《機甲學園ステラソフィア》弁當王決定戦-死神のパーティータイム-

「ABブロック4回戦もそれぞれ終了し、午前中の全日程を終了しました! これより1時間の休憩にりますっ。しっかりご飯を食べるんだゾ」

観客席に居た人々が、それぞればらばらと散っていく。

「晝休み、ですか」

「ごっはん、ごっはん! ごはんをいただきやがるんですよー!!」

時刻は13時。

これから午後の部が始まる14時までは晝休みとなるらしい。

「それじゃ、第2回弁當王決定戦を開催しまーす!」

突然、ツバサが発したその言葉。

する1年を差し置いて、自信満々の面持でテレシコワ・チャイカ、ディアマン・ロズ、エール・カトレーンの3年組が歩み出てきた。

その手に持っているのは、包みにった大きな弁當箱と思しきものだ。

「こ、これは……?」

「ロズとチャイカ、カトレーンが弁當を作ってくるっつー毎年恒例のイベントだよ」

ソレイユが1年組へとそう囁く。

「にゃっはー、楽しみなのですよ~。カトレーン以外」

「こればっかりはミズナ野郎にも同意せざるを得ないんですよ! カトレーンはお引き取り願え!」

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「ミズナちゃん、マッハちゃん、2人ともあとで倉庫まで來てほしいとよ」

「ウチはカトレーンの弁當も楽しみやで!」

「り、リーダー…………!」

「どんな弾投下してくれるかワクワクしてるで!」

「――もあとで倉庫まで來てくれるとね?」

そんなことをしている間に、ロズが包みを解き始める。

「それじゃ、いつも通り私からで良いわよね?」

ロズの問いかけにツバサが頷き

「去年の優勝者だしね。どうぞやっちゃってください!」

そう言うと、

「りょーかいっ」

ロズは弁當の包みを完全に解いた。

出てきたのは、優麗な薔薇の花が掘られた重箱だ。

その見た目もなかなかのしさだが、その中しく彩られていた。

「相変わらずロズの弁當はクオリティが高い――」

「ふっ、オレの自慢の妹だかんな」

「も、もう、お姉ちゃんったら……」

食材の栄養と彩のバランスが取られた豪華な弁當。

そういう事を考えていながら、弁當には是非しいハンバーグやソーセージなどの類も盛り沢山だ。

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ご飯は食べやすいように手のひら大のおにぎりになっており、それらにも十穀米が使われていたりと細かい気づかいが見て取れる。

