《した魔法~生まれ変わった魔法が、15年ぶりに仲間と再會する~》46 町子
「まだ眠れないの?」
そうメグに聞かれてから、既に一時間以上経ってしまった。
疲れているはずなのに、布団の中で目を閉じても全然眠気が下りてこなかった。眠ろうとすればする程意識がはっきりしてきて、芙はベッドから下りて機のライトを點けた。
メグが可らしい寢息を立てているのを橫目に、芙はベッドに座り、枕元に置いた魔法使いの杖を両手に握りしめた。
次の戦闘で今度こそ前に出ることはできるだうか。足手まといからの卻――自分の行のせいで悪い結果を招くことは避けたい。
『だから、私が強くしてあげるよ』
突然耳にってきた聲に、芙は「えっ」と耳を疑った。部屋には自分とメグ以外、誰もいないはずだ。
けれど確かにその聲は聞こえた。
知らないの聲。
恐怖に聲を出すことができず、うつむいたまま芙は口をパクパクとさせる。すぐそこに何者かの気配をじるのに、顔を上げることができなかった。
一瞬幽霊かと怯えて、そんなわけはないと自分をい立たせる。
Advertisement
「――誰?」
メグを起こさないように小聲で尋ね、返事を待った。
魔翔ならいつものようにキィキィ鳴いて出てくるのだろうか。いや、沸いてから時間が経過しているのなら、聲や音が聞こえなくても不思議はない。それに芙が耳にしたのは音ではなく言葉だ。
けれど、例外はある。
――「魔法使いは意識が弱まると、魔翔の聲が聞こえるんだ」
その言葉を思い出した途端、がガクガクと震え出す。
「どうして――」
その時が來たというのか。疲れのせいで聞き間違えたのかもしれないと自分を宥めようとすると、タイミング悪く聲が返ってきた。
『怯えなくていいよ。私が守ってあげるから』
弱みに付け込んで、『奴』は優しい言葉を掛けてくる。けれどそんな言葉の中よりも、相手の聲に芙はハッと目を見開いた。
深く沈んでいた記憶の斷片が、フワリと浮かび上がった気がした。
知ってる聲――恐らく、間違いない。
何故? と問い掛けるより早く、顔を起こして『彼』を確認していた。
黒い魔翔――目がなく白い口。
いつも出て來る魔翔の定義に當てはまるのに、それは獣ではなく人型で、芙の知っている人の形を模している。
『大丈夫、怖くないから』
中學校の合唱祭に、問答無用でアルトにさせられたコンプレックスの低い聲。橫から見える丸い鼻、そして羨ましいほどのサラサラストレートロングの髪。
「町子――なの?」
戦う事に何のためらいもなく、自分に素直だった佐倉町子だ。
「どうしてそんなをしているの? 町子は私。町子は死んだんだよ?」
彼はもう死んでいる。
は焼かれ、魂は芙として生まれ変わっているのだ。
『そう、町子は死んだの。だから町子は貴じゃない。貴は有村芙でしょう? 私は貴を助けたくてここに來たの』
それが彼である訳はないのに。平然と言い放つ黒い町子は、『さぁ』と白いの端を上げて手を差し出してくる。
この手を取ったら楽かもしれない。心に響く心地よい言葉だ。
類も弘人も、この言葉を聞いたのだろうか。
「その手は取らない。町子にそっくりだけど、町子は私だから。貴じゃない」
手を取るまいと、芙は両手を腰の後ろへ隠した。
『強がることないよ。どうせ戦ったって、貴はみんなの邪魔になるだけ。15年もブランクがあるんだから仕方のないことなのよ』
「そんなの、わかってるよ。でも……」
『言うこと聞けば、薫より強くなれるよ』
なんて魅力的な言葉だろう。誰よりも強くなりたいとずっと思っていた。
けれど、まだ自分は正気だ。
強い視線で魔翔を睨むと、
『弘人も喜んでくれるよ?』
奴は巧みな返事を返してくる。
弘人の名前はしだけ自分を弱くする。けれど――。
――「気を付けてね」
これは都子を泣かせてまで選んだ道だ。
「嫌だ。私は取引なんてしない!」
挑むように聲を荒げた。すると、
「ん? 芙ちゃん……?」
寢ぼけた聲のメグがしだけ起き上がり、芙はすかさず「ごめん、何でもないよ」と謝って、彼に背を向けて無言で魔翔に構えた。
右手の杖は、いつでも発可能だ。
一杯の強さを表す。弱みを見せなければ魔翔の聲は聞こえないはずだ。
頑固とした意思を前に、魔翔は白い口をにやりと曲げて、霧散してしまった。
良かったと安堵して、芙はその場にぺたりと座り込んでしまう。
本當にこんなことがあるのか――と、自分の弱さに涙が出てくる。
強くならなければ、すぐにでも彼に飲み込まれてしまいそうだ。
「ダメだな。こんなトコで泣いたら、また町子が來ちゃうよ」
再び目を閉じたメグを一瞥する。芙は枕元に置いてあったタオルを強く目に押し當て、「強くなれ」と呪文のように何度も唱えた。
【完結】辛口バーテンダーの別の顔はワイルド御曹司
ナンパから自分を救ってくれたタクミというバーテンダーに淡い戀心を寄せる道香だったが、タクミが勤めるバーで出會ったワイルドなバーテンダーのマサのことも気になり始めて…
8 89妹との日常。
