて、嬉しそうに私の手を取り、跪いて手の甲にキス。

「我が剣の主、リンジーお姉様。お疲れ様です。あなたは英雄です」

そんなこと言われると照れちゃう……というか、正を隠しているとはいえビッキーはこの國のお姫様、ビクトリアなんだけれど?

お姫様に跪いて手の甲にキスなんてさせていいの!?って思っちゃうな。

私が照れていると、ビッキーはそんなことお構いなしに私をぎゅっと抱きしめた。

「最強の魔、私のお姉様❤お慕いしております」

ちょっとちょっと!うるうるした瞳でこっち見ないで!

「リンジー。見ろ。

お前が救った民だ。

お前が俺の領地を救ってくれた。

ありがとう――お前は偉大なる魔法使いだ」

ビッキーに抱きつかれたじたじしている私に、ジョアキンが言った。

砦に集まった人々の笑顔。

に怯えて暮らさないですむと……心から謝してくれている笑顔と稱賛。

私がこれをし遂げたのか……。

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――『無能令嬢』と呼ばれていた私が。

私はじわっと涙が浮かびかけたけど、それを振り払った。

「お褒め頂き恐です。

さて、ここでの用事も終わったことだし、私は王都に戻るわ」

「なに?そんなに急いでか。

俺と勝利の盃をわしてはくれぬのか」

「次の機會に」

「ならば、それは約束だぞ。

また會いに來てくれ……俺は。

ずっと砦で獨りだった俺にとって、全てを変えてくれたお前は……」

「いかなきゃ。それでは。このまま飛んで帰ります」

「お姉様!?」

ビッキーが驚いている間に。

私はジョアキンの言葉を遮り、風の魔法を起こす。

私は空に舞い上がった。

「ビッキー!王都までは自力で戻れる?」

「は、はい、馬車を手配しますわ……でも、お姉様、連れて行ってくれないんですの?」

「空は一人で飛ぶことにしているのよ!」

私は砦の上空を離れ、一度高く舞い上がる。

足元に広がる赤い大地。

この10日弱、向き合ったを吸う不の大地。

私は一度ぐるっと<赤荒野の斷崖(レッドクリフ)>の上を旋回すると、そのまま王都へと飛んだ。

しい赤い大地。

死の大地と呼ばれた<赤荒野の斷崖(レッドクリフ)>。

さようなら。

私は荒野より、海が好きなの。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

ギマラン領から半日で王都へ帰還。

私は自宅でお風呂にって髪のり込んだ赤い砂を洗い流し、だしなみを整えると、すぐに王宮に向かった。

謁見の間でレジュッシュ國王陛下の前に跪く。

「リンジー・ハリンソン。

<赤荒野の斷崖(レッドクリフ)>魔を全て殲滅した、か。

しかもギマラン領からたった數時間で飛んで王都に戻るとは。

さすがだ……『虛(ゼロ)級』の魔法使いというのは……もはや、人智の及ぶ存在ではないのかも知れぬな」

レジュッシュ王國國王陛下は嘆息し、俯いて呆れたように首を振った。

「これでサンドル國との冷戦も終わる。

<赤荒野の斷崖(レッドクリフ)>とサンタ・ヴェレ諸島の領有権爭いは終結することだろう。

冷戦は終わりだ。國には數十年ぶりの平和が訪れる。

リンジー・ハリンソン。

國家元首としてお前に禮を言おう。

よくやった。ありがとう」

王宮の謁見の間には、元婚約者のアンドルー王子、私の両親と兄のイグニスも揃っていた。

他のレジュッシュ貴族達も集まっている。

まだ地上を移中して王都に帰還中であろうビッキー……もとい、ビクトリア姫は不在。

「すごいわリンジー!よくやりましたよ!」

「さすが我がハリンソン家の娘だ!」

「わが妹、誇らしいぞ。兄である俺も、王宮で鼻が高いな」

両親と兄がなにやら騒いでいる。

私の手柄を、なんだと思っているんだろう。

まさか、ハリンソン家の手柄だとでも?

「リンジー!

