《自稱空気の読める令嬢は義兄の溺を全力でけ流す(電子書籍化進行中)》義兄との出會い

本日、三回目の更新です~

「は? 妹が出來たって?」

目の前には、やけに顔が整った年。眉間に寄った皺もしさのだろうか。剣呑な目を向けられながらぼんやりと考える。

「ブラッドリー、そうだよ彼は私達の新しい家族だよ」

「チェルシーちゃんて言うのよ。あなたの四つ年下なの。可がってあげてね」

「え、なんでそいつ、そんなに毆られた痕があるの?」

不審者を見る目である。たしかに、ぼこぼこに毆られた貴族令嬢なんて彼の周りには今までいなかっただろう。しかも顔面。

「チェルシーちゃんは、お家を乗っ取られて待をけていたのよ!」

泣きながらぶ義母メリッサ。そのような事実は無いが。

「はい。過酷な日々でした……」

空気を読んで合わせておいた。神的な待はけていたに等しいので、間違ってはいないだろう。

「は? その割には、怯えた様子がひとつも無いけど?」

もっともな意見である。私は冷靜な義兄に好を覚えていた。

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「意地悪を言わないで、貴方の治癒魔法で癒してあげて」

「絶対に嫌だね」

「ブラッドリー!」

「俺の治癒方法は赤の他人に施せるものじゃない」

「貴方の妹よ!」

「まだ會って數分だ!」

どうやら義兄のブラッドリー・アニストンは治癒魔法の使い手らしい。治癒魔法師はのどこかに魔法陣を持っていて、それを目的の部位にあてる事によって治療ができる。赤の他人に施せないという事は、魔法陣が微妙なところにあるのだろう。治癒魔法を使える人は結構いる筈なのに治癒魔法師がいつも人手不足なのは魔法陣の場所のせいもあった。

「……おとかに魔法陣があったらさすがに無理ですもんね」

「違う!」

「チェルシーちゃんごめんなさいね。息子は思春期なの」

「わかります。本で読みました。十代の半ば頃に特に年に見られるやつですよね。親の言う事に反発し、年頃のを見るとモヤモヤしてしまう。それが思春期ですよね」

「やめろおおおお!!」

目を剝いて怒っている。そうだ。思春期を指摘されるのも、結構な刺激になってしまうのであった。失敗失敗。それにしても整った顔が崩れるのを見るのは面白い。先程から私はずっと笑顔だ。

「ブラッドリー、口の端の傷だけ早急に治してやってくれ。まだが滲んでいて痛々しいだろう?」

「よりによって口元か!」

「だ、大丈夫ですお父様。痛みなど我慢できます!」

「ぐ…………ッ」

健気なを演出してみた。の前で手を組み、義父をキラキラとした目で見つめる。ちらりと義兄に視線をやると、罪悪に苛まれているような顔をしていた。あ、まずい。私が空気を読みすぎたせいで被害者が生まれてしまった。聲をかけようと口を開いたら、義兄は悔しそうな顔をして私を手招きした。

「なんでしょう、お兄様」

「まだお前の兄になったつもりはない」

「…………申し訳ありません」

くなよ。微だにするな。いたらおぺんぺんの刑だからな」

「ふふッ」

くなっつうの!」

ガシリと顎を摑まれた。そのまま義兄の顔が近付いてくる。あれ、何をするつもり? 目を見張る。義兄の口が開いた。中から、ピンクの舌が現れて……あら、舌に何か…………

口角に、生溫くったものがれた。先程まで痛みを覚えていた箇所が熱くなる。それは一瞬の事で、義兄の顔が離れるともう痛みは消えていた。

「んッ……」

「やめろ変な聲出すな」

「…………な、舐めた!」

「治療したんだよ!」

義兄は真っ赤になり、背を向けた。そのまま部屋を出ていきそうになり、禮を言えてない私は慌てて聲をかけようとした。いや、でも待って、兄ではないと言われた。しかも、名前を呼ぶほど親しくはない。なんと呼ぼう。なんと呼べばいい。脳をフル回転させる。

「待って下さい、嫡男!」

ドアノブに手をかけていた義兄のが跳ねる。ゆっくりと振り返ったその顔は、ザ・怪訝、というじだった。

「……嫡男?」

「あの、治癒魔法を使って下さってありがとうございました! 謝します! 私は妹と認められなくとも気にしませんので、これより先は、存在を無視して下さい! ひっそりと暮らしますので!」

「…………勝手にしろ」

「はい! ありがとうございます!」

鼻を鳴らして部屋を出て行ってしまう。後ろで見ていた義両親はクスクスと笑っていた。

「照れているのよ、ごめんなさいねチェルシーちゃん」

「いえ、大丈夫です」

「ブラッドリーの魔法陣は舌にあってね。家族以外には治癒魔法は使いたくないと日頃から言っているんだ。でも、きみには文句を言いながらも施した。家族と認めているんだよ」

「…………嬉しいです」

そうだろうかと疑問に思う。照れているのはたしかにそうだろう。だが、家族と認められたかどうかは別の話だ。先程は義父から頼まれて治療してくれただけだ。

空気を読もう。疎ましく思われているようだったら、やはり近付かないのが一番だ。私はそう心に決めた。

読んで下さってありがとうございます。また一週間後くらいに更新できたらと思っています。

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