また、筑前煮や白和えなど、東洋的な料理を多用しているのも彼の弁當の特徴で、その珍しさに惹かれると言う部分も高い

その中でも特に味しいのが、黃金に輝く定番中の定番、卵焼き。

冷めてもなおけるような風味と甘さが絶妙だ――とツバサが言っている。

「流石は前回の覇者ディアマン・ロズ……新歓には負けたくないけど弁當でなら負けても良いっ!」

「あらあらリーダー、ウチが負けると思っていますの?」

そう言いながら包みを開くのはテレシコワ・チャイカ。

チャイカの弁當箱は大きく広いシンプルな白雪の弁當箱だ。

「でもチャイカの弁當は……」

「ま、不味いんですか」

ツバサの呟きを聞いたスズメが思わずツバサの耳元にそう囁く。

「いや、味は最高なんだけど……バランスが、な…………」

「ちょっとそこ、聞こえてますわよ!」

「うおうっ、ご、ごめんなさい!!」

「すっ、すみませんっ!!!」

「ウチだって前回の敗因を生かした弁當を作ってきたのですわ。これがウチの作ってきたお弁當ですわ!」

何やらいつもよりも気合のりようとテンションの高まりようが違うチャイカ。

そんな彼が堂々と開いた弁當箱――そこにあったのは……だった。

「って去年と同じオンリーイベントなのですよ!!!」

「オンリーイベントとは失禮ですわ! ちゃんと他のものもはいってますわよ!」

「そうだぜミズナ――これはただのじゃない……これは、巻きおにぎりだ!!!」

「なん、ですと……」

そういえば、よくよく見てみるとの形狀が丸みを帯びており、中に何かが包まれているようだ。

「ど、どうして巻きおにぎりなんですか……?」

「去年はしかってなくて、ミズナちゃんがせめてご飯はしいって言ったから――だと思うぜ」

「あ、ああ……」

ソレイユの耳打ちにスズメは理解はした。

納得はしていないが。

は主食! ご飯なんていらねーんですよ!!」

そう言うマッハは――だが口元を涎で濡らし、今にも巻きおにぎりを摑み去っていきそうだ。

「前回もマッハちゃんには大好評だったことは言わずもがな」

「そうでしょうね……」

ヒソヒソと思い思いの會話する周りに構わず、ツバサが最後の選手へとその手を向けた。

「それではお待たせいたしました! 降臨、満を持して!! 世紀のリーサルウエポン料理人エール・カトレーンの弁當の登場だ!」

その言葉を聞いて、緩んでいた2年生以上の表が引き締まる。

1年はそんな上級生の姿を見て直した。

本當の戦いはここからだ、と。

「リーサルウエポン料理人とか言うんじゃないとよ!!」

「だってカトレーン! 前回のアレは無いって!!!!」

「あぁあああああもう、そんなん言うなら実であっと言わせてやるとよ!!」

そう言ってカトレーンが開けた弁當箱――そこにあったのは……

「普通、だと――!?」

「おお、じょーとーさ!」

「本當! もう先輩達も驚かさないでくださいよ!」

驚くツバサに、イヴァとサリナの目が輝く。

ロズほどの豪勢さも、チャイカほどのインパクトも無いが、オーソドックスな容のお弁當。

バランスもそこそこ綺麗に取れており、素樸な見た目が逆にその魅力を引き立てる。

「ホンマや! 普通に食えそうなしてる!」

って……去年はどんなのだったんですか……」

「これ、寫真。去年の」

先ほどからずっとスズメに抱き付いたままのヘレネがポケットから一枚の寫真を取り出し、スズメに見せる。

そこに映っているのは、明らかに食をそそらない味をしたナニか。

青や緑で彩られ、どこかネオンライトを連想させる。

食べというよりは、発だった。

「何で寫真を持っとっちょね!」

「ユニークだから」

「確かに去年のは傑作だったよなぁ」

「うーん、カトレーンのインパクトがある弁當期待してたんやけどなぁ」

「まぁ、もしもそうなっていたら、去年みたいにウィリアムバトラーに処理させてましたけどね」

ロズがにこやかな顔を言いながらそんなことを口にする。

まぁ、チームでやったことはチームで連帯責任。

「仕方ないわよね」

「ウィリアムバトラーにって去年はウチとカトレーンしか食ってないやん!!」」

「あんなん食えん。死ね」

卒業したウィリアムバトラーの元チームリーダーも、その弁當を見ただけで逃げ出したと言う逸品である。

「そういえばマッハちゃんも食べてたな」

「思いだしたくない、思い出したくないんですよ……」

青い顔で震えだすマッハの姿から、余程のものだったと予させる。

「今回は思ったより安心して食べれそうだぜ」

「そうやな」

「それじゃ、さっさと食べようか!」

ツバサが手際よく、それぞれに皿や箸、手ぬぐいを配った。

「飲みは何が良いです?」

クーラーボックスを軽々と擔ぎながら、ディアマン・ロズが尋ねる。

「緑茶を頼む」

「アップルティーはありませんの?」

「ミルクでももらってやるんです!」

「あっ、な、何があるんですか?」

「ロズ、ウーロン茶あったよな」

「まずは味い水をくれなのです!」

「わたしがれたメロンソーダを……」

「オモロイの一つ頼むで!」

「殘ったヤツからテキトーに選ぶとよ」

「マスター、オススメ。一つ」

「さ、さんぴん茶がほしいさ!」

それぞれが思い思いの飲みを注文する。

「み、見事にバラバラですね……」

苦笑するスズメをよそに、ロズはクーラーボックスを開く。

そこにはギッシリった飲料缶。

ロズが手際よく、その中から飲みを見つけ出し、手渡していく。

「よ、よくそんな種類富にってますね……」

「スズメちゃんもどうしてもしいのがあれば明日から持ってくるわよ?」

「あ、ありがとうございます。あっ、そのココア頂けます?」

「はいどうぞ」

「ちゃんとさんぴん茶もってるさ!」

「ジャスミンティーやけどな――しっかし、なんやこの濃厚豚骨醤油ドリンクって……なんや……」

「だってオモロイものって言ったじゃないですか?」

「オモ、ロイ――?」

「いい気味。お似合い、へっぽこに」

「誰がへっぽこやぁ!!!」

それぞれの手に飲みが行き屆いたのを確認すると、ツバサが聲を上げる。

「それじゃあ、皆! この食事を頂けることに、我らが主に謝をもって――いただきます」

「いただきます!!!」

群がる様に、弁當へと手をばすブローウィング、ウィリアムバトラー、バーチャルスターの12人。

「あ、この卵焼き本當に味しいです!」

「ありがとうスズメちゃん」

「カトレーンの弁當味しいな!」

「そ、そう言ってもらえて嬉しいとよ」

わいわいと楽しく食事をすするめる一同。

だが事件はしばらくしてから起こった。

「マハもカトレーンのやつ頂くんですよー!! ……ぐに?」

マッハが口にれた揚げ

その食にマッハは首を傾げた。

瞬間、マッハの顔が青くなっていき、汗が噴き出す。

「ど、どうしたマッハちゃん?」

「このプレッシャー……去年の、再、來」

それだけ呟くと、マッハが突然倒れこむ。

騒然となるその場で1人の顔が変わった。

「――エール・カトレーン…………!」

「ひやっ!?」

それは、普段は無表で落ち著いているモード・ヘレネ彼だった。

の瞳がカトレーンに突き刺すような視線を送っていた。

「やっぱりカトレーンか――でも、オレは何とも……」

「アタシもだ」

「わ、私も……」

「イヴァもさ」

「や、やっぱりって失禮とよ!」

「カトレーン、れたな? 自分で作った料理」

「うっ」

ヘレネの言葉に一同は首をかしげる。

「カトレーンがれた? 自分で作った料理、を……?」

「カトレーン弁當。カトレーン、作ってない。作った、私が」

その瞬間、面々に衝撃が走る。

そう、今日この場に持って來たカトレーンの弁當はモード・ヘレネが作ったものだった。

「カトレーン弁當、クソ。食べさせられない。食べたくない。だから作った、私が――――――95%は」

「95%!!??」

しかし料理が趣味のカトレーンが、自分の料理が全くってないことに不満をじない訳は無い。

「弁當に違和。私は分からなかった。でも、気付いた、今。量……増えてる」

「カトレーン……?」

「リ、リーダー!? リーダーだって楽しみにしてるって――」

「食べれんもんより食べられるもんの方がええんは當然やろ!!」

「そ、そんなぁ!」

それから、カトレーンの弁當はカトレーン本人で食べることになったのであった。

「で、でもヘレネちゃんの手作り料理食べれただけで幸せ――かも? ぐふっ」

「死ね」

青ざめた顔で橫になるカトレーンとソレを介抱するウィリアムバトラーの面々。

「これは今回もロズの優勝かな……」

対して、気絶したマッハを抱えながらツバサがそう呟いた。

そうこうしている間に時刻は14時を迎え、後半戦の幕が開かれた。

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