君をもう一度取り戻したい。

君は優れた魔法使いだ。A級魔法使いの僕と子をなせば、素晴らしい魔法使いが生まれるぞ!」

未だにアンドルーがなにやら寢言を言っているけれど、無視。

「國王陛下。

<赤荒野の斷崖(レッドクリフ)>の問題を解決しました。

約束通り、私の願いを聞き屆けて下さいますか」

「いいだろう。

サンタ・ヴェレ諸島の小島を一つ所有したい、とのことだったな。

お前がギマラン領に出向いている間に、サンタ・ヴェレ諸島領主と話をつけておいた。

真珠(クアルソ)海岸から見える小島を一つ、お前にやろう。

名も無い島だが、あそこはお前だけの島。自由に使うと良い」

「ありがたき幸せ」

「そしてあと二つ。

リンジー・ハリンソン。

お前に寶名を賜る。

これからは『虛空(こくう)の大魔』を名乗るが良い。

そして、ハリンソン侯爵家から籍を抜く願いも葉えよう。

これからは、お前はただのリンジー。『虛空の大魔』リンジーだ」

「なんですって!?」

お母様が悲鳴のような聲を上げた。

「ハリンソン侯爵家から籍を抜くだと……!?」

お父様が震え聲で続ける。どういうことだ、なんなんだと、兄も騒然とし始めた。

「ハリンソン侯爵家の者よ、靜かにせよ!」

そこを、國王陛下が一喝。

「これまで、稀有な能力を持つリンジーを散々家庭で冷遇してきたそうだな。

人それぞれ才能の開花には時間差というものがある。

それを理解せず、リンジーを詰り、まるでのような扱いをしてきたというではないか。

見損なったぞ、ハリンソン侯爵。

そして、その息子よ。

お前も妹をかばうことなく、両親に味方していたそうだな」

兄イグニスがぐっと言葉に詰まった。

「弱き存在をかばうことなくいじめ抜く者は王宮にはいらぬ。

本日を以(もっ)て、ハリンソン家から侯爵位は剝奪するものとする。

王都のタウンハウスも沒収だ。

これからは、一平民として自分たちの力で暮らすがいい。

なに、ハリンソン家が再びその魔法の才能で國に貢獻すれば、また爵位が與えられる日もくるであろう。

これからは家名に甘えず、実力で生きてみせよ」

両親と兄は國王陛下の言葉に目を見開き、顔が真っ青になっていき……。

事態を飲み込んだ後は、獣のように何かんでいた。

そして、集まった兵士達に囲まれ、捕らわれ、謁見の間を強引に退室させられていった。

リンジー、なんとか言え、家族だろう!とかなんとか、々なわめき聲が聴こえてくるけど、私の心はしもかなかった。

ざわめく謁見の間の貴族たち。

最高位の侯爵家の沒落を目の當たりにしたのだ。當然だろう。

私は侯爵家から籍を抜きたいと頼んだだけで、父の侯爵位を剝奪しろとまでは頼んではいませんよ?

でも、これも當然の結果なんじゃないだろうか。

あの人達は同じ家に住んでいただけ。私にはもはや、家族ではなかった。

「父上、やり過ぎでは……?

僕のリンジーをいじめていたとしても、ハリンソン一家の侯爵位の剝奪はさすがに……」

アンドルー王子、まだ「僕のリンジー」なんて言っている。

はあ。

ほんと呆れるな。

「アンドルー。

お前もまだ勘違いしているようだな。

兵士達。アンドルーを塔の最上階に連れて行け。しばらく謹慎処分だ」

「なんだって!?お父様、どういうことだよ!」

「お前は國王である私に無斷でリンジーとの婚約を解消し、しかもそれを學院の食堂、公衆の面前にて獨斷で行ったと言うではないか。

しかもその後、新たに男爵家の令嬢と婚約宣言までしたそうだな。

そしてすぐその令嬢を一方的に突き放し、今度はまたリンジーに言い寄っている。

全て私に許可を取っておらぬな。

お前には王子としての自覚がない。

お前の行の全てが、王家の者としてだけでなく、人間として恥ずべき行であると、理解していないのか?」

「お、お父様、だってそれは……リンジーが悪いんだ!

リンジーが『無能令嬢』だったからで……」

「くどい!

もうよい、お前を甘やかし過ぎたのは私の責任でもある。連れて行け……」

國王陛下は頭を抱え、側近に手のひらで合図。

両脇を抱えられたアンドルー王子は、捕まったのように引きずられて謁見の間から退室。

隣で黙っていたビクトリアも止める気配がない。

貴族たちのざわめきは最高に達した。

「良いのですか、國王陛下……。

まだリンジー・ハリンソ……いえ、『虛空の大魔』リンジーがこれからどうき、國家にどう影響を與えるかわかってはおらぬのですぞ!」

並ぶ貴族の一人がぶ。

「なるほど、それもそうだ。リンジー。お前はどうしたい」

私がどうしたいか……。

私はどう生きたいか……。

「私は、ただ平和に暮らしたいです。

サンタ・ヴェレ諸島の頂いた小島で、一人で靜かに暮らします。

もし、また國家に急事態が訪れて、私の力が必要になったら、あの島に遣いをよこして下さい。

私は、このレジュッシュ王國、ひいてはアラス大陸の平和のためなら、いつでも力をお貸しします」

どよどよどよ……。

謁見の間はどよめき……そして、誰かが拍手を始め、やがて居並ぶ貴族諸侯達全ての拍手がホール中に響いた。

「『虛空の大魔』萬歳!」

「『虛空の大魔』リンジー、萬歳!」

「魔法王國レジュッシュ王國に祝福あらんことを!」

歓聲と拍手はいつまでも続いた。

國王陛下は玉座を降り、両手で私の手を握った。

その手は暖かかった。

「これまでの息子の非禮を許してやってほしい。

そして、息子の婚約者のお前の境遇に気付かなかった、愚かな私のことも……」

「國王陛下。

私はもう怒っていません。ただもう、平和に暮らしたいなと……」

(続く)

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