《親のり人形は自らその糸を切ろうとしている》俺達の第一歩 ①

次の日の朝一番で病院に電話をした。し時間はかかるということだったが予約できた。

予約時間に合わせて、駿と一緒に病院に行く用意をしている。

張してる?」

用意をしている俺の肩をポンポンと叩き、駿はニコッと笑った。

駿の笑顔はとても和で優しかった。

張してるような顔してる?」

張はしてないと言えば噓になる。でもそれを見せたくなくてわざとそっぽ向いた。

「あ、ちょっとだけ眉間に皺が寄った」

駿は俺の顔を追うように顔を合わせてきて、眉間を指差し、俺がしたような顔を真似していた。

顔に皺が出來るなんて何年ぶりだろうか。

「だから、張はしてない」

「俺がついてるから大丈夫だよ」

一人だったらもう一度病院に行こうなんて思わなかっただろう。

をある程度まとめ、靴を履いた。

「電車は混まない時間帯を見たからね。もし混んでても気にせず俺を頼っていいから」

電車に乗るのは山下さんに會った時以來だから、たぶん大丈夫だと思う。

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駿が隣にいる安心からか張はしなかった。

最寄り駅から電車の乗り降りもスムーズに出來た。

「病院の最寄り駅から歩いて10分くらいかな」

10分と言えば近くじるが、歩くと意外に遠い距離だ。

「車椅子だと何分くらいで著くの?」

「なるほど!いい質問だね。えーとね……頑張って漕いで5分くらい?」

「そりゃ、明日筋痛だよ」

と冗談混じりで聞いてみた。俺は相変わらず笑えないけど、駿は楽しそうに笑っていた。

「そこは笑うとこだから、律も笑ってよ」

「笑えないよ」

「出來るよ、一緒に笑おうよ。寂しいじゃん。口角上げる練習したらいけるかもしれないよ」

「……頑張ってみる」

「一緒にね」

“一緒にね”

その言葉にちょっとドキっとした。

それと同時に嬉しかった。

一緒に頑張ってくれる人がいるんだ……。

病院の最寄駅から病院までは道を知らないため、立ち止まりスマホを見ては、道を確認しまた進むという繰り返しだった。

十分の道のりが三十分くらいかかったようにじたが、やっと病院に著いた。

病院を見上げると二、三年前見たあの病院と雰囲気は全く変わらない。

付で診察券を通し、待合室でキョロキョロしながら待った。

落ち著かないな……。

待つ時間が長くじ、順番が近づくにつれだんだん張してきた。

いてもたってもいられず、駿に話しかけようとした。でも駿を見ると、肘をついて前を見、顔がこわばっていた。

なんで、駿はこんな顔つきをしているのかそのときは分からなった。

「白咲律さん、1番のお部屋にどうぞ」

名前を呼ばれ俺は急いで診察室に向かう。

「白咲律さんですね」

「はい」

先生の顔を見て思い出した。

あの事故のことも事故後の苦しさも……今までは忘れようとしたそのことも全て……。

先生はパソコンを見て、々と質問をしてきた。

「久々ですね、調よくないとかですか?」

「すみません。久々にリハビリをしようかなぁて思って」

「いいことですね。誰かに勧められたとか目標が出來たからとかですか?」

「友達が……」

俺は後ろを向き、駿のほうを見た。

俺が言葉を詰まらせたのが気になったのか、先生もつられて、俺達の方を見た。

俺が先生の方を見ると駿を見て目を見開き、明らかにその場の空気が変わっていた。

駿は數歩歩き、俺の橫に來た。

「なんでお前が白咲さんと知り合いなんだ?」

お前?

「関係ねぇじゃん」

二人の口調。このない會話でも明らかに知り合いだとわかる。

「兄さんが律の主治醫とかマジだるい」

え・・?先生が駿のお兄さん?

「なにが言いたいんだ?」

「別に。てかさ早く律のこと調べてよ。ヤブとかだったら許さないから。」

「……白咲さんすみません。私挾んでしまって。……久々なので、レントゲンや々検査しましょう」

俺と話をしている時の先生の顔。そして駿と話してる時のお兄さんとしての顔。同じ人でもこう違う顔を見せるのか。

一度、部屋を出て渡された紙に書かれた検査室へと向かった。

「先生は、駿のお兄さんなの?」

「昔はな。今は嫌い。律が好きだから話をしたけど」

赤の他人になりたいけど……と駿は言った。

きっと、“けど”のあとは“家族だから無理なんだ”て言いたいんだろうな。

「律、足くようになっらたら海に行こうよ」

「海?」

「俺さ、車の免許取るよ。でさ、律を車に乗せて海に行くんだ。海に著いたら律と浜辺歩いて、海を見ようよ。律の作ったイルカのアクセサリーをにつけるんだ」

駿は振り手振り表現しながら楽しそうに話した。

なんか想像したら、嬉しいやら恥ずかしい気持ちになった。

「まだ歩けるかわからないじゃん」

「歩けるの。努力は結果に必ずつながる。希は必ず現実になる。諦めたらそこで終わり。俺は信じてる。」

「なんでそこまでして……」

「俺は律を助けたいし、一緒にいたいって思ってる。今までは人の言うことを聞いてただレールの上を歩く人生だった。だから今すごく楽しい。律の力になりたい」

「俺も駿の力になりたい」

俺が真剣な眼差しで言うと、駿は照れた顔でありがとうとお禮を言ってきた。

俺ももっと駿を知りたい。

もっと信頼関係を築けたら、いつか教えてしい。

君が苦しんでいる家族のことを。

今はいい……今は……。

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