《した魔法~生まれ変わった魔法が、15年ぶりに仲間と再會する~》41 夢から覚めて
かの有名なノストラダムスの大予言は、大魔の死が引き起こす災いなのではないかと、本気で語り合ったことがある。
けれど、世紀末を當の昔に過ぎてしまった今、結局何もなかったんだなぁと実する。
普段夢を見ても容など殆ど覚えていないのに、忘れていた過去の記憶が走馬燈のように流れていった。
――「力を、頼むわよ」
そう、これは町子の記憶だ。大魔に會って、魔法使いになり、魔翔と戦っていた。
今まですっと抜けていた大魔の顔が、鮮明に蘇る。
暗いローブの下には確かにミナの顔があった。今と殆ど変わりない容姿で十六年前に生きる彼を、町子は知っていた。
――「私、もっと強くなるよ」
いつかの戦闘の後、町子は笑顔でそんなことを言っていた。あの日のことはよく覚えている。
初めて遭遇した鳥型の魔翔に手こずりつつも勝利した時だ。ミナの忠告も聞かずにもっともっと強くなりたいと、本気で思っていた。
けれど、夢に出てきたそのシーンで町子が笑いかけた相手は、そこに居ないはずの都子だった。
Advertisement
本來なら、弘人の筈なのに。
――「気を付けてね」
またこのシーンなのか、と。名古屋から帰ってきて幾度と思い出す母親の言葉に、芙はハッと目を覚ました。
☆
「あっ、おはよう」
オレンジに燈された部屋の風景が視界に飛び込んできて、同時にメグの聲が聞こえた。
ベッドの中。橫に置いた自分の腕は、見覚えのあるカーディガンを著ている。
服のまま眠りについた記憶はないが。
「おはよう、じゃなくて、こんばんはだね。気分はどう?」
言われるままに確認するが、特に不調はじられない。ただ頭がぼんやりして狀況が飲み込めないのと、起き上がると米神の辺りがしだけ痛んだ。
「大したことないけど、私、寢てたの?」
カーテンが閉められているが、今が朝でないことは分かる。時計を見ると、夜の八時を回ったところだ。
メグは私服姿で自分のベッドに座り、
「覚えてないの? 気分が悪くなって倒れたって聞いたよ。びっくりしたんだから」
全く覚えのない話だ。特に吐き気がするというわけでもない。
けれど、部屋の隅に置かれたボストンバッグを見つけて、芙は「あぁ」と我に返った。
「そうか――私、名古屋に行ってたんだよね」
ようやく頭がスッキリする。咲と修司と一緒にミナの部屋で話を聞いた。
――「思い出させてあげる」
そう言って彼が施した魔法は、彼が大魔であるということをはっきりと証明してくれた。
それより、寮母室に居た筈なのに、三階の自分の部屋にいることを疑問に思って、思わず修司の顔を思い浮かべてしまったが、芙を移させたのは意外な人だった。
「夏樹先生が、お姫様抱っこで運んでくれたんだよ!」
にやりと意味深な笑みを浮かべて、メグが芙のベッドの端に移する。
「ええっ、夏樹?」
想定外の名前に聲を大きくしてしまった。
「そんな、呼び捨てにしちゃって。みんなの噂、本気にしちゃうよ」
「違うってば。先生はそんなんじゃないの」
修司との二疑が更に広まりそうな話だ。
メグは「わかってるよ」と悪戯っぽく笑う。
「修司くんも居たんだよ。でも男子が子の部屋に行くのは駄目、って。ちょうど寮に來てた先生が運んでくれたの。ねぇ、夏樹先生ってミナさんの事好きなんじゃないかな」
芙は更に目を丸くする。まさかそんなことがあるのだろうかと思いつつ、見た目の年齢だけなら何ら可笑しい話ではないなと納得してしまう。
けれど――大魔のミナはそんな年齢じゃないはずだし、一般人の夏樹に興味があるとも思えない。
「確かに、人だしも大きいけど――本當?」
「見てて分かるもん。大、あんなに量良しのミナさんに人がいないってことの方がおかしいし、放っておかれる訳ないよ。あの二人ならお似合いだし、私応援しちゃうよ!」
