《自稱空気の読める令嬢は義兄の溺を全力でけ流す(電子書籍化進行中)》語の始まりはいつだって説明的

のんびり更新していく予定です

全部で10話いくかいかないか。

コメディです。軽い気持ちでお読みください。

「空気の読めるになりなさい」

祖母の教えである。

思えば祖母が生きていたあの頃が私の人生における幸せの絶頂期だったように思う。

私、チェルシー・ディパーテッドは、子爵家の長として生まれた。十歳になっても弟妹が出來ず、このままいくと婿を取って家を継ぐのだろうと皆が予想し出した頃、祖母がこの世を去った。

家中がしんみりする中、やんちゃ盛りの私も空気を読んでしんみり過ごした。

それから一年も経たないに、両親が馬車の事故で帰らぬ人となった。一度に両親を亡くして酷く衝撃をけたが、子供の面倒を見ているどころじゃなく忙しくなってしまった使用人達を見て、空気を読んで泣きんだりしなかった。

不運な一族であったのか、近しい親族は誰も現れなかった。小説に出てくるような貴族令嬢には、生き殘った彼をたらい回しにしてお荷扱いするようなたくさんの親戚がいるというのに、私にはそんな親戚すらいない。天涯孤獨。お可哀想に。周りの大人達が私を気の毒そうに見た。領地経営の事など何も教えてもらえなかった私は、これからどうしようかと途方に暮れた。今まで顔を合わせた事もない遠い親戚だという男爵一家が我が家を訪れたのは、そんな時だ。

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私の記憶にもないし、執事も聞かされていなかったらしい。それでも強引に家にり込んだ彼等は、我が顔で暮らし始めた。貴族院に確認を取る為に執事が屋敷を離れている間に、私は自室を男爵令嬢に奪われていた。殘っていた使用人達は抵抗してくれたが、相手は貴族だ。下手な事をして使用人達が暴力を振るわれたら大変なので、私は黙って部屋を明け渡した。

待っていても執事はなかなか帰って來なかった。有能な執事だが、家系図を遡っても完全に繋がりが無い事を確認するのは容易な事ではないらしい。しかし男爵一家は下品で勝手で、のつながりがあるとは到底思えない。母の寶石類やドレス、父の書斎にある金品。それらを、勝手に使い込んでいたようだ。

「ねえ、この家を出ていってくれない?」

この家を訪れた時にブリアナ・フリーザーだと名乗った男爵令嬢が、仁王立ちしてそんな事を言い出した。

「ここは私の家ですが」

「違うわ。ここはもう私の家よ。私、チェルシー・ディパーテッドのね!」

チェルシー・ディパーテッドは、私の名前である。その時に初めて、我が家は男爵一家に乗っ取られたのだと悟った。私にりすました下品な令嬢は、ゲラゲラ笑いながら元の私の部屋へっていった。

「なるほど」

今は撤退の時期である。空気を読んだ私はそう確信していた。ごねて屋敷に殘ろうものなら、やがて待が待っている。ここは一度引こう。私はわざと屋敷に使用人を殘し、荷を纏めて裏門からこっそりと出る事にした。不在の執事へ行き先を書いた手紙を殘す。あとは屋敷に戻ってきた有能な彼がなんとかしてくれる事だろう。両親が亡くなって、約ひと月の事だった。

「お嬢様、よろしいのですか?」

「今はね。だって私まだ子供だから、何の力も無いもの」

「いつか取り返すおつもりですね? さすが大奧様の教育をけたお嬢様です」

「おばあ様は、空気を読む事の他に、何でも簡単に手にるとは思わない事を教えてくれたわ。努力もせずに私達からディパーテッド家を奪った男爵一家をそのままにしておくつもりは無いわ」

私付きの護衛を一人引き連れて、北へ向かった。領地の北の街に、祖母が建てた孤児院がある。そこで、護衛ともども厄介になるつもりだ。十一歳では、何も出來ない。まずはそこで教育をけながら長していくつもりだった。祖母の孤児院は、王立學園に匹敵するほどの教育を施している。淑教育も充実しているし、貴族らしい振る舞いなども教えている。つまりそういう訳アリな子供達が預けられている孤児院なのだ。いつか貴族が迎えにくるかもしれない。平民から急に貴族になっても困らないようにするための教育だ。

私の護衛レジナルドは、孤児院で剣を教える事になった。それもまた、貴族には大切な要素なのだ。

數年はここで暮らそう。二人でそう語り合った三日後。事態は急変した。

「チェルシー様!」

皆と並んで教科書を出していた私のもとに、教師が駆け込んできた。

「先生、私は今は子爵令嬢でもなんでもないんですから、様などつけなくてもいいと何度も……」

「それどころじゃないんです! 急いで院長室に來て下さい!」

「あら! それは一大事ね!」

「まだ何も言っていません! 空気を読んで私に合わせようとしなくてもいいからお早く!」

この三日間、私は空気を読みに読んだ。『空気』というニックネームが出來たほどだ。あら、これもしかしてある意味イジメじゃないかしら。

子供達との関係は良好で、『大將』と呼ばれる子とも仲良くなった。一見淑やかなのに喧嘩を吹っ掛けるとガチで毆り合いの喧嘩に発展するところが面白いとの事だ。私は空気を読んで応戦していただけである。

目には目を歯には歯を。これもまた、祖母の教えだ。そこに応用編として私自らアレンジした空気の読み方も加え、場を盛り上げる為に一回毆られたら三回毆り返すという対応をしたものだ。

おかげで、皆と仲良くなれたものの、気盛んな孤児院の子供達との拳のやり取りのせいで顔にはあちこち毆られた痕が出來ていた。たったの三日間なのに、だ。

私の顔をチラチラと心配そうに見ながら教師が院長室の扉をノックする。中からるように促す聲が聞こえてきて、私達は室した。

「チェ、チェルシーちゃん!?」

院長と向かい合っていた二人の男のうち、の方が振り返り私の顔を見ると、目を丸くしてび聲をあげた。

読んで下さってありがとうございます。

更新頑張っていきます~

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