《幽霊公(プランセス・ファントム)》4. 後に殘される者
期待に反して、アドリアンは死ななかった。
雨の中を駆け付けた主治醫曰く、食事にれられた毒はただのネコイラズ、つまり殺鼠剤だという。さほど量を食べていなかったため、命に別狀は無いとのことだった。
「殺しても死なない、ってこういうことを言うのね…。」
部屋に來た執事からそう報告をけたユーディトは、寢椅子に落ち著くとしみじみと言った。時刻は深更をとっくに回っていた。
「同だな。」
彼の座る寢椅子の背に軽く寄りかかって、ジーヴァは同意した。左手を、ユーディトの背を流れ落ちる黒髪にのばす。今日は結局、一度も髪を結い上げなかった。
「お前が口にしなくて良かった。」
「あの男以外は誰も食べていないわ。」
ネコイラズは全員の主菜にっていた。だがバベットも食が無かったようで、スープは口にしていたが、主菜には手を付けていなかった。
毒はアドリアンを狙ったものだろう。ユーディトが食事に手を付けないことはもう知られているし、ほとんど部屋にこもっているバベットや、今日現れたばかりのジーヴァを狙ったとは考えにくい。
「きっとの恨みよぉ。」
「リールゥ。」
今回も突如空中に現れたサキュバスは、はしゃいだ聲で言った。
「その格好はどうしたの?」
銀の髪に合わせたのか、今夜のリールゥは銀鼠のドレスを著ている。元やスカートに金屬沢のあるビーズが沢山いつけてあるので、ガス燈の明かりをキラキラと反する。
「これ?ここにあった肖像畫で、誰かがこんなのを著てたのよ。似合う?」
浮いたまま、くるりと回って見せる。
「似合うけど…。」
ドレスの形が、し時代がかっている。
「ね、ユーディも今度こういうのを作りなさいよ。あ、もちろんラインは今風にしてね、それから、はもうし淡い方がいいかしらね。」
「はいはい。」
デザインを仕立屋に伝えるのは面倒なのに。
気の無さそうなユーディトの返事は意に介さず、リールゥは手にした扇をぱちんと閉じると、話を元に戻した。
「きっと、彼が手を付けた使用人が毒を盛ったのよ。」
「それは臺所報?」
ジーヴァと違って、リールゥはっからのゴシップ好きだ。人のふりをしてソブラスカ公爵夫人として生活した期間が長いからだろうか、彼はお喋りとお灑落をこよなくする。
「いーえ、私の推理だわ。使用人部屋は、子爵とユーディとジーヴァの三角関係説で持ちきりだわ。」
「やだ、何それ?」
「バベットに飽きた子爵がユーディにちょっかいを出して、それで人のジーヴァが毒を盛った、ってことになってるわ。」
「大間違ってない理解だけれど、ジーヴァのはずがないのに。失禮だわ。」
面白く無さそうなユーディトを、リールゥは不思議そうに見た。
「どうしてそこでユーディが怒るの?」
「だってジーヴァなら、もっと良い毒を使うわ。クラーレとか、ジギタリスとか。」
どちらも、ネコイラズ如きとは格が違う猛毒だ。
「そういうことだ。」
ゆったりとジーヴァは笑った。
「理由なんかどうでも良いから、大人しく毒殺されてくれれば良かったのに…。」
「全く、悪運の強い男だな。」
小さくを尖らせたユーディトの髪を、ジーヴァは味わうように口づけた。
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