「応援……か」
ミナに人がいない理由、それは彼が大魔だからだろう。
夏樹には幸せになってほしいと思うが、想いが葉う可能は低そうだ。複雑な気持ちに芙が眉をしかめると、
「え? やっぱり芙ちゃんも先生が好きだった?」
「ないない! それだけはない!」
疑を芙が聲を大きくして否定すると、メグは聲を弾ませて、「じゃあ、だいじょぶだね」とガッツポーズを決めた。そして、「忘れてた」とテーブルを指差す。
「さっき、ミナさんが芙ちゃんにどうぞって持ってきてくれたんだよ」
ベッドから降りると軽い眩暈に襲われた。しかしお腹は正直で、甲高い聲で訴えてくる。
ミナからの差しれは、ラップにくるまれた
二つの大きなおにぎりだった。型がしいびつなのは、もしかしたら彼が握ってくれたものなのかもしれない。
「何か、恨めないなぁ」
「え? 何?」
思わず出てしまった聲に、メグがすかさず反応してきて、芙は「何でもないよ」と手を振った。そして旅行バッグの中から金にる土産を取り出し、メグに渡した。
「これお土産。ごめんね、時間なくてのままなの」
「気にしないで。ありがとう。そうだ、まだ言ってなかった――お帰りなさい!」
掌サイズの、金のシャチホコの置だ。時間が殆どない中、駅で咲が勧めてくれたもので、寮の部屋にはし眩しくじられる。
メグは「可いいよ」と窓辺にそれを飾った。
「両親は元気だった?」
「うん――そうだね」
元気だったと思う。困らせてしまったけれど。
名古屋に行って、念願の杖を手にして笑顔で戻ってくる予定だった。魔法使いに戻って、あの頃のように戦えたらと思っていたのに、心がスッキリせずモヤモヤしている。
ミナは今回でなくてもいずれ魔法使いに戻ると言っていた。だから運命だとけれて、戻るのがし早かっただけだとどこかで自分を納得させている。
メグは「なら良かった」と微笑むが「あのね」と何か言いたげに切り出して、しかし話し難そうにを噛む。芙が「どうしたの?」と覗き込むと、躊躇(ためら)いがちに口を開いた。
「明日、陸上部の合同練習があるんだけど、相手の學校がね、篠山実業なの」
「篠山? そうなんだ。何かあるの?」
市の中心部にある高校だ。薫の母校で、茶のセーラー服が新鮮で羨ましかった。
「話したでしょ? 中學の時フラれた人の話。その人が篠山の陸上部なの。四百メートル」
陸上に詳しくないが、聞き覚えのあるワードに芙は「あれ?」と首を傾げた。
「それって、野村くんと一緒?」
「うん――そうなの。私もびっくりしちゃって」
メグの好きな男子、野村祐(ゆう)と同じ種目だ。
「じゃあ、メグはどっちを応援するの?」
「決まってるじゃない、そんなの」
変なこと言わないでよとメグは頬を膨らませ、テーブルの皿を取り芙に渡した。
「結構張してる。けど、祐くんが好きだから、心配無用だよ」
メグのこんな所を見習わねばと思う。自分も真っすぐに生きているつもりだったのに、彼と同じだとを張ることができない。
――「後悔してる顔だ」
そう言ったミナが用意してくれたおにぎりは、し塩辛い鮭と胡麻がっていて、都子の作るそれと同じ味がした。
非リアの俺と學園アイドルが付き合った結果
「私とお付き合いしてください!」 「あの……私じゃだめ…ですかね…?」 ちょっと待て、相手は學園のアイドル的存在の新天円香さんだぞ!?ありえないだろ? なんで俺に告白してきてんだ? ―そ、そうだ!罰ゲームか! きっとそうなん― え? 罰ゲームじゃなく本心で俺のことを好きだって? なんで非リアの俺と學園アイドルが付き合うことになってんだよ! しかも最近ネジが外れかかってるというかぶっ飛んでるっていうか……戻ってきて!優等生な學園アイドルぅ! すれ違い系學園ラブコメ!!
