《【連載版】無能令嬢と呼ばれ婚約破棄された侯爵令嬢。前世は『伝説の大魔』でした。覚醒後、冷遇してきた魔法學園にざまぁして、國を救う。》15

こうして。

私はサンタ・ヴェレ諸島の小島の一つを手にれた。

それは小さな無人島。

丘のようななだらかな山と、その頂上付近から流れる川を幾つか抱いている。

そして、小さな館を建てるのに十分な平地もあった。

その海が近い平地に、二階建てのテラスのある石造りの館を魔法で構築した。

なかなかの出來栄えだ。

魔法で家も運び込み、すぐ暮らせる狀態に整えていった。

今後足りないものが出てくれば、サンタ・ヴェレ諸島の町か、王都辺りに飛行魔法で買いに行けばいい。

國王陛下からは報奨金も貰っている。

當分は何もしなくても生活出來るだろう。

日中は小島の砂浜で泳ぎ、疲れたら浜辺のヤシの木で晝寢。

お腹が空いたら館に戻り、魔法で調理した食事を採る。

サンタ・ヴェレの町で買ったフルーツジュースを飲み、夜はテラスで波の音を聴きながら星を眺める。

年中溫暖で気候の良いサンタ・ヴェレ諸島。

ハリケーンのシーズン以外は快適そのものだ。

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ハリケーンが襲ってきても、島に結界を張ってしまえば被害はないだろう。

テラスの藤の椅子に腰掛けると、真っ白な浜辺の真珠(クアルソ)海岸が見える。

大魔エララ……前世の私を祀った『海の祠』のかがり火も。

り、空が緋と濃紺のグラデーションを描くまで、私はそこに座って波音を聴いていた。

「どうだ?この島の住心地は」

背後から聞こえたのは、ようやく聞き慣れて來た聲。

振り返られなくてもわかる。

あの、黒髪、無髭の流浪の錬金師だ。

私の前世の記憶を蘇らせ、赤荒野の斷崖(レッドクリフ)にも現れた神出鬼沒の男。

「住み心地は最高よ。

ようやく、自分の居場所を見つけた気がする」

「長年、真珠(クアルソ)海岸の祠で眠っていたせいかな。

いや、お前は昔から海が好きだった……。

だから、あそこにお前を祀ったんだ。エララ」

男は私の橫の椅子に座り、並んで真珠(クアルソ)海岸の方を眺めた。

「俺のことを思い出したか?」

「ええ。あなたはチコね。

前世の私の人。

錬金師のチコ」

私の前世の記憶は、覚醒後も漠然としていた。

魔法の回路構、発やコントロールは脊髄反で出來たんだけれど……。

三百年前の人生の記憶は、斷片的で曖昧なままだったのだが……。

<赤荒野の斷崖(レッドクリフ)>で様々な魔法を駆使しているうちに、過去世の記憶も甦ってきていた。

大魔と呼ばれた私、エララには錬金師の人がいた。その名はチコ。

過去世の思い出の中には、今と同じ容姿のチコとし合っていた記憶がある。

過去、エララの魔とチコの錬金で、『長命』のを完させたのだ。

チコは自分にそのを使ったけれど、エララは『長命』のを使うことは好まず、自然のまま生きて、歳を重ね、病気で死んだ。

そして、チコにサンタ・ヴェレ諸島が見える真珠(クアルソ)海岸に葬ってしいと頼んだのだ。

「海や、真珠(クアルソ)海岸、サンタ・ヴェレの島々を眺めていると落ち著くの。

それは前世からだったのね」

「ああ、お前は本當に海が好きだった。

俺よりも一人で海を眺める事をしていたぞ。

心が落ち著く、そう言ってな。

お前は、どんな人間や魔でも敵わない大魔だったが、本來は平和を好み、靜かに暮らしたがっていたんだ。

レジュッシュ王國、半島の英雄として祭り上げられて以降、しょっちゅう魔討伐に駆り出されたり、農作の為に天候を変えたりと多忙だったが、暇を見つけてはサンタ・ヴェレの島々を周っていた。

そして、真珠(クアルソ)海岸で星を眺めていた」

「そうだったわね……もう遠い記憶だわ。

ねえ、チコ。なんで私の前に現れたの?」

「前にも言ったろう?

あまりに俺の人が不憫だったからさ。

見るに見かねてな。今生で潛在能力を引き出すには、前世の影響が強すぎたようだ。

俺はエララとの約束を破り、生まれ変わりのお前……リンジーに、前世の記憶を復活させた。

……そう、エララから、もし自分が生まれ変わっても干渉しないでそっとしてしいと頼まれていたのに、俺はその約束を破ってしまったよ。

だが、その後は、お前が自らいたんだぞ。

レジュッシュ王國の冷戦を終わらせた、『虛空の大魔』様」

「よしてよ」

私は苦笑した。

「エララ、いや。リンジー」

穏やかに話していたチコの聲のトーンが低くなった。

「なに?」

「今のお前は――まだ俺をしているか?」

そうか。チコ。

――チコはまだエララをしているのね……。

謝している。

でも私はリンジー。エララじゃない。

あなたをしてはいないわ」

「そうか……。

まあ、そうだよな。

生まれ変わりとはいえ、別人なんだから」

チコはため息を吐き、椅子にそっくり返って天を仰いだ。

「仕方ないな。

これもまた、運命なんだろう。

リンジー。お前はしばらくここで隠居生活か?」

「ええ。『無能令嬢』だった頃から、學園で唯一仲良くしてくれていたアンヌマリーがたまに遊びに來てくれるって言うから、完全に孤獨ではないから。安心して。

それに、アンドルーの妹のビクトリアも、遊びに來たいと言ってくれていたしね。

それに、<赤荒野の斷崖(レッドクリフ)>の魔が一も殘らず消滅したかも、今度確認にいかなきゃね。

ついでに、ジョアキン・ギマラン公爵にもお會いしようかしら?

一杯付き合えっていを斷ってしまったけれど、今なら一杯位お付き合いしてもいいかも」

「ジョアキンと?

やめとけ、やめとけ!あいつは慣れしていないからすぐお前にして熱烈に迫ってくるぞ」

「ふふ。そうかもね。でも、私は今自由。

いつでも好きなところに行けるし、誰も私を縛り付けることは出來ない……。

本當の人生を満喫しなきゃ」

私は笑った。

心からの笑みだった。

「ああ。これまでの分、人生を目一杯楽しめよ。

時々俺も付き合うぜ。

俺は不老長壽、長すぎる人生だ……どうも、毎日が退屈すぎてな」

「いいわよ。

ただし、まずは禮儀正しい知人からのスタートよ?

勝手にこうやって家にってこないで、玄関をノックしてってきてね。

それから……しずつ時間を重ねて、今生では、友達になっていくっていうのはどうかしら」

「はいはい、細かいやつだ」

チコは苦笑いしたけど嬉しそうだ。

もう『無能令嬢』と呼ばれたリンジー・ハリンソン侯爵令嬢はいない。

私は『虛空の大魔』リンジー。

さて。これからの人生、どう生きよう?

とりあえず、無敵みたいだけれど。

(一部完・続く)

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次回から二部がはじまります。

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