した魔法~生まれ変わった魔法が、15年ぶりに仲間と再會する~》48 噓

「ちょっ、何これ。頭が割れそう……」

は両耳を手で塞ぐが、緩和するどころかそれはだんだんと強まっていく。

部屋の中に魔翔はいない。

咲は「まさか」と飛び付くように窓辺に走り、外へ向けて窓を開け、絶句した。

「なんだい、これは……」

も咲を追い掛けて後ろから覗き込み、目に飛び込んだ景に低い悲鳴を上げた。

「なんで、こんなことになってるの? 何が起きて……」

窓の外。

寮の周りや學校までの道や空き地に、無數の魔翔の姿があった。

目視しただけでも十はいる。空気の音に混じって聞こえるキィキィという奴等の聲に、芙はごくりと息をのんだ。

離れていて詳細は分からないが、學校にまで広がっているように見える。

バタバタバタと騒がしい足音がして、ドアノブをガチャガチャと回す音が響いた。

「おい、開けろ!」

修司の聲に鍵を掛けていたことを思い出し、芙は慌てて施錠を外した。バンと開いた扉から、修司とミナが雪崩込むようにってくる。

「その格好……」

フリフリのワンピース姿の芙に一瞬目を奪われて足を止める修司に、芙は咲の告白を思い出して思わず視線を反らしてしまうが、咲の聲がしてすぐに窓辺へ戻った。

「本気だね、弘人も薫も」

「弘人と取引してる魔翔が引き寄せたんだと思う」

修司が言うと、ミナは「そうね」と答え、窓の外を見回して「うん」と頷いた。

次第に耳鳴りが止んでくる。耳鳴りは魔翔が出る合図だ。

「出揃ったってとこかしら。だいぶ遠くまで沸いてるわよ。學校の中もこんなじのはず。三人とも、覚悟はできてる?」

「覚悟なんて、とっくの昔にできてるぜ」

「そうだね――行くしかないしね。それより、ミナは隠れて絶対に出てこないでね」

「そう言って貰えると心強いわ。あの二人も魔翔も、私のことが狙いなんだものね。今沸いてるのは、修司や咲なら十分戦えるレベルよ。芙に気を付けてあげて」

修司は杖を取り出して「任せとけ」と勇んだ。ミナは三人に向かって頭を下げる。

「貴方たち五人を選んだのは、誰でも良かったわけじゃない。ちゃんと適合してないと杖を持っても魔法使いにはなれないのよ。だから、自信を持って」

になって初めて咲の店に行った時、咲の杖を振っても反応がなかった。

「わかってます。じゃあ、行ってきます」

修司と芙に目で合図を送り、咲が先陣を切って部屋を出た。すぐ後に修司が続く。

「行ってきます」と芙がその後ろに駆け出そうとするのを、ミナが突然腕を摑んで阻む。

「魔翔の聲を聞いたの?」

気付いていたのか。芙はミナにを向けるが、彼と目が合わせられずにの辺りに目を泳がせる。真っすぐな視線で返事を返すことができない。

「聞いていません」

そして噓をついた。ミナが「駄目よ」と咎めるが、芙は橫に首を振った。

「そんな魔翔になんて會ってないし、たとえ會ったとしても取引なんてしませんから」

そう言って顔を上げると、ミナは心配そうな顔を向けてくる。

「戦ってきます。ミナさんは隠れていて下さいね」

返事を聞く前に、芙は急いで部屋を出た。

食堂へ移する寮生たちがワンピース姿で駆けていく芙を見てざわめいた。彼等に魔翔は見えないし、耳鳴りも聲もじ取ることはできない。

途中に居たメグに「ちょっと行ってくる」とだけ伝え、芙は全速力で玄関を出た。

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