《(本編完結・番外編更新中です) 私のことが嫌いなら、さっさと婚約解消してください。私は、花の種さえもらえれば満足です!》年
いつもながら、ゆるっとした設定ですので、お気軽に楽しんでいただければ、ありがたいです。
よろしくお願いいたします。
道に座り込んでいる年がいた。
「どうしたの? 大丈夫?」
聲をかけると、顔をあげた。
でも、真っ黒い煙がかかって、顔がわからない。
年は、だるそうに首を橫にふった。
「…つらそうだね。でも、大丈夫。お掃除してあげるから」
「掃除?」
「うん、きれいにしたら、元気になるよ」
私は黒い煙をつかむように、すわっている年の顔の前で、両手をひろげてかす。
黒い煙は、どんどん、私の手のひらにすいこまれていく。
うん、もうちょっと!
だけど、最後のほうは、ねばっこくて、なかなかとれない。
私は、自分の両手が消しゴムになったイメージで、今度は、上下にかしはじめた。
そして、やっと、最後の一筋もとれて、すっきり、きれいになった!
「これで、大丈夫だよ」
ふと気がついたら、年が目を大きく見開いて、固まっている。
「あ、びっくりしたよね? でも、へんなものが取れたから大丈夫。もうけるんじゃない?」
私が、あわてて言う。
すると、年は、はっとしたように、立ちあがった。
手足をぐるぐるとまわして見せる。
「…く。毒の後癥がなおってる…」
茫然としたまま、つぶやいた。
「うん、よかった! じゃあ、帰り道はわかる?」
と、私が言うと、
「…帰るわけないだろ。なんだ、これ? 説明しろ!」
と、さっきまでの弱ってるじとは違って、すごいえらそう…。
しかも、年といっても、背が高く、上から私を見下ろすように立っている。
黒い煙で、顔がよくわからなかったので、自分より大分年下かと思ったけど、年上みたいだ。
漆黒の髪に、紫の瞳。
とてもきれいな顔だけれど、鋭い目で私をにらんでくる。
怖いな…。逃げよう!
ということで、私は、勢いよく走り出した。
「あ、待て!」
ふーんだ。待てと言われて待つわけないよね?!
植の間をぬったり、くぐったりして、すばしっこく走る。絶対に、大きな人には走れないルートだ。
そして、やっと、一息ついて、ふりかえったら、いなかった。
よし、まいたわ! あー、怖かった。
にぎりしめた手をひろげると、丸い花の種があった。
赤黒く、ちょっとぎらぎらしていて、不気味なじ。
しかも、大きいね。
「どんな、花が咲くかなあ? 楽しみ! フフフン、フフ…」
と、鼻歌を歌いながら、裏口から屋敷の中にっていった。
読んでくださった方、ありがとうございます! 短めで完結いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
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