毎日投稿頑張ってます!(大噓) 妹のことが大好きな夢咲 彼方(ゆめさき かなた)。周りからはシスコンだとからかわれるが、それでも妹、桜のことが大好きなシスコン。 「桜!今日も可愛いな」 「えっ!ちょっ!やめてよ!気持ち悪いなぁ」 「がーん…」 「嬉しい… ボソッ」 「ん?なんか言ったか?」 「ン? ワタシナニモイッテナイヨ」 ツンデレ?妹とのハチャメチャ物語。 尚、いつの間にかツンデレじゃなくなっている模様… 月一程度で休みます… 最初の方は彼方が桜のことが好きではありません。途中から好きになっていきます。 あと、作者はツンデレを書くのが苦手です。 毎日投稿中!(予定なく変更の可能性あり) いちゃいちゃ有り!(にしていく予定) 最初はツンデレキャラだった桜ちゃん。 Twitter始めちゃいました⤵︎⤵︎ @Aisu_noberuba_1 フォローしてくれたら全力で喜びます。意味不明なツイートとかします。 本垢ロックされたのでサブの方です… 2018年11月7日現在いいね100突破!ありがとうございます! 2018年12月1日現在いいね200突破!ありがとうございます! 2019年1月14日現在いいね500突破!ありがとうございます! 2019年2月21日現在いいね1000突破!ありがとうございますッ! 2018年11月24日現在お気に入り100突破!ありがとうございます! 2019年1月21日現在お気に入り200突破!本當にありがとうございます! 2019年2月11日現在お気に入り300突破!マジでありがとうございます! 2019年3月28日現在お気に入り數400突破!!ウルトラありがとうございます! 2019年5月9日現在お気に入り數500突破! マジでスーパーありがとうございます!!!
8 76家庭訪問は戀のはじまり【完】
神山夕凪は、小學校教諭になって6年目。 1年生の擔任になった今年、そこには ADHD (発達障害)の瀬崎嘉人くんがいた。 トラブルの多い嘉人くん。 我が子の障害を受け入れられないお母さん。 応対するのはイケメンのイクメンパパ 瀬崎幸人ばかり。 発達障害児を育てるために奮闘する父。 悩む私を勵ましてくれるのは、 獨身・イケメンな學年主任。 教師と児童と保護者と上司。 「先生、ぼくのママになって。」 家庭訪問するたび、胸が苦しくなる… どうすればいいの? ・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・ |神山 夕凪(こうやま ゆうな) 27歳 教師 |瀬崎 嘉人(せざき よしと) 6歳 教え子 |瀬崎 幸人(せざき ゆきひと) 32歳 保護者 |木村 武(きむら たける) 36歳 學年主任 ・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・:・:・:*:・ 2020.8.25 連載開始
8 87Waving Life ~波瀾萬丈の日常~
※題名を変更しました。 主人公、蔭山 剣也(かげやま けんや)が多くのヒロインと引き起こす、波亂萬丈の青春ラブコメディー。 岸川 蘭華(きしかわ らんか)は、いつも一緒に遊んでいた幼馴染。 皆田 絵里(みなだ えり)は、実は小學校時代に不良の自分を救ってくれた恩人。 そんな2人から入學して僅かの間に告白される。 そして更に、蘭華は留學することになり更なる問題に直面する。 その他沢山の問題にぶつかっても挫けずに頑張る主人公やヒロイン達に注目! 多くのヒロインと関わることで、主人公の感情は変化していく! 戀愛もの好き必見‼︎ ジャンル別日間最高19位、週間65位の作品です。
8 197自稱空気の読める令嬢は義兄の溺愛を全力で受け流す(電子書籍化進行中)
ただいま、電子書籍化進行中です。 加筆修正をして、ラストや途中エピソードなど、少し違う話になっていきます。 なろう版はなろう版で完結まで走りぬきますので、どうぞよろしくお願い致します。 「空気を読める女になりなさい」という祖母の教えを守って生きる令嬢チェルシー。祖母も両親も亡くなり天涯孤獨となった途端、遠い親戚だという男爵一家が現れて家を乗っ取られ、名前さえ奪われてしまう。孤児院に逃げたチェルシーの前に現れたのは、真の親戚だった。 優しい義両親につれられて向かった伯爵家で待っていたのは思春期を迎えた義兄。最初に冷たくされて空気を読んだチェルシーは、彼とはなるべくかかわらないように頑張ろうとするが、何故か婚約してしまい……? 「怪我をしたのか? 治療を……」 「あ、大丈夫です!」 「學園で苛められていると聞いた。俺がなんとかして……」 「大丈夫ですよ~」 「男共に付け狙われているようだな、俺が……」 「大・丈・夫、ですよーーーっ!!」 「聞けよ!兄の話を!!」 「大丈夫です!安心してください!ご迷惑はかけませんので!」 思春期を終えた義兄の溺愛をぶっちぎって、空気を読む令嬢は強かに生きていく! いつものコメディです。 軽い気持ちでお読みください。
8 161アナグマ姫の辺境領修復記
王都図書館の奧深く、《アナグマ姫》と揶揄されつつ、ひっそりと古書修復に勤しんでいた第十王女のアニエスは突如、父王の遺言で辺境領地を相続してしまう。 そこは數々の災難により無人の廃墟と化し、領內を魔物が闊歩し魔王が棲みつき、おまけに時々異界から何かが迷い込む、とんでもない土地だった。 たまにめげそうになりつつ、主人公が領地再興に向けてがんばる話。 (※本編完結済み)
8 172