《(本編完結・番外編更新中です) 私のことが嫌いなら、さっさと婚約解消してください。私は、花の種さえもらえれば満足です!》パトリックの記憶 2

パトリック視點、子どもの頃のお話が続きます。

お父様とお母様とぼくは馬車に乗って、王都を離れた。

そして、馬車が到著した先で出迎えてくれたのは、お父様の側近のグレッグさんだ。

別の馬車で、先に來ていたよう。

「奧様とパトリック様には、先に宿にお送りして、ゆっくりしていただきたいところですが、公爵様と同じ馬車で、一緒に護衛させていただいたほうが、萬全ですので、しばらくお付き合いしていただくことになります」

と、グレッグさんは、申し訳なさそうに言った。

それから、お父様のお仕事についてまわりながら、んな人に會った。

でも、初めて會う人たちだから、誰も、ルドルフ兄様と比べたりしない。

馬車の窓から見える景も、家がなくて、木や花がいっぱい見えて、王都とは全然ちがう。

なんだか、とっても気持ちがいい!

「最近、ちょっと元気がなかったみたいだけれど、パトリックが楽しそうで良かったわ」

お母様が、そんなぼくを見て、微笑んだ。

「ああ、そうだな。…パトリック。次で、仕事は最後だから、その後は、たっぷり遊ぼう」

お父様の言葉に、ぼくは大きくうなずいた。

最後についた場所は、今までとは違って、大きい屋敷だった。

この町の領主みたい。

お父様が仕事のお話をしている間、ぼくとお母さまは、別の部屋にとおされた。

裝飾が、やけに、ぎらぎらしていて、落ち著かない。

メイドさんが、お茶とお菓子をもってきてくれた。

なんだか、暗い表で、すごく疲れて見える。

すぐ終わるよ、ってお父様は言っていたけれど、なかなか帰ってこない。

ぼくは、待ってる間に、お手洗いに行くことにした。

暗い表のメイドさんが、案してくれた。廊下をまっすぐいったところにお手洗いがあったので、これなら、迷うことはない。

お手洗いの前で待とうとしていたメイドさんに、聲をかける。

「一人で戻りますので、大丈夫です」

「わかりました」

メイドさんは、ぼそりと答えると、あわただしく戻っていった。

大きなお屋敷だけれど、ガランとしていて、人があまりいないみたい。

だから、メイドさんも忙しいのかな?

お手洗いをすませ、廊下にでたら、大きな聲が聞こえた。

自分がいた部屋とは反対方向だけれど、気になる…。

と思ったら、足が勝手にそっちにむかいはじめた。

音をたてないよう、聲のほうへと近づいていく。

扉がしあいていて、男の人の怒ったような聲が、時々もれていた。

あの部屋だ!

怖い…。でも、なぜだか、足がとまらない。

部屋の前まできた。勝手にのぞくなんて、お行儀が悪いのに…。

そう思いながら、そっと、ドアのすき間から部屋の中を見た。

男の人が二人いる。大柄な人と、その前で頭をさげている人。

大柄な人が、どなった。

「…なんで、いきなり公爵が訪ねてくるんだ!」

「近くまでこられたから、ご挨拶に…とおっしゃられてました…」

と、頭を下げ続けている人が答えた。

「今まで一度も來たことないのに、そんなわけないだろっ!」

大柄な人が、近くの機をガンッと蹴った。

がびくっとして、思わず聲をあげそうになった。

あわてて、口をおさえる。

今、この人、公爵って、言ったよね?! お父様のことを言ってるの?!

それに、なんで、そんなに怒ってるの?!

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