《【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~》22

ご無沙汰しております すずすけ でございます。

ここまで長らくお付き合いくださりましてありがとうございました。

おそらく次話あたりで『隻眼・隻腕・隻腳の魔師』第四部も完結すると思います。

また、第四部完結後しの期間、例のごとく休憩期間をいただきたくございます。

勝手ではございますが、お待ちいただけると幸いにございます。

それでは本編をどうぞ。 すずすけ

「それはなぜだ?」

「君が言ったじゃないか、相手は『次代の明星』だと」

「だからなんだ?」

「『次代の明星』がエリアスを標的にしたのはなぜだい? それはもちろんこの都市の価値だ。貿易によって王國と他國の友好を築くエリアスは、単純な貿易収支以上の価値を持つ。そこを彼らが襲ったんだ」

港灣都市の停滯は他國とのつながりを脆弱にさせてしまう。王國は孤立してしまうことになる。

北はもちろんガイリーン帝國と接しているが、二國間の関係も表面上は良いとされているがはその逆。なにせ昔は爭っていた國どうしなのだ。

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アラベッタもそこまでのことは當然理解している。だからこそ、自責の念に苛まれ心が折れてしまったのだ。

「王國を孤立させて、彼らの目的はなんだと思う?」

孤立してしまった王國では混も爭いの火種も、簡単には沈靜化できない。

「近いうちにキルク、いや王國全土が戦場になるはずだ……」

カンザスが背もたれに深く寄りかかりながら呟いた。

「そんな、まさか……」

「王國にはもう、平和を支え続けるだけの絶対的な力はない。『次代の明星』の臺頭が良い証拠だ」

だとすれば一番に被害をける者は誰か。力を持たない大多數の庶民である。

「私はね、アラベッタ。ブランディの領民だけではない、サンティア王國全ての善良なる國民の命を護りたいんだ」

「……」

「これまでのように王家に全て任せてしまっていては、今度は手遅れになってしまうだろう。私はそうなる前にくつもりだ。いや、実際すでにき始めている」

いつの間にか渇いてしまっていたをアラベッタは水で潤す。

「たしかに、古參貴族のブランディと王家が手を取り合えば安心だな」

王家、ブランディ家、ソビ家の三つのうち二つが手を取り合うだけで王國の平和は保たれるだろう。

しかしカンザスは首を橫に振った。

「そんなものはその場しのぎでしかない。問題なのは、今の王家では國がこういった火種の絶えないような狀況にあることなのだ。一時を凌ごうとも次の火種が生まれるだろう」

「……カンザス、何が言いたい? 私とお前の二人とはいえ、言葉はしっかりと選んだ方がいいぞ?」

「今の王家ではもうだめだ。王國を治めることはできない」

「カンザス」

「私ではない、國民ではない、時代がそれをんでいる。新たな型の統治を。私はそれを」

「カンザス! 舊友とはいえ、お前の発言は流石に見過ごせんぞ! その先を言えば私とて、お前を斬らねばならん」

そう言うものの、アラベッタの手の屆く範囲には剣はない。

アラベッタはソファからし離れた位置にある剣に視線を向け、カンザスにもそれを理解させた。

「アラベッタ、私はすでに覚悟を決めているんだ。魔神の劇に手を出している」

「……おい、カンザス。お前、調が悪いんじゃないのか? しばらく見なかったうちに神がおかしくなったようにみえる」

魔神。この狀況において、それはアラベッタにとって突拍子もない言葉。

舊友が急に、古の伝承と言っていい存在を口にしているのだ。その神狀態を疑うのも仕方がない。

「おかしくなどなっていないさ、アラベッタ」

「馬鹿なことを抜かすなカンザス。お前の言うそれは二千年も前の存在だぞ。その存在すら今では怪しいと思われるほどに謎が多すぎる。伝記ではない、伝承の域を越えない話だ」

