した魔法~生まれ変わった魔法が、15年ぶりに仲間と再會する~》19 くじ引きの行方

教室に戻ると、まだしだけ次の授業まで時間があった。

自責の念に駆られて落ち込む芙に、メグが勘違いの好奇心を向けてくる。

「佐倉先生のイケメンっぷりを確認してきたんでしょ? 凄い行力。尊敬しちゃうよぉ」

はハッとして、「ち、違うよ!」と機に突っ伏した顔を起こした。

會いに行った事実がある以上、はっきりと否定する事ができない。

「で、どうだった?」と、メグは目を輝かせるが、期待に葉う答えが見つからず、

「か、かっこ良かったかな」

とりあえず、これは想だ。噓はついていない。

「でしょう?」と喜ぶ笑顔にノッてしまったら、それが心だと彼の中で変換されてしまいそうな気がして、芙は「でもね」と素早く言葉を挾んだ。

「好みのタイプではなかったよ」

たとえ縁でなくなったからと言っても、夏樹への心は起きそうになかった。

その後、夏樹とは學校で顔を合わす事が何度かあったが、お互い言葉をわすこともなく、特に進展はなかった。

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祖母への思いと日増しに強くなる肝試しへの恐怖に比例して、町子の噂は學校中に広まっていった。面白がる者も怖がる者もいたが、皆がその「イベント」を心待ちにしている。

『肝試し』と稱して、一年生十八名にを張って真相の裏付けをせよということだ。

「僕たちはゴールで待ってるから、楽しんできて下さい」

理想のメガネ男子とメグが賞賛する三年の寮長が、朝食の時にそんなことを言っていた。

主催の先輩たちは、亡霊などどうせいないと思いつつも、出たら面白いと思っている。

本來なら途中で脅かすくらいの仕掛けがあったほうが盛り上るのかもしれないが、今回は「出る」可能なくない。そこをわざわざリスクを負ってまで、途中の闇で待機する意味はない――だから、「ただ歩くだけ」なのだ。

開催を否定する教師も居たが、閉門前だと先輩たちが押し切って、結局予定通りの決行となってしまった。

寮で早めの夕食を済ませ、制服姿のままメグと校舎へ戻る。

集合場所になっている一階図書室脇のホールには、既に七割方の寮生が集まっていた。

一階の廊下には明かりが點いているが、すぐ側の階段の奧は既に真っ暗でな空気を漂わせている。

今日が早く終わりますようにと朝から祈り、いよいよそれは佳境を迎えようとしていた。

「二人とも、これ引いて寮長のトコ行ってね」

上が丸くくり貫かれた立方の箱を差し出してきたのは生徒會の書記を勤める二年だ。箱の正面に『子』と大きく書かれている。

「くじ引きですか?」

「そうだよ。男が同數だから、同じ數字同士のペアで行ってもらうよ」

そんなの聞いていない。一人でないのは心強いが、まだあまり面識のない男子と歩くのは張するし、ましてや魔翔や亡霊と対面してしまったらどう対処していいのかさっぱり見當がつかない。

だったらせめて、

「メグと一緒がいいよぉ」

となら融通が利くし、暗闇も得意だと言っていた。

けれど、そんなみも本人にきっぱりと否定される。

「芙ちゃん! こんな時に同士で行してどうするのよ!」

やる気満々である。もはや『肝試し』より『男子と二人きりイベント』に闘志を燃やしている。メグは力強くに手を突っ込んで「お願いします」と祈りを込め、小さく折りたたんである紙を引き抜いた。

中には數字の『6』と書かれていて、続いて引いた芙のくじには『3』と書かれていた。このイベントをれなければ、と腹を括って結果を確認する。

寮長の前に置かれたホワイトボードには、続々ペアが書き込まれていき、『6』の欄にある男子の名前を確認すると、メグはついさっきまでの勢いを床にばら撒くかのように愕然と肩を落とした。

にとってそれはハズレくじだったようだ。

『3』はまだ埋まっておらず、『男子』くじの箱を持つ先輩を探すと、今まさにクラスメイトの修司と祐が手をれたところだった。攻撃をかけるようなメグの鋭い視線がその手元を狙い――「あああ」と小さい悲鳴を上げた。

「メグ?」と、遅れて芙はその聲の意味を知る。

「芙ちゃんって、祐くん狙いじゃないよね?」

こっそりと尋ねられ、「まぁ、そうだね」と返す。野村祐の手にする紙に『3』が書かれているのだ。

対になる芙の『3』は、メグにとって一等ハワイ旅行的な當たりくじに見えるのだろう。

換する?」

先輩たちの目を盜んで、芙はそう提案する。メグの祐への気持ちは何となく知っているし、彼にとっては當たりくじでも芙にとっては他の數字と大差ないと思ったからだ。

メグは、ぱっと目を輝かせるが「でも、駄目っ」と戒めるように呟き、「ちょっと待ってて」と言い殘すと、向こうできゃあきゃあ騒ぐ子の間へ飛び込んで行った。

何やら熱弁を振るい、皆を納得させて戻ってくる。選結果を見た直後とは一変して、満面の笑みだ。

「ありがとう、芙ちゃん」

の手からくじを抜いて、持っていた方の紙とれ替える。良く見ると、それはハズレの『6』ではなく、『8』と書かれたものだった。

「これって――?」

書き足されていくホワイトボードの男子『8』に、名前が記される。

「頑張ってね、芙ちゃん」

何を頑張れば良いのかさっぱり分からない。

くじ引きとはいえ、結局出來レースみたいなものなのだろうか。

目當ての男子を狙って、子たちの中で巧妙にられた結果、芙に回ってきたのは、二等電子レンジ位の価値がある、熊谷修司とのペアだった。

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