《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》871 無限ループ

力などはあれど時間の方はさほど余っている訳ではない。だからさっさといてみる。

先ほどと同じように雑木林を迂回して行く。もちろん今度はおかしなところがないか、周囲をよく観察しながらだ。そして辿り著いた所が、

「うおおおおおお!!」

「ぐおおおおおお!!」

またいた……。もう一回!

「うおおおおおお!!」

「ぐおおおおおお!!」

ぐぬぬ……。三度目の正直!

「うおおおおおお!!」

「ぐおおおおおお!!」

押してダメなら引いてみる!今度は反対に戻ってみるよ!

「うおおおおおお!!」

「ぐおおおおおお!!」

……マジですか。というか、あなたたちさっき倒れていなかった?これは確認してみなくては。確実にクロスカウンターで相打ちの共倒れになったまま放置した二回目のところまで急いで戻る。

「うおおおおおお!!」

「ぐおおおおおお!!」

やっぱり起き上がって、というか最初に近寄った時點に巻き戻っているみたい。これはもう完全に無限ループにっているよね。しかも厄介なことに、位置だけではなく狀況まで同じとか……。

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無限ループの罠というのは、正解の道順通りに進まないといつの間にか元の場所に戻されるという、地味ながらも面倒なトラップだ。薄暗かったり霧に覆われていたりと見通しが悪い所だとさらに効果大です。道順を覚えるのが一番の対応策だから初見殺しの面も強いかな。

その歴史は古くて、初期のコンピュータゲームの頃からあったらしい。同じマップデータを使い回しできるから容量の削減にもってこいだった、などという理由があったのかもね。

さて、今回の場合もある種の無限ループに取り込まれてしまったようなのだけれど、問題は同時にイベントも発生している、という點だ。早い話、強制イベントに巻き込まれたと言える。もしかすると、どの方角から『大霊山』に近づいてもイベントが発生するように、こんな仕掛けになっていたのかもしれない。

「うへえ……。つまりはあの暑苦しい二人組を何とかしないといけないのかあ……」

爭っている原因を聞き出して、仲介するというのがべたな流れかしらん?……だけど『OAW』だから、ひねくれた展開になっている可能もありそう。

おっと、後の流れを予想するより先に、みんなに事を説明しておかないと。

「無限ループ?どういうことですの?」

「ある種の閉じられた空間に閉じ込められたじかな」

「出られないのですか?」

「多分だけど、『大霊山』から離れるようにけば出はできると思う」

さすがにそちらは違和なくループさせることはできないだろう。

「で、ここからが本題ね。ボクたちの目的に沿うように、『大霊山』に近づく形で無限ループを抜けるためにはあちらに向かう必要があると思うのよ」

そう言って雑木林の隙間の小道へと腕を向ける。凸凹コンビ?いつものようにクロスカウンターの相打ちでダブルノックアウトしているよ。

「あの二人の間を通らないといけませんの……?」

「記憶通りなら、どちらかは「ここは通さない」的なことを言っていましたよね?」

「そうだね。そしてもう一人が「お前を倒して先に進む」みたいなことを言っていたね」

どう考えても「あ、お疲れ様でーす」と脇を通り抜けることはできそうにもないだろうね……。一見すると目的が似通っている押し通ろうとしている方に手を貸すのが妥當なようにも思えるけれど、今の段階では、それが本當に正解なのかの判別がつかない。

「結局、彼らに接してみるしかないのかなあ……」

言語で語り合うなんて展開は勘弁してほしいのだけれど。

「あの狀況が話し合いでは上手くまとまらなかった結果だと良いのですが」

いやいや、ネイトさん。それはそれでよくはないと思うよ。まあ、問答無用で拳同士で語り合うよりは、一応話し合いには応じてくれると分かるだけでも多はマシと言えるのかしら。

「あとは実際に接してみて、ということになりそうですわね」

「いきなり戦闘になる可能もゼロじゃないから心構えだけはしておかないとだね。後はボクの予想通りなら彼らの時間は巻き戻っているはずだから初対面を裝うこと。注意點はそれくらいかな」

さっきのアレが會話といえるのかはともかく、お互いに印象に殘るやり取りだったのは確かだ。下手なことを言ってぼろが出ないように気を配るくらいはした方がいいだろう。

意を決して倒れている二人に近づいていく。初回の時に飛び起きてきた地點を越える。さらに接近して數メートルの距離へ。一流の武蕓者なら寢たままでも十分攻撃可能範囲だ。が、今のところ起き上がる気配はない。

振り返ってみんなと視線をわす。コクリと頷くミルファとネイト。どうやら考えていることは同じのようだ。そろりそろりと、なるべく足音を立てないような歩行に変えて進み始める。

「ちょおい!倒れている人間を無視していこうとするのは酷くないか!?」

「そこは「大丈夫ですか?」の一言くらいあっても良いのではありませんか!?」

そのまま橫をすり抜けられるかどうかという時になって、がばっと起き上がる二人。やっぱりイベントをスルーすることはできないもよう。

ちなみに、今回はなんとなく予があったので驚かずに耐えられた。長男じゃなくても耐えられました。

「お言葉だけど、それならの子が近づいてくるまで貍寢りしていたあなたたちの方はどうなの?お世辭にも紳士的だとは言えないですよね」

「ふん!わしは紳士である前に武人なのでな!」

だから武骨でも構わないのだ!とよく分からない理屈を振りかざしたのは細長の高い方だった。よく見れば耳が尖っているので森の引きこもり種族ことエルフなのかもしれない。

さて、彼なりの信條があっての言葉なのかもしれないが、正直だからどうしたという気分だ。彼らの態度が勝手なものであることに変わりはないもの。

「ふーん。武人だから見ず知らずの相手を警戒していたとでもいうつもりですか?そんな言い分が通るならこちらも同じだよ。いきなり毆り合いをしている人たちと仲良くなりたいと思えるほど博主義者じゃないの。危ない人とは距離を取りたいし、接しないですむならそうするから」

さすがに即座に言い返してくるとは思っていなかったのか、背が高い方だけでなくもう一人も唖然としているようだった。

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