だが、アラベッタの目の前にするカンザスは真剣な表を一切崩さない。

「私は実際に魔神に會っているんだよ、アラベッタ」

「笑えない冗談だぞカンザス。聞く者によっては憤慨する戯言だ」

それほどに魔神を信奉する者は大勢存在する。その主なところがアインズ領である。

「何を言っている、君もすでに魔神に會っているじゃないか」

「なにを言っている」

「さっきも楽しく夕食を共にしていただろう? 魔神とそれだけの仲を築いておきながらその言いは失禮じゃないか、アラベッタ」

「お前……、なにを……」

「魔神、銀雪の魔師アインズ=シルバータ」

「まさか……! いや、そんなはずはない! 彼は達観したところはあれども人間だった。人間に二千年という時間は」

「エインズ殿は」

「っ!」

カンザスが言わんとしている人はアラベッタの頭にも浮かび上がっていた。しかし、それを口に出しはしなかっただが、カンザスはそれでも口にした。

「エインズ殿はね、魔師として自を名乗るとき、エインズ=シルベタスと名乗るんだよ」

カンザスは続ける。

「これは偶然か? 彼の従者ソフィアはアインズ領の銀雪騎士団の騎士だそうだ。銀雪騎士団の騎士がエインズ殿を主と呼んでいる。そして、魔導書『原典』を平然と開き追記したという」

「そんなもの、お前の……!」

「悠久の魔リーザロッテが彼の存在を認めたのだ、魔神だと」

「……ばか、な」

このカンザスの発言は決定的なものとなった。

アラベッタの手に汗が滲む。認めてしまえばすんなりとれられる、その達観とした格も魔の腕も。

「銀雪騎士団のガウス団長も認めたさ。まあ、彼の場合は拠があってというよりは本能的、希的なところが大きいだろうけど。エインズ殿を架け橋として、アインズ領とブランディ領は協力関係にある」

「あの鎖國的なアインズ領が……」

アラベッタは徐々にが震えてきた。今彼は、目の前の男からひどく恐ろしいことを言われているような錯覚に陥っている。呪いをかけられているような、そんな恐ろしさ。

「相手は『次代の明星』やサンティア朝なんて安い敵ではないんだよ、アラベッタ。魔神が現世に降り立ったことによって表面化した時代の歪み、それこそが私の対峙すべき強敵なんだよ」

「……カンザスお前、何になるつもりだ」

「魔神という劇を投與するんだ、私自分かるわけがない。ただ、アラベッタが私に必要なのには変わりはない。賽が投げられるその時、君の協力が必要だ」

アラベッタはカンザスの言葉を十全に理解したわけではない。

「そのためのエリアスへの支援、なのか」

「……そうだ。エリアスの領民の早い安寧と、國民の安寧のため、私はカンザス=ブランディではなくカンザスとして、君と渉している」

個人的な気持ちだけでは到底決斷できない容である。なにせこれは謀反もいいところだ。普通ならばこれを口にした者を即座に斬り落としていただろう。

だが相手がカンザスだ。古くからの付き合いで、その腹黒さも知っているアラベッタだが、これまで彼の言葉や推測が間違ったことはなかった。伏魔殿を生きながらえているのが良い証拠。

そんな彼の言葉を信じるならば、話はエリアスの領民だけのことではなくなる。サンティア王國に住まう國民全ての命が爭いに巻き込まれるのだ。他國と斷絶され、救助がこない地獄の戦火の中に。

「私は……」

魔神エインズ=シルベタスをただの人間であるカンザスが制できるものなのだろうか。

アラベッタの脳裏には短い期間だったが、共に言葉をわし食事をし、エリアスのために闘したエインズの姿が明確に映っていた。

ハイファンタジー作品を投稿いたしました。

年のでございます。

タイトル

『竜騎士 キール=リウヴェール』

https://ncode.syosetu.com/n6657ia/

ぜひ気分転換がてらにお読みいただけたらと思います。

今後ともよろしくお願いいたします。

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