した魔法~生まれ変わった魔法が、15年ぶりに仲間と再會する~》17 お化けの噂は

そんな話で忘れていた歓迎會への不安が、晝休みの會話で一気に引き戻される。

「この校舎、出るみたいだよぉ」

クラスメイトの真子(まこ)が聲を使ってお化けを真似る。

「そうそう。卓球部の先輩が先週見たんだって。他にも目撃者がいるっていうしね」

相槌(あいづち)を打ちながらそうはしゃぐのは、亜子(あこ)。二人とも近隣の中學校出で自転車通學をしている、お弁當グループのメンバーだ。

「ええええっ!」

晝休みの賑やかな空気に、芙の悲鳴が掻き消えていく。突然知らされた報に、箸で挾んでいた唐揚げがご飯の上に転がった。

何と、校舎に本の幽霊が出るらしい。

「何か出た方が楽しいよ、芙ちゃん」

空になった弁當箱に蓋をして、メグは相変わらず余裕の表でごちそうさまと手を合わせる。寮生の晝食は晝前に校舎へ屆けられる、寮の食堂で作られた特製弁當だ。

「本が出るなんて、聞いてないよ。私が平気なのは作りのお化け屋敷のこと!」

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激しく主張する芙に、亜子が「それでね」と眉をしかめる。

「昔ここの生徒が殺された事件があるでしょ? その霊だっていう噂で持ちきりなのよ」

「嫌ぁああ。そんなの知らないよぉ」

そんなリアルな報聞きたくなかった。

どうせ肝試しをさせられるなら、知らないほうが良かった。芙は両手で耳を塞いだが、三人の會話は筒抜けだ。

「あ。その話聞いたことある!」

そんな芙と対照的に、メグは興気味にを乗り出す。

「雪のダムで倒れてたやつでしょ? 十年以上未解決で、怨念が殘ってるって聞いたよ」

「――は?」

そうそう、とはしゃぐ三人に、芙は思わず疑問符を投げつけた。恐怖に怯えていた気持ちが、一瞬で冷めていく。

「ダム……って。じゅ、十六年前の?」

「ちゃんとした年數は覚えてないけど、そのくらいだったよね。有名な話だよ」

真子の言葉に、芙は「えええええっ!」と我を失ったように大聲でんでしまった。

今度は晝休みの空気を引き裂く高音だ。教室中の視線を浴びて、芙は慌てて視線を落とし、元を摑んで衝を押さえつけた。

「ちょっと芙ちゃん、大丈夫? そんなに恐がらなくてもいいと思うよ」

「私もいるから、平気だよ――ね?」

宥める三人に囲まれて、混したまま頷いた。

まさか亡霊騒ぎの発端が町子だとは予想もしていなかった。町子の怨念が殘ってる?

「ない! ないよ! そんなこと絶対ない! ちゃんと仏してるって!」

本當のことを全部言ってしまいたい。町子の霊が出るなんて、百パーセントない! と。

突然否定した芙に、亜子は「だよねぇ」と面白半分の表で同意する。

「うんうん。平気だよ、芙ちゃん。私も全然信じてないし」

前向きでポジティブなメグの言葉は心強い。

けれど、本當に『出る』のなら、何が生徒を騒がせているのだろうか。

(もしかして、魔翔?)

最近それが目撃されるようになったのなら、自分が引き寄せているのかもしれない。魔翔が今まで芙の前に出なかったのは、もしかしたら別の土地に居たからかも――と、々な考察が頭を巡るが、結局別の亡霊だったらどうしようと一人で怯えていると、メグが飲み終えたフルーツ牛のパックを潰しながら、とんでもないセリフを口にした。

「でもそれって、佐倉先生のお姉さんなんだよね」

耳を疑って、芙は「え?」と聞き返す。今度は最初から冷靜だ。それでいて、頭が言葉をれつつも、心が理解するまでに時間がかかった。

「佐倉……先生?」

「そうだよ。それは知らなかった? イケメンの理の先生」

のクラスを擔當する理教師といえば、おなかがポンと出た、町子のクラス擔任だった男だ。知らない、と首を橫に振る芙にメグが夢見がちに手を組んで語り出す。

「隣のクラスだったら、佐倉先生だったのに。先生、若い頃にお姉さんを亡くして辛いのに、そんな亡霊とか騒いだら可そうだよね」

本當に、本人なのだろうか。泣き蟲の小さな彼の記憶が邪魔して、想像が追いつかない。

は、ガタリと椅子を引いて立ち上がった。立ったままの姿勢で最後の唐揚げを頬張って、急いでコーヒー牛を流し込む。

口にが殘ったまま駆け出す姿は、もはやお嬢様とは程遠い。

「芙ちゃん、どうしたの? ねぇ」

メグの問い掛けに答える余裕もないまま、芙は教室を飛び出した。

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