した魔法~生まれ変わった魔法が、15年ぶりに仲間と再會する~》25 燈臺下暗し

部屋に戻りシャワーを浴びる。

ベッドにっても、ずっと杖のことが気になっていた。

あの時どうして手放してしまったのだろうか。大切なものだと自覚はあったはずなのに。

類のようにどこかに隠すことができれば、今戦うことができたのに。

けれど隠す余裕はなかったし、生まれ変われる事も知らなかった。そんな可能を大魔に教えておいてほしかったのに、彼はどうして教えてくれなかったのだろう。

「ごめん。眠れない?」

機の明かりをベッドに向け、パジャマ姿で読書を続けるメグが、パタリと本を閉じた。相當彼にとって魅力的な容の本なのか、夕方から読み始めた二段構小説は、すでに読んだページの厚みが一センチほどになっていた。

「ちょっと考え事してただけだから」

ライトを消そうとするメグに大丈夫だよと手を振り、芙はよいしょとベッドを降りた。

「修司くんのコト? 私に話せる事なら、いつでも聞くからね」

「か、彼のコトじゃないよ。でもありがと。ちょっと乾いちゃったから下行ってくるね」

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「わかった。ちゃんと上著著ていくんだよ? コッソリね」

一階はパジャマ姿止。芙はパーカーを羽織り、百円玉を握りしめて部屋を出た。

誰もいない食堂は薄暗く、暗闇を逃れるように急いで自販売機のフルーツ牛を買うと、廊下に並んだソファに腰を下ろした。

ごくごくと一気に半分飲んで大きく息を吐き出すと、突然現れた気配と同時に、し怒り気味の聲が飛んでくる。

「こら。消燈時間過ぎてるわよ」

「すっ、すみません」

びくりと肩をすくめ、聲の主を見上げる。ハーフパンツにTシャツ姿のミナだ。大きなのせいでシャツが小さく見えてしまい、子の芙でさえドキリとしてしまう。

ミナはほのかなシャンプーの匂いを振りまいて、芙の隣に腰を下ろした。

「眠れないの?」

答えにためらって、視線を落とすように頷く。ミナは「そうか」と短く呟いて、

「じゃあ、ちょっとだけよ。元気ないけど悩み事?」

「悩み、っていうか。大切なものを失くしてしまって。どこを探して良いのかも全然見當がつかないんです」

「それじゃ、落ち著かないわね。でも、本當に大切なものなら見つかるよ。持ち主の想いが籠っているものなら、きっと返ってくる」

そうあってほしいと祈って芙は強く頷き、殘りのフルーツ牛をズズッと飲み干した。

「それにね、探しているものって、案外近くにあったり、近な人が拾っていてくれたりするものよ。燈臺下暗しっても言うでしょ?」

無邪気ににっこり微笑むミナ。彼から視線を外し、芙は助言に沿って頭を整理する。

近い場所……やはり、最初に行くべき場所はダムなのだろうか。近な人という見方で言えば、町子に一番近いのは夏樹だ。彼に聞いたら答えが出るかもしれないが、杖の存在を説明するが見つからない。

ただでさえ、あまり快く思われていないのに。

しかし、そんな事で悩んでいたら、修司の隣に立って戦うことはできないだろう。

気が急いて震えだす拳に、ミナがほんのりと溫かい自分の掌を重ねてきた。

「焦らなくても大丈夫よ」

「ミナさん……わかりました!」

くるりとミナに視線を返し、ありがとうと禮を言う。

「私、頑張って探してみます」

ここに來て繰り返す、決死の決意表明。

その思いだけで、答えが見つかるような、そんな気がした。

翌日。

夜の七時を過ぎてもまだ明るさの殘る夜の空気は、し冷たさをじさせる。

早めに夕食を済ませ、芙は制服姿のまま一人寮を出た。7時までだという空手部の練習が終わるのを待って、駐車場に待機する。

夏樹の車がどれかは分からなかったので、あまり人目につかない場所で、まだ明るい育館と職員玄関の両方に目を凝らした。

部活帰りの生徒たちがぞろぞろと育館から出てくるが、薄暗い闇のおかげで気付かれることはなかった。そして、五分も経たないうちに彼は現れる。

「先生!」

飛び出すように地面の砂利を弾ませてスーツ姿の夏樹に走り寄った。驚く様子はなかったが、夏樹はあからさまに厄介そうな顔をして「なんだ」と零す。

辺りに誰もいなかったのが好都合だ。回りくどい言い方をして怪しまれるくらいなら、はっきりと言おうと、一晩考えて出した芙の答え。

「単刀直に聞きます。お姉さんが亡くなった時のことを教えて下さい!」

まず、それが聞きたかった。怒鳴られる覚悟をして、力強く彼を見つめた。けれど夏樹はかすかに眉を寄せると、

「どうしてそれを聞きたいんだ。ただの興味本位なら黙っちゃいないが……」

「違う。知りたいんです、私の……理由は聞かないで」

勢いのまま名乗ろうとして、理がそれを留める。

「……変な奴だな。けど俺は十歳だったんだぞ。覚えてないんだ。ばあさんだって恐らく」

「だったら、直接おばあちゃんに聞きに行ってもいいですか?」

「それはダメだ。いいか、教師と生徒なんだぞ」

きっぱりと斷って踵を返そうとする彼の腕を芙は両手で摑んで、「お願い」と懇願する。

「思い出したくないのは分かるけど、町子を助けると思って」

「この間もそうだけど、何で姉さんの名前を知ってるんだ? 新聞でも見たのか? お前こそあの日の真相を知ってるんじゃないのか?」

「私は何も知らないの。だから、知らなきゃいけなくて」

夏樹はぐっとを噛んで、芙を睨んだ。険しい表が緩むことはなかったが、半ば負けした様子で「じゃあ」と呟き、

「聞いてきてやるから、明日職員室に來い」

「本當? ありがとう!」

強く沸いた衝にぎゅっと目を閉じ、腕を摑む両手に力を込めた。

「やめろ、こんなところで。勘違いされるだろう?」

はハッとして手を放し辺りを見たが、特に人影はなくホッと安堵する。そして夏樹に対して深く頭を下げた。

「ありがとう。あと、もう一つだけ聞かせて」

付け足すように本題を上げる。こっちの方が聞き辛い話だ。

「お姉さんの品に、木の棒があったか教えてしいの」

「棒? そんなのあったかな。まぁ、聞いといてやるよ」

彼にはピンとこない話だったらしい。確かに町子は魔法使いであることを家族に隠していた。

ただの木にしか見えないものを保管しているみは薄いのかもしれない。

けれど僅かなみでもいい。明日に期待して、早々に帰っていく夏樹を見送った。

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