8 185星乙女の天秤~夫に浮気されたので調停を申し立てた人妻が幸せになるお話~
■電子書籍化されました レーベル:アマゾナイトノベルズ 発売日:2021年2月25日(1巻)、4月22日(2巻) (こちらに投稿している部分は「第一章」として1巻に収録されています) 夫に浮気され、結婚記念日を獨りで過ごしていた林原梓と、見た目は極道の変わり者弁護士桐木敬也が、些細なきっかけで出會って、夫とその不倫相手に離婚調停を申し立て、慰謝料請求するお話。 どう見ても極道です。本當にありがとうございました。 不倫・離婚がテーマではありますが、中身は少女漫畫テイストです。 ■表紙は八魂さま(Twitter→@yadamaxxxxx)に描いて頂きました。キラキラ! →2021/02/08 井笠令子さま(Twitter→@zuborapin)がタイトルロゴを作ってくださいました。八魂さまに調整して頂き、表紙に使わせて頂きました~ ■他サイトに続編を掲載しています。下記をご參照ください。 (この作品は、小説家になろうにも掲載しています。また、この作品を第一章とした作品をムーンライトノベルズおよびエブリスタに掲載しています) 初出・小説家になろう
8 63超絶美人な女の子が転校して來た。
歴史に詳しいこと以外には何も取り柄がない主人公の クラスに突如超絶美人な転校生がやってくる。 そして運良く席が隣に。主人公と転校生はどうなって行くのか………
8 149彼氏が悪の組織の戦闘員Eなんですが…
女性向け、悪の組織派ラブコメ。--- 普通のダサメガネ女子高生の雪見時奈はバイト帰りに悪の戦闘員らしき男に水を渡した。 しかしその男はアイドル顔のイケメンクソサイコ金持ちだったのだ! 私の平穏な貧乏生活は一體どうなるのだろうか? ※お話によって戦闘シーンで暴力描寫がある場合がありますがそこまで酷いものではないと思います。 基本ラブコメですが性的表現は控えております。お試し投稿中です。応援いただければ幸いです…。 基本はヒロイン視點のお話ですが彼氏視點になったり他キャラ視點になったりもします。
8 128【連載版】落ちこぼれ令嬢は、公爵閣下からの溺愛に気付かない〜婚約者に指名されたのは才色兼備の姉ではなく、私でした〜
アイルノーツ侯爵家の落ちこぼれ。 才色兼備の姉と異なり、平凡な才能しか持ち得なかったノアは、屋敷の內外でそう呼ばれていた。だが、彼女には唯一とも言える特別な能力があり、それ故に屋敷の中で孤立していても何とか逞しく生きていた。 そんなノアはある日、父からの命で姉と共にエスターク公爵家が主催するパーティーに參加する事となる。 自分は姉の引き立て役として同行させられるのだと理解しながらも斷れる筈もなく渋々ノアは參加する事に。 最初から最後まで出來る限り目立たないように過ごそうとするノアであったが、パーティーの最中に彼女の特別な能力が一人の男性に露見してしまう事となってしまう。 これは、姉の引き立て役でしかなかった落ちこぼれのノアが、紆余曲折あって公爵閣下の婚約者にと指名され、時に溺愛をされつつ幸せになる物語。
8 104いじめられっ子の陰キャJKは自分を変えるため、ダンジョンに挑む〜底辺弱者は枕とレベルアップで強者へと駆け上がる〜
七瀬世羅、彼女の人生は後悔の連続。一度選択肢した人生は巻き戻す事の出來ない現実。 何度だってやり直したいと願い夢見た。その度に砕けそうになる思い。 この世界にはダンジョンと呼ばれるモノが存在し、全ての人間にレベルシステムとスキルシステムが適応される。 まだ謎が多いシステム達、世羅はとある日に〇〇を獲得する。 日頃の生活で培った耐性スキル以外に一つだけ、スキルが増えていた。 それをきっかけに、家の前にあるダンジョンに挑戦する。 ただの高校生だったのに、小さなきっかけでダンジョンに挑む。 そこで見た光景は、想像を超え、そして再び後悔する光景。 なんで來てしまったのか、どうしてこうなったのか、焦る思考の中考える。當然答えは無い。 足はすくみ、腰は抜け、動けないでいた。 恐怖の塊が近づいて來る。自分の彼女達と同じ経験をする──そう感じた時、颯爽と空を飛び恐怖の塊と戦おうとする勇敢な───枕が居た。 彼女の人生は【枕】から始まる。 いじめられっ子からの脫卻、毒親からの脫卻、貧乏からの脫卻。 この世界はレベルシステムにより簡単に強さの優劣が決まる。 分かりやすい世界だ。 あとは、運と実力と、最高の相棒(枕)が居れば十分だ。
8 111