した魔法~生まれ変わった魔法が、15年ぶりに仲間と再會する~》53 け継ぐという事

薫と弘人の力を、芙と修司がけ継ぐという話だ。

「そんなことできるんですか?」

「前の五人は全員が死をんでしまったから、できなかったの。ある程度魔法の耐がついている魔法使いじゃないと、別の力をれることはできないから。けど二人にれる覚悟があるのなら、修司と芙にはその資格があると思う」

前向きに提案しつつも、ミナの表に迷いのが見える。

「そんなことできるなら、私だって引きけるよ」

「ありがとう、咲。でも、一つの力を分けることはできないから、二つの力は二人にしか移できないのよ」

「二人はそれでいいのかい? 私が変わったっていいんだよ?」

咲に言われて、芙は「うん」と頷く。

実際にまだピンとこなくて不安な気持ちもある。

「力をけ継ぐってことに抵抗はないよ。使いこなせるかどうかは分からないけど。強くなれるなら、それでいい」

「力を抜かれた二人はどうなる?」

ずっと黙っていた修司が改まって尋ねた。薫と弘人は最初こそ喜んだが、ずっと困した表を浮かべていた。

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ミナは「そうね」とうつむいて一人納得したように頷くと、五人に向けて顔を上げた。

「まず、芙と修司の力は実質的倍になる。だから、沸き出る魔翔のレベルは桁違いに上がるわ。出現頻度も上がるだろうし、使いこなすのも大変だろうけど、これからは私もちゃんとサポートするから。慣れる努力をする、ってことに盡きると思う。あとは、今の芙しみんなより弱いように、咲が気を付ければ問題ない」

「私はマイペースでやらせてもらうよ」

任せて、と咲はを張る。

「そうね。それに、弘人と薫。貴方たちの記憶は全て消える。初めて私に會った日から、魔法に関すること全部よ」

弘人と薫は顔を見合わせ、次に芙へと視線を向けた。

は「えっ」と聲をらす。

「私たちのことも忘れちゃうってことですか? なら、私の中からも二人のことが消えちゃうんですか?」

「ううん。それはあくまで二人だけの事なのよ。二人が魔法使いで居たことは現実だからね」

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「そう――なんですか」

町子が過ごした弘人との記憶が彼の中から消えてしまうということ。

は自分の元を摑んで、急に沸き上がった衝を抑えた。

「本當にいいの? 二人とも」

薫は困した表で二人に尋ねた。その橫で、弘人が小さくを噛み芙の前に出る。

「芙

初めて弘人に今の名前を呼ばれた気がした。

町子と呼ばれることをんだのは芙だ。最初はそれでいいと思って居たのに、會う時間が多くなるほど、その呼び方に寂しさを覚えた。

「ごめんな。これは俺の責任だし、死んでもいいと思ってる。けどもし生きられるなら、忘れちまってもいいから、みんなでまた會えたら嬉しいよ」

「弘人……謝るのは私の方だよ。でも、どんな形でもいい。生きて」

流れ出す涙を止めることができなかった。最後なのに、弘人は昔のように抱きしめてはくれなかった。隣で肩を叩いてくれたのは咲だ。差し出されたハンカチで強く目を拭くと、できる限り一杯の笑顔を作って、芙は薫の所へ行く。

「ねぇ薫、私が芙になって初めて會った日、車であの曲が聞けて嬉しかったよ。ありがとう」

咲の車で聞いた、町子の好きだった曲。薫が覚えていてくれて、セレクトしておいてくれた。

「私は町子が嫌いだったけど、芙のことはそんなに嫌いじゃない」

晴れやかな表の薫を見て、芙はまだ自分が町子だった頃の彼を思い出していた。

いつもの茶いセーラー服姿で、人で控え目で、冷靜に判斷する彼は、芙の憧れだった。

「私はずっと好きだったよ、薫ちゃん」

素直な気持ちを伝えると、薫は面食らった表をして、やがて穏やかに笑んだ。

ミナは杖先で左の掌を叩き、講義する教師のようにくるりと五人へを向けた。

「じゃあ、二つの力、二人にけ取ってもらうわよ」

「あの、できたら私が弘人の――」

「芙。ごめんね、それはできないのよ。貴の屬は火でしょ? 弘人の水は対極だから、それぞれを打ち消してしまうの。貴に無理な負擔を掛けてしまう。だから、貴には闇をれてもらう。修司の風と水はうまくいくから」

