《親のり人形は自らその糸を切ろうとしている》俺達の第一歩 ③

診察は一ヶ月に一回

リハビリは週に二回

そして、仕事。

毎日毎日忙しい……目まぐるしい。

時間だけが過ぎていった。

そんな目まぐるしい中、駿はずっと俺の家で家事や周りの世話をしてくれている。

一泊だったのが連泊している。

あれ……?いつからだろう。毎日家にいるような気がする。

「俺、アルバイトしようかな」

ソファで雑誌を読んでいた、駿がボソッと言った。

「なんで?」

「やっぱりここに住んでるから、タダで住むのは申し訳なくて」

「……まさか一生住むの?」

「律がいいなら」

サラッと言うなぁ……。

でさ、俺に託すなよ。

「駿はしたいことないの?夢とか」

「夢?」

雑誌から目を離し、天井を見た。

「ないかな」

そう言って、再び雑誌に目をやった。

「なぁ、駿。俺の経験で申し訳ないけど、高校は行ってそこからアルバイトしてお金貯めたらどう?ここに住むお金は今はいらないからさ。とりあえず高校行ったらどう?」

「なんで?」

「なんで?って……」

「高校に行くメリット教えて」

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あ……雑誌から離して見ているその目。

駿の目がまた……

あの冷徹な目になってる……。

その目が……輝きを失っている。

「友達作って、勉強して?ただ苦しい毎日を送らないといけないの?」

「勉強は確かにしんどいけど、友達作ることは楽しいじゃん」

「楽しくない」

「駿は生きてきて、楽しいことなかった?」

「ない。今が一番楽しい」

そうはっきり言われるとこっちも言うことがなくなる。

俺のエゴかもしれないが、學生は學生らしくしてほしいと言う思いもあった。

「高校だけは行こ。なんでもするから」

「……俺には學校に行かなければならない理由がわからない。ただ、律が言うなら行く」

學校に行く、行かないは自分が決めることで他人が決めることではない。

駿は自分の意志ではなく、俺が行けと言うか

行くと言うじだった。

それが間違いか正しいかはわからない。

でも今しかできない経験をしてしい。

失敗したらまた戻れる若さがある。

「じゃー明日から學校行ってこいよ」

「たださ……學校の用意家にあるんだよね」

雑誌を閉じ、駿は上を起こした。

「……帰りたくないんだよな……。でも高校行くなら學校の用意いるし。まぁ明日、朝八時くらいに帰るわ」

「大丈夫?一緒に行こうか?」

「いや、いい。來ないでしい」

駿は腕をクロスにして、首を橫に振った。

……でも心配だし、明日後ろからついていこうかな……。

車椅子だからバレるか。

「なんかあったら連絡していいから」

「律……」

「なに?」

「前にも言ったけど、律が思っている『いい親』を想像しないほうがいいよ」

「どういう意味?」

「俺の親は、いい績は當たり前。親の描いた未來通りになるのも當たり前。習い事も沢山した。でも結果なにも殘らなかった。反抗すれば骨になるまで探して連れ戻そうとする親なの。世間も気にするし」

「駿……」

「親のり人形として生きてきたから、俺はまたり人形として生きていかないといけないのかな。」

「……人間は糸で繋がれない。一個として生きる価値がある。俺はそう思う」

駿が親のことについて口を開いた時に

助けて

助けて

って言ってるようにじた。

自宅なのにそんなを削らないといけないなんて。

自宅は安心できる場所ではなく、危険な場所として駿は行くつもりだ。

本當は行かせたくないけど、學校の用意がそこにあるなら行かなくてはならない。

用意を取りに行くだけ……

大丈夫だよ……な?

「高校行って、それでもしんどくなったら?」

「辭めていいよ」

「辭めていいの?」

「まずはやってみようよ。俺もリハビリ頑張るからさ」

「……わかった」

返事はいいけど、顔は嫌そうだ。

あれ?そういえば

駿ってどこの高校に行ってるんだ?

「駿ってどこの高校に行ってるの?」

「A高校」

A高校!?

あの凄く頭のいい高校!?

「すげぇ!A高校行けるとか頭いいんだなぁ!」

俺がはしゃいでいると、駿は目をまん丸した。

「凄いの?當たり前じゃなくて?」

「いやいや。天才か努力して勉強しないといけないよ」

駿ってすごいなぁ……と何回も律は言う。

【こんなんも出來ない馬鹿いる?私らの子供なのに、なんで貴方だけこんな頭が空っぽなの?】

【お前は出來損ない】

両親は毎日その言葉を俺に言っていた。

こんなに頑張ってるのに、誰も認めてくれない。

出來て當たり前の世界にいた駿にとって、律の言葉は予想外だった。

でも初めて認められたような気がした。

普通は親から認められて嬉しいはずなのに、出會ったばかりの友達に認められこんな嬉しい気持ちになるなんて。

そんな気持ちに早かれ遅かれ気付けて律に謝している。

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