《した魔法~生まれ変わった魔法が、15年ぶりに仲間と再會する~》3 過去からの思い
窓際に並ぶ機を挾んで、ベッドが左右対稱に置かれている。口側に大きなクローゼットと洗面臺、中央には小さな丸いテーブル。どれも初めから備え付けられているものだ。
広い部屋ではないが、フローリングのに合わせた木目調の家が見た目にも心地良い。
「こっち使って良かったかな?」
「うん、オッケーだよ」
右手の指で丸を作って、もう片方のベッドに座る彼は、「私、森山恵(もりやまめぐみ)です」と短く自己紹介して、ぺこりと頭を下げた。
「有村芙です。よろしくお願いします」
挨拶がいかなと思うが、これ以上の言葉がパッと浮かんでこなかった。クラスでの自己紹介も明日だと聞いている。
名古屋からわざわざ來た理由を求められる気がして答えを必死に探していると、ふと恵と目が合った。
何か言いたそうにうずうずしているのが伝わってきて、尋ねるように首を傾げると、恵はパッと笑顔を広げて両手をの前に組んだ。
「芙ちゃんは、か、彼氏はいるの?」
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予想外の質問に、芙は「えっ」と聲をらした。
「か、彼氏はいないよ」
ふいに浮かんだ弘人の顔に答えを躊躇(ためら)うが、彼は町子の人だ。しかも十六年前の話で、もう終わったなのだと芙は小さい頃からずっと自分に言い聞かせてきた。
けれど、
「じゃ、好きな人は?」
「それは……」
「いるんだ!」
恵が目を輝かせている。勢いに押されるままに、「……いるけど」と小聲で答えたが、急に恥ずかしさが込み上げて「違うの!」と慌てて否定した。
挨拶してまだ五分と経っていない相手に、何を話しているのだろうか。
「憧れる人、っていうか。かなり年上だし」
涼しいくらいの室溫なのに、一気にが熱くなる。
「歳なんて関係ないよ」
恵は立ち上がると芙の隣に座り、満面の笑みでその表を覗き込んだ。
「芙ちゃんって、名古屋から來たお嬢様なんだよね。彼も名古屋の人なの? もしかして、家柄で際できないとか?」
もう、恵の想像はロミオとジュリエットまで達してしまった。
「そんなんじゃないよ。お嬢様っていうのも……そうなのかもしれないけど、普通だよ?」
極々一般家庭で育った町子の記憶があるせいで、有村の家柄が未だに夢語のようにじてしまう。不良上がりの和弘と都子が型にはめずに自由に育ててくれたおで窮屈な思いをじたことはないが、やはり東京の本家に行くとやたら張してしまうのは事実だ。
ただ、『お嬢様』という肩書きを鬱陶(うっとう)しくじながらも、そんな家に生まれたからこそ、こうしてここに戻ってくる事ができたのだと謝する。
恵は謙遜(けんそん)する芙に不満そうに眉を寄せ、「でも」と表を緩めた。
「どっちでもいいよ。友達なんだし。ね?」
ルームメイトがどんな人なのか心配したこともあったが、この笑顔が全て杞憂(きゆう)であったと教えてくれる。そして芙はしだけ弘人のことを話したくなった。
「うん――相手の人はね、私のことなんて知らないの。一方通行で話したこともないし」
彼の存在は誰にも話すことはなく、ずっと心の中で想ってきただけなのに、いざ口にすると途端に現実味が増してきて心が逸った。
彼を想うと、自然に芙も笑顔になる。
「でも、好き」
「そっかぁ。じゃあ、私が応援する」
両手でガッツポーズを決め、気合をれる恵。
「ありがとう。で、恵ちゃんはいるの? 好きな人」
きっと彼もしてるんだろうと思って尋ねてみると、一瞬恵の表にが差した。けれどすぐに元に戻り、「ううん」と橫に首を振る。
「今はいないの。だから、これから見つけるんだ」
聞いてはいけないことだったのだろうか。過去を思わせる臺詞は、彼の記憶をえぐり出してしまったかもしれない。しかしそんな芙を察して、恵は「大丈夫」とを張る。
☆
弘人に初めて會ったのは、町子が高校にってすぐのことだ。
大魔から力を得た後の顔合わせの時。高校は別々だったが、同じ歳だったせいかすぐに打ち解け、一ヶ月も経たないうちに彼から「好きだ」と告白された。
最初は友達の延長線程度の想いだったが、一緒に居る時間が楽しくて、夏になった頃には本當に好きでたまらなくなっていた。
いつもみんなの中心に居て前向きな弘人は、町子の死を知って悲しんでくれただろうか。
何も言わずに飛び出してしまったあの朝を申し訳ないと思いつつ、芙へと生まれ変わった自分があの頃の続きを送れたらと気持ちを膨らませていた。
やっとの思いでここまで來て、まず始めに彼に會いに行こうと思う。
現実をけ止める覚悟はまだきっとできていないけれど、それでも彼への気持ちが大きくなりすぎて、遠くでただじっとしているわけにはいかなくなってしまった。
☆
「ねぇ、芙ちゃん」
夜ベッドに付くと、恵が天井にぼんやりと視線を漂わせながら芙を呼んだ。消燈時間が過ぎていて部屋は暗かったが、カーテン越しの月明かりが、青暗く中を照らしている。
「どうしたの?」と芙が彼の方へ寢返ると、恵は顔だけをこちらに傾ける。
「今日はいっぱい聞いちゃってごめんね」
「いいよ。気にしないで」
恵は言い難そうに口を開く。晝間の明るい元気な彼ではない。
「私ね、中學時代にめちゃくちゃ好きな人が居て、この間卒業式の後に告白したんだ」
子の心をくすぐる話に芙は答えを求めようとするが、すぐに言葉を飲み込んだ。それが喜ばしい話でないことを知っている。
「一緒に居ることも多かったし、彼も同じ気持ちだと思ってたんだけど。私だけ舞い上がっちゃってたみたい。そういう目では見れないって、ハッキリ斷られちゃった」
「そう……なんだ」
「だから、ここでカッコいい彼氏を見つけて、高校生活をエンジョイするから!」
布団の中でくるりとを芙に向け、恵は笑顔で意気込んだ。
彼の前向きさを羨ましくじる。是非見習いたいものだ。
「私も頑張りたい」
「一緒に頑張ろうよ」
布団から手を出し、芙が「うん」と親指を立てると、恵も同じようにサインを返した。
「ねぇ芙ちゃん、私のことはメグでいいよ」
「了解。よろしくね、メグ」
弘人に會えますように――。
眠りに付く五秒前。芙は願いを込めて手を組んだが彼は夢に出てきてはくれなかった。
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