弘人の力をけ継ぐことができればと思ったが、冷靜に考えると、火と水を一緒にさせることができないなんてわかることだ。そんな事実が自分と弘人を表しているようで、寂しさが込み上げてくる。

「そんなに落ち込まないで。この決斷は誰も殺さない。これだけで素晴らしいと思わない? 弘人と薫にだって、また會えるから」

肩にそっと手を當てて、ミナが芙を覗き込んでくる。大魔はこんな人だっただろうか。ここにいるのは、いつもの優しい寮母のミナだ。

「――うん。そうですね」

サヨナラじゃない。

十七年前、雪の中で冷たく死んでいった町子や類の時とは全然違う。

これで良いと思える。

「弘人も薫も、また會おうね」

「もちろん」と二人が聲を揃えた。

「じゃあやるわよ。だいぶ力を使うから、私は二日くらい寢込んじゃうわね」

「その時はまた、夏樹が看病してくれますよ」

「そうね」とミナは嬉しそうに笑って、辺りをぐるりと見渡した。

「魔翔もだいぶ殘ってるけど、三人とも頼むわよ。貴方たちは強い。自信を持って」

ミナは自分の杖を高く掲げた。

「弘人に薫。貴方たち二人は自分のベッドに送ってあげるから、まずはゆっくり休んで。そして自分が納得できる未來を進みなさい」

くるりと回された杖の先から、突然強いが放した。

辺りを白一に飲み込んでいくが、うっすらと背景の形は風景に殘っている。

その中でミナは、弘人と薫に一人ずつ杖を向けた。まるで手品か何かのように二人の元にの玉が現れる。ソフトボール程の大きさの青い球と黒い球で、二人の魔法と同じだ。

「あ……」と零した修司の聲に、芙もその記憶に気付くことができた。懐かしいと思える。

初めて大魔に會った時、同じものを見た。

「じゃあ、いくわよ」

思い出に浸るのも束の間、ミナの聲に二人のを無くしていく。もうこれで會えないような気がして二人に何か聲を掛けねばと思ったが、うまく言葉にできず芙は聲を掛けることができなかった。

咲が、「二人とも、またね」と消え行く先に屆くように聲を上げる。

薫が手を振ろうと片手を上げたところで、二人は完全にの中へ飲み込まれてしまった。

「お疲れさま」

シュッと火がむような音がして、ミナが何もなくなった空間に言葉を送った。

白いが消えて背景がはっきりと戻ってくる中、青い球と黒い球はミナの広げた掌の上にボオッと浮かんでいる。

「こんなのだったね」と慨深い表で見つめる咲。

「これが魔法使いの力になる。二人とも覚悟はいい?」

そう言ってミナが手を橫にらせると、芙の前には黒、修司の前には青のがスウッと飛んできた。

「闇の力なのに、あったかいね」

ふんわりとじる溫度。

の中でが揺れていて、まるで生きているように見える。

「そうね。じゃあ、あとは頼むわよ。私はもう役に立たないから、撤退するわ」

しずつの溫度が上がってきて、芙と修司は目を閉じた。

溫かくて優しいに包まれて。次に目を開いたとき、目の前にはもミナの姿もなかった。

「行っちゃったよ。大魔の力だと、この空間から出れるとはね」

そう咲が呆気にとられた顔で説明する。異次元を出させて彼き出すという薫たちの計畫も、結局ミナに踴らされていただけだったのかもしれない。

ミナが消えて、そこには黒い魔翔の姿があった。

人間の形だ。きっとこれは、弘人と取引した奴だ。けれど、奴の聲を言葉として理解することはできなかった。

「いける」と修司は自信満々に杖を振りかざす。緑のる風の魔法使いだった彼の杖から、水が現れた。

は自分の杖を確認した。ボオッと赤くるいつもと同じ自分の杖だ。けれど、それだけではないよと何かが自分に語り掛けてくるのが分かった。

「うん、大丈夫」

赤と絡んでびる紫を確認して、芙も魔翔に向けて手をばした。

負ける気はしなかった。

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