《婚約破棄された令嬢は歓喜に震える》は王宮で迷う
部屋を飛び出してひたすらに走り続けて、途中々な角を曲がり何処かの庭に出た。
激しい悸と息を落ち著かせつつ、辺りを見回すと辺り一帯に木があり小さな池が見える。とぼとぼと池の方に進み、縁に座り込み池を覗く。
そこには走ったため赤く染った頬で、泣いている自分の姿が映る。
何しに來たんだろと池に映った姿を見つつ思う…
「私何か悪い事したのかな…」
落ち著いてきた息を吐き出し、最近の出來事が怒濤のように思い出される。穏やかだった日常から一変して、今の狀況についていけてない自分がいた。
いきなりの婚約に妃教育、そしてバルガス殿下との約束。
殿下に話すなと言われた事で、この約束の事は家族にも相談出來てなかった。家族を処刑されるなんて、相談だとしても言いたくも無かった。
どうして良いのか分からずにまた涙が溢れてきて、スカートの裾を握りしめながら泣き出す。
苦しい… 誰か助けてと言えないまま泣いていると、近くの茂みが音を立て始めた。
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ビックリしてそちらを見ていると、茂みから男の子が出てきた。
「こんな所でどうしたの?」
こちらを見つつ男の子が問いかけ、髪や服に付いた葉っぱなどを払いつつ寄ってきた。
男の子は淡い金髪に青い瞳で、こちらを心配そうに見ている。
問いかけに答えようと思い口を開くと、嗚咽で上手く喋れずにまた涙が溢れそうになる。
近くまで來た男の子が橫にしゃがみこんで、ステファニーの背中をってくれる。
「無理しないで、ゆっくりで良いから落ち著こうね。」
ニコッと微笑みながら背中をって貰った事で、ステファニーの呼吸が落ち著いてきた。僅かな時間とはいえ背中をってもらって、初対面でこんなに優しくしてもらった男の子にステファニーは心を開いていた。
「わっ 私、お勉強でここに來たの。」
「そうなんだ、どうして泣いてたの?」
「お勉強がっ 上手くできなくて… どうしようって思ったら、泣いちゃって。
せっかく教えて貰ってるのに、できないの。それでね、泣いてここまで走ってきたら、何処に居るのかも分からないし…」
「そっかー、迷子なんだね。君がバルガスの…、お部屋まで案してあげるからもう泣かないで。」
ヒクヒクとえずきながら答えた私の頭を、背中の次に頭をでてくれる。ゆっくりでて貰った事で、また落ち著いていくのが分かった。男の子と目が合った瞬間ニコッと笑いかけられて、私も笑い返すと心のモヤモヤが晴れた気がした。
立ち上がった男の子が両手を私の前に出してくれたので、両手を握りしめると引っ張り起こしてくれた。
「僕はリヒトだよ、可いお姫様。」
微笑みつつ名前を教えてもらい、私は繰り返すようにリヒトと口ずさんだ。
「私は」
「ステフでしょ?聞いてた以上に可いお姫様だ。」
何故稱を知っているのか分からなくて、考え込むとプッと堪えきれない笑いがリヒトから溢れた。
見ると堪えきれなかった笑いを我慢して斜め下を向いている。笑われたと私がプクっと頬を膨らませると、リヒトは言葉ではごめんごめんと言いつつ我慢できなくなったのか笑っていた。
私も楽しい気持ちになって、一緒に笑ってしまっていた。
「こんなに笑ったの久しぶりだよ、ステフのおかげだ。」
満面の笑みを浮かべ、笑いすぎたのかリヒトの目に涙が見えた。
「リヒトが笑わせてくれたんだよ!リヒトありがとう。」
お互いに見つめ合うとまた笑いが溢れて、2人揃って笑い出してしまった。
お互いに笑いが落ち著いてからリヒトが左手を出してくれたので、右手で握り返し手を繋いで歩き出した。
歩き出して不安に思っていることを、ポロッと言葉に出してしまった。
「スミス夫人怒ってるかな?」
「教師はスミス夫人だったんだね。スミス夫人はパッと見怖そうに見えるけど、厳しいけど優しい人だよ。」
「そうなの?」
反で橫に並んで歩くリヒトの方を向くと、ニッコリ笑って頷いていた。
「言葉は厳しいかもしれないけど、出來たら出來たことを一緒に褒めてくれるから。多分今頃ステフが逃げちゃったから、落ち込んでるかもね。」
もうっと怒って反対側にぷいっと顔を向けると、背後から堪えきれなかった笑い聲と手から伝わる振でリヒトが笑っているのがわかる。
リヒトの方を振り向き目が合った瞬間、また2人で笑ってしまった。リヒトは笑い上戸だと思う!
一緒に移中は取り留めないような、ささやかな事で笑いながら歩いていた。
「さあ著いたよ、あそこの部屋で合ってると思うよ。」
向こうに見える扉を指さして、リヒトが囁いた。
目的地と近くに著いたので歩みが止まる、繋いだ手を離さないといけないのに離したくないと思ってしまった。
リヒトを見上げるとニコリと微笑みながら、繋いだ手を上に持ち上げられた。
「ステフのやる事は大変だと思うけど、努力してにつけた事は決して裏切らない。妃教育頑張って、ステフの幸せ祈っているから…」
繋いだ手に額をつけてなにかに誓うようにするリヒトを見っていると、背後から「ステフ」と呼ぶ母様の聲が聞こえてきた。
あれ程繋いでいたいと思っていた手が、振り返った瞬間離れてしまった。
あっと思い後ろを振り向くが、そこには誰も居ない廊下があるだけだった。夢でも見ていたのかと思うが、し殘っている手の溫かさを逃がさないように手を握った。
「ステフ!」
こちらに向かって小走りでくる母様の方を向き直し、母様と呼びつつ走っていった。
その後母様と2人でスミス夫人に謝ると、目をし赤くした夫人に微笑まれた。
リヒトから聞いた努力した事はにつくを勵みに、これから々なことを頑張ると心に誓った。
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