した魔法~生まれ変わった魔法が、15年ぶりに仲間と再會する~》38 夢

名古屋にいる間ずっと晴れていた空が、東北にった途端、出発時と同じどんよりとした雨模様に変わってしまった。

駅に著いて新幹線を降りると、薄いカーディガンの溫もりが々頼りなくじてしまう。

寮まで送ってくれるという咲に甘えて一緒に改札を潛ると、送迎でごった返す人々の中に二人を待ち構えた修司が立っていた。見送りに來なかった彼には、帰宅時間も伝えてはいなかったのに。

「待っててくれたの?」

問いかけには答えず、「お帰り」と言った修司の顔には疲労のが浮かんでいる。

「うん、ただいま」

いつものニヒルで不想な彼とはし違って見えて、芙が様子を伺おうと首を傾げると、咲が「何かあったのかい?」と切り出す。

すぐに返事は返ってこなかった。戸うように口を開くが、すぐにを結んでしまう。

「修司? 何かあったの?」

が尋ねてようやく修司はかすれたような聲をらした。

「大魔が、いたんだ」

日曜の慌ただしい構に、沈黙が起きた――なくとも芙と咲にはそうじられた。

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「――え?」

思わずれた芙と咲の聲がぴったりと重なって、徐々に、駅の音が耳に戻ってくる。

「どういうことだい?」

「あ――悪ぃ。とりあえず移しないか?」

辺りの人の多さに気まずい表を浮かべ、修司は「貸して」と二人分のボストンバッグをけ取ると、先を急いで出口へと歩き出した。

「ちょっと、修司!」

咲が駆け寄って、彼の腕を鷲摑みにする。

「大魔が居た、って、會ったってこと?」

振り返る修司の表は苛立ちさえ見える。芙も速足で追いついて、返事を待った。

大魔の存在など、もう現実的でない気がしていた。大魔が出てこない限り、弘人と戦うこともないだろうとポジティブに考えていたのに、修司の言葉が「そんなに現実は甘くない」と訴えてくる。

「夢を見たんだ。それで、思い出した。全部だ。咲、お前は見てないのか?」

咲と芙が顔を見合わせる。

「夢――? そうだねぇ。昨日何か夢は見た気がするけど、容まで覚えてないよ」

首を捻る咲。芙も思い出そうとはしてみるものの、夢を見たかどうかさえ曖昧だ。

修司は「そうか」と呟いて、

「俺の夢がただの妄想だって可能を考えて、お前が思い出せば合致するんだろうけどな」

「私だって、ここんとこ昔のことを思い出そうとはしてるんだよ。でも、誰も思い出せなかったってことは、記憶作をされているのかもしれないんじゃないかい?」

「そして、今になって戻してきたってことだよな」

「何考えてるんだろうね。でも、どんなだったかな。夢を見たことすら曖昧になるね」

咲は額に手を當てて、とぼとぼと歩き出す。

にも全く思い出すことはできなかった。過去の記憶まで遡ってみるが、杖をもらった日のことは思い出せるのに、肝心の大魔の顔は思い出せない。

――「魔法使いにしてあげようか」

懐かしい言葉だ。そういえば、ずっと大魔を老婆だと思い込んできたが、そんな年老いた聲ではなかった気がする。

「うーん」と唸りながら運転する咲の後ろで、芙はそんなことを思っていた。

雨の勢いが弱くなってきて、蒸し暑くなった車に咲が「暑い」と一言吐いて、エアコンをれてくれた。芙になって初めて咲に送ってもらった日と同じ音楽がかけられている。町子の好きだった曲で、薫がセレクトしてくれたものだ。

修司はずっと黙っていた。

ニヒルな彼を象徴するツンとした表で、芙の隣で腕を組み、その視線はフロントガラスの向こうを睨んでいる。

いつもよりし聲を掛け辛いと思いながらも、芙は様子を伺いながら、

「修司は大魔に會ったことあるの?」

と、聞いてみる。寮まであとしの所だ。

「そうだね、どうなんだい?」と信號で咲が素早く振り返った。

「――あぁ……」と曖昧な返事が返ってきて、咲は不満そうに青信號で車をかした。

寮の建が見えてきて、雨の降り注ぐ軒下に仁王立ちで構える一人の姿があった。

「あ、ミナさんだ」

定番の白いTシャツに、短いパンツ姿。相変わらずの放漫ボディだ。

「あれ」と聲をらした咲に、修司が視線を向けた。駐車場のし手前。咲が路上の端でブレーキを踏んだ。視線が軒下の彼に釘打たれている。

「ねぇ修司。私はここで初めて會った時から、思い出していたのかもしれないよ」

咲の聲が小さく震える。

「やっぱり、そうだろ」

二人の會話が誰を示すものなのかすぐにわかって、芙は驚愕した。

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